昨日ブログで記事をアップした関係上、色々と調査をしてみたわけで。
実は戦争関係のこともずいぶんと情報収集をしていたこともあって、自分で言うのもなんですが、私はそれなりに詳しいと自覚。
この映画は戦艦大和の建造に関わるさまざまな人たちの人間模様が題材。
大和を中心とした戦闘シーンのための映画ではなかったです。
それは、ある意味望むところでもありました。
正確な情報が伝わっているようで隠されているのが戦争関係の様々な事柄。
そこに、どれだけの考察をしてみて映画として作ってみたのか。
とても興味があったので見たいという気持ち。
目次
戦艦大和建造に至った時代背景
映画の中でもさらりと触れられていたが、この当時、日本は国際連盟を脱退し満州国を設立、また関東軍が中国に進出してその勢力を拡大しつつあったころ。
実は、日本はこのころ、世界中からの嫌われ者だったのだ。
特に中国方面への進出でヒンシュクを買っていたように思う。
これは、もちろん日本のやり方も決して褒められたものではなかったのだが、欧米列強がそのように仕向けた背景もある。
日本がやろうとしている道筋は、過去に欧米列強がやってきたこと。
他国を侵略し、そこから搾取して自国の利益にすること。
日本の場合、必ずしも侵略であったり搾取したりと言う事は最初の目的とは言い難かった。
1番の理由は、これから日本の国そのものに向けられるであろう欧米列強の侵略を水際で防ぎたかったことが第一だったのだ。
もっとも、そんな理由が受け入れられるほど世界の国々は甘くは無い。
この当時、アメリカとの戦争が秒読み段階に入っていた。
今回の映画は軍属の側から見た戦争映画なので、特に戦争ありきの考え方と、どうすれば戦争を回避できるかを数学的な立場で検証しようとした人物の物語。
映画の中で出てきた山本五十六など戦争が始まれば勝てっこないと言いつつ、実際は真珠湾攻撃などやる気満々で画策していたのだ。
しかし、やれば負ける事は十分に理解していた。
映画の中でもチラリと紹介されていたが、鉄鋼などの産業はアメリカの50分の1、こと石油に至っては120分の1しか日本には備わっていなかった。
これは小学生か幼稚園児が横綱に相撲で向かっていくようなもの。
結果は誰の目にも明らか。
実は物語はこの辺からがどうやらフィクションで、大和を建造する計画について、採用するか否かの会議を行い、巨大戦艦ではなく空母を建造すべきとの発案をするために、大和の建造に見積書の不備を見つけて(予算額 不当に低く抑えられている)却下しようというもくろみ。
そこで半ば強制的に海軍に雇われたのが“櫂直(菅田将暉)”
彼の天才的な数学的才能によって大和の建造に関わる不正を暴き出すのだ。
少しネタバレで恐縮だが、大和の沈没シーンは映画の冒頭で描かれており、その細部に至る緻密さと、迫力の沈没シーンはまさに見応え充分。
これだけでも納得してしまう凄さなんだけど、実はこれは予告編であっさり公開しちゃってます。
このブログの最後のまとめのところでその部分の紹介をしているのでぜひ見ていただけると。
はっきり結論から言える事は、この沈没シーンは映画全体の中ではエピソードの1つに過ぎなくて、核心部分はこの後のストーリーの中で徐々に描かれていく。
この映画を作った山崎監督は“永遠の0”、また“寄生獣”など最近よく出てくる監督。
調べたところ彼はコンピューターグラフィックを用いたCG撮影が得意とのこと。
今回の沈没シーンの生々しさも得意の技を披露して見せたようだ。
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映画アルキメデスの大戦
天才数学者を演じた菅田くん。
映画の中で語られていたが西の“湯川秀樹”、東の“櫂直 ”と 100年に1人の天才と歌われていた。
