くわちゃんの独り言

音楽や映画が大好きな爺さん。長年の経験から知りえたことを発信します。

ips 細胞の山中伸弥教授からのメッセージを受け止める

 

たまたま見かけたNHKの番組。

100年インタビュー山中伸弥

もともと科学や哲学などの題材が大好きだったので、とても興味深く拝見。

ips 細胞を作ったことで“ノーベル賞”を受賞した山中先生。

この研究を始めた頃から、生命倫理のことでノイローゼになるくらい悩んだ過去もあったようだ。

ここ最近100年前からは、科学は幾何級数的に発展。

人間が手にした技術は100年前とは比較にならないぐらいの高度なものが多数。

でも、その技術を駆使する私たちの英知が一体どれほどの進歩を遂げているのか。

山中先生がそのことに対する提言を行っていた。

実は、科学技術をコントロールする力は“倫理”とか“哲学”とか“宗教”とかのレベルで科学の領域にはとどまってはいないようだ。

これらを含めた番組内容で、私的にも自分で理解できていることを含めて紹介してみたい。

目次

ノーベル賞受賞者山中伸弥教授

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ノーベル賞受賞の記念メダルとともに

山中教授がノーベル賞を受賞したのは2012年。

受賞の発表がなされたときに初めて“ips 細胞”の存在を知った。

それまでは似たような細胞で“ES細胞”があったので、それも凄いことだなとは思ってはいたのだが。

“ES細胞が受精卵からしか 作られないのに対してips 細胞はどんな細胞からでも作成が可能”

ちなみにこれらの細胞は、“万能細胞”と言って、細胞が分化してこれから様々な臓器やその他の組織に変化していく前の状態。

刺激さえきちんと与えられれば、ここから、いかようなものにも変化していく。

こういった“細胞のリセット化を成し遂げた”のが、ノーベル賞受賞の理由とのこと。

単純な話、この技術を応用すれば真っ先に思いつくのは再生医療。

様々な臓器がこの技術によって作ることができる。

実際に作られているものの例として“網膜”とか“心筋細胞”とか。

これらのものも移植するためには移植する臓器が必要なので、自分の細胞からもし再生することができたなら、そんな便利な事は無い。

また、再生医療の他には“新薬の製造”とか、様々な利用が考えられている。

 山中教授の希望では、“難病”とか“奇病”とかで苦しむ人たちの力になれればいいと考えているようだ。

もともとは整形外科医として出発した山中教授。

ドクターとしての実績はほとんどなく、不器用なことを理由に“じゃまなか”と呼ばれたらしい。

邪魔くさいからこのようにあだ名がついたとのこと。

なんとも屈辱的な話。

しかし30歳を過ぎてから、思い立ってアメリカの研究所に研究者として雇ってほしいとの応募のための手紙を20通以上を書いて、たまたま1通だけが採用されたとのこと。

そこが、現在も月に1回程度は訪れて、お世話になっているグラッドストーン研究所。

ここで様々な研究を行いながら、ips 細胞への本格的な取り組みを決めたようだ。

この研究所で所長だった人に最初に言われたのは、研究者としてのポリシー。

“V”“W”

この2つ。 “ビジョンとハードワーク”

つまり明確な目標と、しっかり努力をすること。

この2つが組み合わさって良い研究が生まれるのだと。

この言葉は研究者のみならず、世の中の大抵のことには当てはまるのではないか。

何の目的意識もなしに漠然と努力することなどありえないわけだし、目標がしっかりしていても努力なしで達成できる事は考えにくい。

この2つは車の両輪のようにきちんと揃って、初めて目的に向かえるのではないか。

山中教授にとっては今でも座右の銘としているようだ。

山中ファクター

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普通の細胞に4種類の遺伝子を加えることで細胞のリセットが起こる

