ミュージカルあれこれ
目次
ミュージカルと聞いて違和感を感じる人は多い。
かく言う私もその1人。
昔からミュージカル映画にはさほどのなじみがなかった。
そうは言っても心に残る作品は何本かあったと思う。
ウェストサイド物語
サウンドオブミュージック
マイフェアレディ
ラマンチャの男
どれも傑作中の傑作である。
これらの作品の中で歌われる歌は今でも多くの人に支持され愛されている。
しかしここでミュージカルの特徴を1つ考えてみると、制作過程にどうしても避けられないタイムラグが発生。
ミュージカルの最大の違和感は、劇中で突然、歌が出てくること。
ミュージカルの制作過程
実はこの劇中で出てくる歌は、あらかじめスタジオでしっかりと録音されたものが使われる。
我々が見る映像の中で歌ってるように見えるのは、すべて口パクの演技。
どんなに撮影技術を駆使しても、俳優がいかに優秀であろうとも、ここで生じたタイムラグを元に戻す事は不可能。
ミュージカルに違和感を覚える人の大半はこの辺に不自然さを感じる。
このようなあらかじめ録音した音源を用いるやり方は長くミュージカル制作で使われてきた。
映画ではなく舞台で行うミュージカルのみリアルタイムの演奏となっている。
映画は今一つという人も舞台ならば楽しめる場合もありそうだ。
今回紹介できるのは画期的な方法で作られたミュージカル。
レミゼラブル
実はこの作品では今までにない画期的な方法で作品が制作された。
作品の一大特徴として、圧倒的なリアル感が挙げられる。
理由がある。ライブ音源で作品が作られているのである。
要するに映画で見て歌っている俳優たちはリアルタイムで歌っていたのである。
これにはかなり複雑な種明かしがある。
撮影裏話 まとめ
撮影するときに、オーケストラを従えて録画するわけにはいかない。
そのためにあらかじめ、演じながら歌う俳優たちにはイヤホンごしに、ピアノの伴奏を聞かせながら歌ってもらうのである。
そうして演じながら歌うリアルタイムの録画によって、俳優の歌う演技そのものの歌の音源が得られる。
得られた俳優の歌唱に後からオーケストラの伴奏をつけるわけである。
通常とは逆のやり方で撮影が進む。
俳優たちも試写の時まで、自分たちが歌った歌唱がどのような伴奏を従えるのか、わからないのである。
この方法で得られるものは、とても大きい。
映画『レ・ミゼラブル』 "フー・アム・アイ (Who Am I)"
圧倒的なリアル感(その場で歌っているわけだから)。
歌と映像の新しい融合。
ただし、撮影は困難を極めると言っていいだろう。
俳優たちは常にイヤホンをして演技をしているのだが撮影の時に、映り込んでしまうことも多々あるようだ。
実はこれは後で編集の時にCG処理をして消してしまうのだそう。
また歌手のオリジナルの音源にオーケストラの伴奏をつける時も、映像を見ながら指揮者はタクトを振るのである。
メイキング映像では、演技した映像に、一定のリズムで動くたて線が入っていた。
実はこれがメトロノームの代わりになっているらしい。
そして実際の撮影をしたときのピアノの伴奏者なのだが、彼のピアノ伴奏が映画の中に音として出てくる事は全くない。
全くの縁の下の力持ちとしての役割を果たすわけだ。
今回の挑戦で得られたレミゼラブルは今までのミュージカルとは全く違った評価になっていいはずだ。
映画が芸術としての領域に一歩踏み込んだ試金石であると言える。