くわちゃんの独り言

音楽や映画が大好きな爺さん。長年の経験から知りえたことを発信します。

紅葉の思い出 40年前をさかのぼってみると

 

今週のお題「紅葉」

実は、昭和54年、私はとある木材会社に勤めることになった。

北海道の田舎なんだけど、その会社はヤマハの下請け工場との触れ込みで、ピアノの主要な部品の材料を収めていた。

今更だが、ピアノは思いのほか木材加工品の要素が強い。

特に鍵盤から弦を叩く部分のアクションと呼ばれる部品は、すべて『紅葉』でできている。

ちなみに業界では『紅葉』とは呼ばない。

一般的に『イタヤ』と読んで、要するにメープルシロップを取る『メイプル』と同じもの。

私にとって、紅葉はつまりイタヤの思い出。

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私が務めたのはヤマハの専属工場

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今は倒産してなくなった 人口乾燥室の操車場

もうずいぶん前のことになるので記憶をたぐるしかないが、昭和54年の 3月の末にこちらの会社にお世話になることに。

ヤマハの専属工場の触れ込みで、ヤマハが製造しているピアノ製品のアクションと呼ばれる部品の全てを納入していた。

その量も膨大な量で、月におよそ600m3。
これは部品の総量。

これらが全てピアノの原材料になるのだがピアノに換算して何台分になるのか。

ちなみにヤマハはピアノ生産の総数は年間10万台を軽く超えていた。

全世界での年間のピアノの需要が20万台程度とされる。

およそ半分をヤマハが生産していた。

月間で言うと1万台弱位か。

それだけ膨大な数の部品を収めていながら、工場の労働者でしかなかった私に、夢のある品物を作っているような自覚など皆無。

毎日チャイムからチャイムまでの労働時間に追われて、楽しいと感じて仕事をした事はなかったと言える。

とにかく、扱う部品はとても細かい。

1番小さな単位だと長さが25センチ、厚みが10ミリ、幅が3センチである。

これが最小の単位と記憶。

扱っていた部品に様々な名前が付いていたが、収める品物の一覧表の中では100種類とちょっとあったと思う。

実はそれらの部品を全て網羅していたのが『紅葉』

北海道産の、私の住む地域の山に生えている紅葉の木。

それが材料。

莫大な量の材料を、近郊の山々から切り出してそれを加工する。

切り出された材木は、決められた厚さに製材され、外に天然乾燥されることに。

後々、人工乾燥の工程まで行くので、人工乾燥室に入りやすい大きさにきちんと整えられて桟積みをした状態で、会社の敷地内に4段積にして並べられることに。

大体1年程度天然乾燥した後に、人工乾燥室でギリギリまで水分を抜く作業に入る。

ヤマハから言われていた“含水量は6〜8%”

これ以上少なくても多くても規格外とされる。

ピアノの部品としてきちんと機能するためにはこの状態の水分量がベストなんだそう。

また水分ムラが発生しないような方法も独自に編み出して採用していたと思った。

約1年間の天然乾燥と2週間程度かかる人工乾燥。

この作業を終えたものが、私が勤務していた工場に入ってくることに。

工場の中で長さをカットされ幅を整えられた後でカンナをかける。

そうして出来上がったものを梱包してトラックに積み込むのだ。

発送のための進度表なるものが送られてきて、好き勝手に何でもかんでも収めればいいというものでもなかった。

ヤマハは下請け工場にはそれほど優しい会社とは言えなかったと思う。

何といっても基準はとても厳しいし、あれだけ膨大な量の製品を収めておきながら、気に入らないものは全て再納入させられた。

実は平成20年頃、ヤマハはピアノの販売不振が続いていて、かなり大幅な経営の見直しを迫られていたのだ。

その時ヤマハの下した決断は、私の勤めていた会社との提携を解除すること。

それがもとで私の勤めていた木材会社は倒産の憂き目に。

これがことの顛末。

今となってしまえば懐かしい思い出だが、当時は衝撃的に受け止めたと記憶する。

したがって、“紅葉”のほんわかとしたのどかな思い出などあるはずもなく。

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ピアノの部品

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鍵盤から音源への伝達装置

ピアノのアクション部品である。

これはどうやらグランドピアノ用。

向かって右側に白いピアノの鍵盤がつくことに。

画像の真ん中あたりに写っている丸っこい形のものがハンマーと呼ばれる弦を叩く部分。

頭にフェルトが付いていてそれで弦を叩く。

ちなみにこれらの材料は1部を除けば9割以上が紅葉で出来ている。 

フェルトのついた部分の芯に相当するのがハンマーウッド。

ハンマーウッドの柄に相当するのがハンマーシャンクと言って、ここだけが紅葉ではなく真樺の上質な木材を使用していた。

部品の内容はピンキリ。

ハンマーウッドなどはより高品質のものが求められ、弦を張るためのピンを打ち込む板は、ピン板と言って、紅葉であればそれほど厳しい材質は問われなかった。

この工場にはおよそ5年ほど勤めたと思う。

今思えば3Kの職場

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ネットで検索すると出てくる当時の写真 社長以下が写っている

この写真は昭和60年頃と思われる。

はっきり言って私の知っている人がたくさん写っているが、いかんせんピンボケ写真で普通に人が見ても誰が誰だかわからないだろう。

 当時こんな形で集合写真を撮る事は稀だったと言える。

私の工場の偉い人たちも何人も写っているので、ひょっとしたらどこかに端っこのほうに私がいるのかもと思ってみたが、確認はできない。

後の看板にある通り、この木材会社の生命線がヤマハだった。

他にも主力となる工場はあったが、残念ながら、恒久的に利益をあげられるような部門ではなかったのだ。

なんといっても、ヤマハの要求に応えて品物を納入することが会社の経営のためには必要不可欠だったと記憶する。

それもこれも皆近くの山々から切り出された紅葉である。

紅葉がなければ、私自身の生活も今こうしていられる事は無い。

「骨盤ウォーカーベルト」

紅葉は愛でるものでいい

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樹液を煮詰めるとメープルシロップに

今記憶をたぐって思うのは、紅葉はピアノの材料としても大量に伐採されたが、実はボウリングブームの時にその材料としても大きく利用された。

ボーリングで使うピンがあるが、 あれは紅葉でできている。

紅葉を“寄木”でくっつけて、それをピンの形に加工している。

ペンキを塗って完成となるわけだ。

あと、ボーリングのレーンも手前の何mは“紅葉”で出来ていると聞いた。

紅葉の木はこういった利用のされ方で、大量に伐採されたので、近所の山々には製材として使えるような太い幹は見当たらない。

もっぱらあるのは近所の庭に観賞用に植えられたものばかり。

できれば太い幹のものが何本か山の中にあることが望ましい。

樹液はメープルシロップとしてスーパーでも売り出される位の人気の甘味料。

そのくらいの利用にとどめるのが紅葉にはふさわしい。

ピアノ製造の片棒を担いでいたが、あれだけ莫大な数のピアノを作ってみて、一体何人の人がピアノに向き合って演奏しているだろうか。

ピアノは木材製品なのでメンテナンスにかなりの時間とお金がかかる。

せっかく作った品物だから、長く大切に使ってほしいと思うのが人情。

かくして、私の切ない紅葉の思い出は、記憶の中に埋もれていく。

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