この言葉の意味を辞書で調べるとこうあったので 、転用

京都大学山中伸弥らが2006年マウスiPS細胞作製成功した際に用いられた、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4遺伝子総称。レトロウィルスベクターを用いてヤマナカファクターを分化済の体細胞作用させることで、細胞初期化が起こってiPS細胞が得られた。ヤマナカファクターはいずれも転写因子であることが知られており、細胞成長増殖制御などに関与している。ヤマナカファクターのうちc-Mycは「がん遺伝子」の一種であり、使用に際して発がん危険性懸念されたが、2011年にはc-Mycの代わりにGlis1を用いる、より安全な方法開発された。

要するに4種類の遺伝子を作用させることによって細胞の初期化、つまりリセットが行われて分化前の状態に戻すことができる。

確かに一旦出来上がって臓器ないしは組織として機能している細胞をもう一度リセットできるならばそれほど便利な事は無い。

この技術の凄いところは、あらゆる細胞に変化させることができるので、“ips細胞”から精子や卵子を作ることも充分可能で、既に実験段階。 

動物実験では既にこうした事は実現していて、中国では人間に対しても行ったらしい。

 きちんとした倫理に基づいた研究でなければ、暴走する可能性もあると言える。

 ノーベル賞受賞時の様々な報道番組で耳にしたのだ“ips細胞”を製造するためにかかる費用は1000万円を超えると聞いた。

また作るための山中ファクターを作用させる技術も極めてデリケートで、培養液の中に泡が1つできても、反応の妨げになる旨も聞いたことが。

そのくらいデリケートで繊細な配慮が求められるらしい。

研究の成果とは言え、安価で誰でも手が出せる代物ではない。

 と同時に、作られた“ips細胞”が治療を必要とする人に型が合うかどうかも大切な問題。

 合わないものは拒否反応で体から排出されてしまうので。

そうなると、何パターンもの細胞を作る必要が。

これは血液型等と同じで、あの骨髄移植の時に型を合わせるのが大変な状態とよく似ている。

研究に必要なものと研究から得られるもの

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明確なビジョンと達成するための努力

研究目的を達成するためには、しっかりとした目的意識とたゆまない努力が必要なのは言うまでもないのだが、実は、科学のこうした新しい発見につきものなのは間違った捉え方や考え方。

今からおよそ100年以上も前にダーウィンが進化論を唱え、メンデルは遺伝子学を発展させた。

これらの議論が発表されたときに周りでその持論をきちんと受け止めて理解した人はごく少数派。

ダーウィン等は学会で進化論を発表した時に、次のように揶揄された。

「人間が猿から進化したといわれるが、それはあなたの父方かそれとも母方か?」

全く理解しない以前にこれは誹謗中傷と言えるだろう。

進化論がそれなりの評価を得たのは20世紀に入ってから。

そこから動物や生物の学問が進化した経緯がある。

危険な思想優生学 

実は進化の過程ではより優れたもの、また生き延びていくのに必要な力を備えたものが種として存続してきたようだ。

このことを発展させると、人間においてもより優れたもの、姿かたちの美しいものが生き残っていくのは当然と考えて、そうでないものを排除する動きが生まれてきたことがある。

実はこういった優生思想は、様々な歴史的な過ちを犯してきた。

典型的なのはナチスドイツのユダヤに対する迫害。

間違っているにもかかわらず、それを正しいと信じて行動してしまう人間の暴走心理。

そういったものが今も残っていると山中教授は危惧していた。

現在のテクノロジーで、100年前とは比較にならないぐらいの優れた技術を手にしていながら、それを運用する人間の側は、100年前から進化したきちんとした知恵を持っているのかどうか。

“政治や様々な活動を見ているとそんな気はしないのだ”と。

「皆、自分自身の身を守ること、自分自身の利益になることそのことのみが極めて重大で。」

「そのためには犠牲など当然。」

このような恐ろしい考え方が、少なくとも政治の世界では蔓延しているのではないか。

そのことを危惧する山中教授の胸のうちは、我々でも容易に納得できる。

ちなみに、遺伝学上で何億年もかかった進化の過程を、今はゲノム編集やゲノム操作が簡単にできる時代になったので、およそ1週間以内ほどで完了させることができるのだそう。