湯川秀樹と並び称せられるあたり、すごい設定だなと感心。
そして思いがけず造船会社の社長令嬢を演じたのが浜辺美波ちゃん。
映画の中には花があった方が良いのだが、遺憾なく美しさを披露していた。
この映画は不正を暴くために様々な手を回して情報収集をし、天才的な能力を駆使してほとんど何もないところから軍事機密とされる設計図を自ら組み立てて、その核心になる見積書を短時間で作り上げてしまうそんな内容の映画。
映画の中では、海軍省の物語として描かれていた。
海軍で意見を取りまとめるために、大和を建造するのか、それとも空母を建造するのかで、会議をしてどちらかに決めようと。
櫂直は空母建設派の人間として描かれることに。
つまり大和建造は相手方の意見で、そこに込められている不正を明らかにして計画を断念させようと。
しかし、相手側が情報を渡してくれるわけもなく、自らあちこちに足を運んで必要な情報を得ると同時に、才能を遺憾なく発揮して設計図を作り上げ見積書を設定する。
この設計図を作り上げて見積書をこしらえる話なので、特に盛り上がるようなシーンがあるわけでもなく、人間対人間のやり取りでほぼ時間が過ぎていく。
しかし、ドラマとしてのストーリーは抜群に面白く、見る者をして引きつけていた。
主役と脇を固める俳優たちの妙
これらの年齢のいった俳優たちは当然のことながら重要な役どころで出演。
しかし今回の映画では若手とおぼしき配役もずいぶんと描かれていたし、演技も見所満載だった。
個人的にさすがにこの俳優はうまいと思ったのはこちら
柄本佑くんは相当うまい。今回の映画の中で菅田くんとの絡みが抜群に面白く描かれていた。
最初は櫂直を馬鹿にしていたのである。
しかし、途中からは櫂直の才能に感動し、またその熱意にほだされて最後はこれ以上はないというくらいの賛同者に。
そして美波ちゃん。綺麗どころは絶対にいたほうが楽しいのだが、彼女の役割を遺憾なく発揮していた。
不正を働いていた造船会社の社長令嬢。
自分の家の不利益になると知りつつ、櫂直の手助けをするのだ。
もともとは、櫂直が家庭教師で家に出入りしていたとのこと。
図らずも彼女と櫂は恋仲である。もちろん清らかな関係ではあるが。
戦争と日本人の持つ死生観
この映画の意味するところは反戦とか、戦争映画のレベルで語られている内容ではない。
映画が語りたかったのは、日本人が持っている(持ち合わせている)死生観について考えたかったのだ。
映画の冒頭に大和の沈没シーンを持ってきていたので、櫂直の仕事は失敗したのかと思いきや、実際は違う。
ギリギリの時間で最終決定の会議に見積書の正確な数字を算出することが間に合ったのだ。
ここで、さらにまた大和の設計上のミスが見つかって、平山設計官は自らの巨大戦艦建造案を引き下げるのだ。
にもかかわらず、大和は建造され沈没させられる。
実はここにこの映画の最大の眼目がある。
それは日本人の気質と言っていいだろう。
日本人はその持ち前の勤勉さと、まじめさで自分の命をかけても与えられた仕事を全うしようとする。
映画の中では山本五十六以外にも、アメリカと戦争すれば勝てないと判断する軍人は多かった。
しかし軍人の常として、日本人の気質を考えたときに、初めから戦わないことを選ぶわけにはいかない。
そして、一度戦ったならば中途半端に負けることをよしとしない。
国がなくなってしまうまで戦い続けるだろう。
そのことに対してなんとか日本人を思いとどまらせるために大和は建造されていたようだ。
かなりめんどくさい言い回しだが、大和は人身御供にされたようなもの。
この船を建造しても、ほとんど沈没させられるのは目に見えているが、日本人の心の象徴として大和が沈没させられれば戦争を諦める理由になるのではないかと。
実はこの核心部分のやりとりは映画のほとんど最後の20分ぐらいのところで語られる。
この映画の、1番の見せ場と言える。
