信楽の実家で泥棒にあった川原家。
金策に駆けずり回るお父さんは、なんと大阪の喜美ちゃんの荒木荘にまで。
荒木荘ではお父さんと大久保さんがなんとも不思議な対面をする。
金策に来たことを自分からは言えずにいるお父さん。
もちろん喜美ちゃんとて自分から言い出せるはずもなく。
ここで大久保さんの神対応が。
目次
荒木荘をこわごわ覗き込むお父さん
電話で喜美ちゃんにお金の工面を頼み込んであったお父さん。
とりあえずは挨拶もそこそこに荒木荘の中へ。
目的はなんとか喜美ちゃんの給料の前借りをさせてもらって、川原家の収入の足しにしたい。
しかし突然大久保さんの前に現れて、いきなりお金の話をするわけにもいかずに、喜美ちゃんとお互い目配せをしながら、
「早くお金の話を言い出せ!」
お互い相手にさせようと躍起になっている。
このドラマの描き方は、以前 信楽の実家の方で、草間さんが初めて家を訪ねてきたときに、卵のお粥を振る舞うシーンがあった。
お粥をたくさん盛る盛らないで、お父さんと喜美ちゃんの目配せのやりとりが。
あの時と同じ。
この親子は昔からとてもよく似た性格で描かれる。
臆病でおどおどするくせに、周りにはちょっとかっこよく見せたい。
そしてちょっとでも自分が優位に立っていれば、すぐに自慢したがる。
今日はそういったお互いのよく似た性格が、面白おかしく描かれていたのだ。
挨拶の後で思いがけない申し入れが
大久保さんから喜美ちゃんの仕事っぷりについて説明が。
「若い娘の割には、朝早くから夜遅くまで一生懸命働いてもろてます。」
「若いゆえにまだまだ至らない部分もあるけれど 、手先が器用な部分もあってたいていの仕事は上手にこなしてますよ。」
「お父さんは良いお嬢さんを持たれましたね。」
お父さんにしてみれば、とりあえずそんな報告よりは何とかお金をいただけないかと。
ここからが大久保さんの今回の最も神対応の部分が。
“手先の器用な喜美ちゃんに内職をさせることにした”のだと。
“給料が安いのでそれを補う意味でも、ストッキングの繕い仕事をさせることにした”のだと。
大久保さん自身も女中になりたての頃は、そのような内職で弟を学校に行かせる学費の半分は稼いだとの話。
実はそこから。
喜美ちゃんに
「今までどれだけ繕ったか覚えているかい?」
数学の得意な喜美ちゃん。
いろいろ考えて
「128組です」と。
これは実は一束12円で請け負った仕事で、掛け算をすると、
なんと1536円
これはお父さんや喜美ちゃんにしてみれば驚愕の金額。
喜美ちゃんが1ヵ月休みなく働いてもわずかに1000円。
給料より多い!
大久保さんは“裸で悪いけれども”と言いつつその場でその支払いの精算をしてくれたのだ。
もちろんそのやりとりは大久保さんと喜美ちゃんとのもの。
お父さんはそのやりとりを知らぬ顔で眺めているとの設定。
ただし、内心はこんな嬉しい事はないと思ったに違いないのだ。
狂喜乱舞お父さんと喜美ちゃん
目の前に出されたお金の破壊力は満点。
このやりとりを見ていて感じたのは、大久保さんの洞察力、推察力。
喜美ちゃんがわずかばかりの給料も家に送金している事実を知ったあたりから、喜美ちゃんに内職をさせることを思いついたようだ。
後々、喜美ちゃんの実家からこういった話が来るのかもと、あらかじめ想定していたフシが。
給料自体の前借りは、それは家主の荒木さださんの管轄なので、大久保さんといえども何とかできるはずもなく。
しかしそれ以外の様々なやりとりならば大久保さんの判断でいろいろできることに。
今回のストッキングの内職も、まさにグッドタイミングで準備していたようなもの。
喜美ちゃんに今までの分のストッキング代の精算をした後で、にんまりと笑った大久保さん。
これは“作戦成功のほくそ笑み”。
お父さんを送るために喜美ちゃんも一緒にアパートを出ることに。
大久保さんからもらったお金を、お父さんと2人で眺めながら狂喜乱舞する親子。
早速そのお金の中からいくらかをお父さんに渡すことに。
金額からすると、どうやら生活費になるようだね。
ちなみにこのときの1000円は調べてみると今のおよそ30,000円に相当。
物価は、この当時は今の30分の1くらいと推察。
正直思ったのは、年金暮らしの細々と暮らすお年寄りならば、月30,000円程度ならその範囲内で生活する人もいるのではないか。
1人分の食費で考えるならば、1ヵ月10,000円程度でも暮らすお年寄りはいっぱいいるかも。
この当時の1000円はそれなりにありがたい金額だったと言える。
3年は帰らへんよ
お父さんと喜美ちゃんのお金のやりとりがあって、喜美ちゃんからお父さんに告げられたことがあった。
「このまま荒木荘で頑張ることにする。」
「3年は帰らないから。」
今いる大久保さんからいろいろ教えてもらって、荒木荘の仕事を全部引き継ぐつもり。
娘のそういった決意を聞かされて、ここでお父さんもその性格上、ムキになって答える。
「そうやな。」0
「お前がそういうつもりで働かせてもらえるなら、しばらくは帰ってこんでええ。」
「盆も正月もここで頑張りや。」
実はこれ、お父さんの負け惜しみ。
頼もしい娘を見ていてドギマギしている。
そんなお父さんを見ていると、“甲斐性なしでだらしがないと思いつつも憎めない人だよな”と感じてしまう。
このお父さんの胸の内を自分と重ねる中年のおじさんも多いのではないかな。
白状すると私自身も父常治と自分を重ねてみると気が。