新しく生まれた技術は、1部の者たちの欲望のままに自分自身の古くなった臓器などを新しいものにどんどん作り替えて究極には“不老不死に近いような状態”まで持っていけるのではないかと。

本来、山中教授が取り組んでいきた研究の最大の目的は、難病などで苦しむ人たちに本当の意味での治療の恩恵を受けてほしいとの願いから。

そのための研究ではあったのだが、きちんと進んだ倫理観がなければ暴走し始めて、1部の者たちの欲望の餌食になってしまうのではないだろうかと。

何よりも今住んでいる我々の胸の内にどれだけの欲望が渦巻いているのか。

そういったものが表に出てきたときに、どれだけ研究の成果が当初の目的のために活用されるのか。

今現在は正しいことをやっていると信じて疑わないが、その生命倫理の問題を考えると果たして自分が正しいことをしていると断定するには、“なかなか難しい”と考えているようだ。

また自分だけではとても答えを出すことができないので、多くの有識者を始めとして議論を広く訴えたいとも述べていた。

「骨盤ウォーカーベルト」

100年後の私たちへの提言

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100年後の私たちが今よりも幸せなことを心から望む

現代は新しく発明された技術革新によって、どこへ進んでいくのかが根本的に問われているのだと教授は解いている。 

100年後、そうでなくても1年後の未来で今よりも幸せになっているのかどうか。

それは技術革新だけでは問うことができない難しい問題。

宗教、哲学などの分野からも広く意見を求めなければとの提言だった。

特に中国ではゲノム編集によって遺伝子操作された双子の子供が生まれたそうだ。

学会で発表したときに、周りの研究者や記者たちから激しく追及されたようだ。

「もし、何らかのリスクが子供に生じていたときに、あなた方研究者は一体どういう風に責任を取るのだ?」

研究者は、

「私には答えられない」とかなり無責任な回答。

それなりのポリシーに基づいてゲノム研究と実験を行ったのだが、しかしそのやった行動は単なる思いつきと言われても口答えできないだろう。

このようなこともあって、様々な議論が必要と山中教授は訴えていた。

優れたものや美しいものがより生き残っていくべきとの優生思想はどうやら今でも健在。

社会的弱者と呼ばれる人たちは、ますますもって本来の恩恵からは遠ざけられる傾向に。

【BROOK'S かんたん ぬか美人】

まとめ

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ノーベル賞受賞の記者会見奥様と。芦田愛菜ちゃんと記念撮影

私ごとだが、長年密教の修行をさせていただけるチャンスに恵まれてきた。

多分40年近くに上る。

その中で学んだ事は、人は生まれてからは必ず老いて死ななければならない。

不老不死は生死の倫理に反するのだと。

不老不死を選ぶのではなく、しっかり生きて、時期が来たならば自分の死をきちんと受け止める。

学んだことの1番大きな事はこのあたり。

今の生命科学の進歩は大変なところまで来ている事はよくわかる。

また重大な病気で今まさに死を迎えようとしている人の胸の内や、周りの人たちの気持ちも考えれば切ないこと。

山中教授も言っていたが、“究極の医療は病気を治すこと以上に病気にならないこと”を目指す。

そういったことが自分の研究から生まれてくれるならば本望だと。

結局のところ、医療が目指す先はその辺にありそうなのだが、きちんと受け入れられるかどうかは、受け入れる人の気持ちの有り様に左右されるのかも。

自分さえよければ他はどうでも良いと思うような人が、恩恵を受けるのでは誰からも支持されないはず。

100年後などと言わずに“明日の自分”“1週間後の自分”に幸せであることを祈る方がどれほど現実味があるだろうか。

わかりやすく言えば、

「明日の朝、目覚めるときに幸せでありますように」と願うこと。

幸せを祈る気持ちはその辺が出発だと言えるだろう。

テレビの番組は非常に内容の濃いもので、さすがにこういった企画はNHKでなければできないかもと思うことしきり。

ips細胞の技術的な事はさすがに難しく感じるが、生命倫理の上から行けば誰にも発言権はあるはず。

大勢の人の幸せに寄与することができるように私もしっかりと注目していかねばと。