このやりとりの中で暗黙の方向転換がなされてしまうのだ。
いちどは空母建造に決まってはいたものの、軍属の皆は世界に誇る戦艦を求めていた。
それが何の役にも立たない代物と思っていても心の象徴として作らずにはいられなかったのだろう。
まとめ
映画の予告編を見ていただくと結構惜しみなく目玉のシーンが出されているんです。
ブログの途中で書いた通り、この沈没シーンはエピソードのわずか1部。
壮大なシーンではあるが、全体の中から見れば予告編で紹介してもさほど惜しくはない映像なんだろう。
映画をリアルタイムで見てきた私から見てもそう思う。
きっかけとしてとても重要ではあるが、むしろ最初に見せちゃって予告編にしちゃった方が映画館に行きやすいのかも。
映画の中でも散々語られていたが、巨大な戦艦を作ってもさしたる働きは期待できないんだそう。
どれだけ強力な火器を装備していても、ほとんど命中はしなかったようだ。
また、あえてこれも紹介しておきたいが、映画の冒頭で戦闘シーンがあったのは間違いないが、細かいシーンではあるのだが、敵戦闘機も何機か撃墜されている。
実際の発表でも、数百機が作戦計画に参加したが、撃墜されたのはわずか数機と聞いている。
映画の中で見た驚きのシーンは、撃墜された戦闘機のパイロットがパラシュートで脱出するのだが、その脱出したパイロットを水上艇がやってきて回収していくのだ。
撃墜されたら死んでしまうと当時の日本人は誰しもが思っていただろうが、アメリカは脱出された飛行士を必ず救出に向かった。
日本では戦闘員よりも兵器を(物を)大切にしたが、アメリカは物より人を圧倒的に大切にした。
物の替えはいくらでも効くが、人の替えは効かない。
そのことを身をもって描いていたのだ。
この映画アルキメデスの大戦はこのような細やかなシーンにもそのポリシーが描かれていたと言える。
この映画は戦争に対峙した時の日本人の心情を描いた映画。
どうしても日本人の心意気として、誰かを守るために自分が犠牲になる精神を優先してしまいがちだが、“本当は誰も犠牲にしてはならない”と呼びかけているのだ。
あの第二世界大戦の真珠湾攻撃とか、我々が子供の頃から習ってきた情報はどうやら間違いだということも最近わかってきた。
日本の不意打ちの攻撃とはされているが、実際のところではきちんと宣戦布告をして、一報を入れていたにもかかわらず、アメリカはその情報をわざと揉み消して無防備の自分たちの兵隊たちを犠牲にしたようだ。
これはつい最近になっての発表だが、フーバー文書なる機密事項を書いた文書があるのだが、その中で克明に描かれている。
当時のルーズベルト大統領は日本から盛んに講話に向けた話し合いの打診を受けておきながらことごとく無視し続けた。
それは、日本に先に戦争を仕掛けて欲しくてうずうずしていたから。
彼は自らの公約で戦争しないことを条件に大統領になっている。
戦争をするためには確固たる理由が必要で、そのために真珠湾攻撃はスケープゴートにされた。
アメリカ国内の合言葉「リメンバーパールハーバー」
歴史の事実は皮肉なもの。
私は、子供の頃から日本のみが悪者と教えられてきたが、どうやらそれは嘘。
確かに悪い奴もいっぱいいたが、もっと悪いのも周りに山ほどいたので。
日本での太平洋戦争中の総犠牲者は320万人。
映画の中で語られていた大和の乗組員はおよそ3000人。
生き残ったのはわずか250人程度と聞いている。
戦争を終わらせるためとはいえ、これだけ多くの人が犠牲になったことにははっきり言って納得できない。
この映画はそのようなことに対する問いかけだろう。
映画としての完成度はまあまあだとは私は感じたが、しかし何年ぶりだろう、映画の中でセリフのやりとりが面白くて声を上げて笑った。
また思わず涙ぐんでしまったシーンがあったことも白状しておく。