やはり、今日の物語でお父ちゃんは逝ってしまったね。
今日はお父ちゃんを演じている北村一輝の演技に注目してみることに。
彼は以前から悪役などで殺される役柄も多かったので、どんなふうに演じるのかと興味津々だったけれど。
病気で逝ってしまう死に様を、うまい具合に演じきっていたなと。
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目次
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戦友大野忠信の真心
喫茶サニーでは昔からの友達、大野忠信が1人で夜通し酒を飲んでいた。
決して酒は強くは無いのだが、本人曰く
『常さんの代わりに飲んどるんや』
この2人は戦友として中国へ出征していた。
実はその時2人で交わした約束があったのだ。
父常治曰く、
『大阪で1番うまい串カツを食わしたる。』
忠信曰く、
『もし信楽に来ることあったら、松茸なんぼでも取れるさかい、松茸ご飯腹いっぱい食べさしたる』
本当は忠信はキノコ類全般が苦手。
松茸ご飯などおいしいと感じる事は無いのだが。
この話をそばで聞いていた息子の信作。
『その約束は果たさなあかん』
『これから松茸取りに行くで』
そう言って父の背中を押して松茸狩りに夜中だと言うのに2人で出かけるのだ。
そしてお母ちゃんにも一言、
『釜いっぱいにご飯を用意しとってん』
母親は炊き込みご飯を炊く要領でもち米を少し混ぜてお米を準備するのだ。
父常治の遺言
川原家全員で絵を描いた大皿はとうとう完成 。
ちょうどその時に松茸狩りから大野家全員が馳せ参じることに。
たくさんの松茸とお釜いっぱいのお米。
そして、往診が終わった父常治を見舞うことに。
すでに、食事も喉を通ることがなくなったお父ちゃん。
見ていても、おそらくは水分補給もままならない状態だろう。
自宅で介護しているので、点滴など気の利いたものは何一つない。
医者が来てできる事は、せいぜい注射をすることと痛み止めのモルヒネを処方する程度。
膵臓癌の末期だと、痛み止めのモルヒネといっても、飲んでどの程度効くだろうか。
おそらく1時間2時間持てば良い方ではないだろうか。
神経のみは最後まで生き残っていく。
がん細胞は“腹くう内”に至るところに広がって、わが者顔でのさばっていく。
当の本人が息絶えるまでがん細胞の増殖は止まらない。
今でさえ、膵臓癌の主な治療は抗がん剤か、運がよければ放射線とか外科手術。
今までとは違った全くな別な方法が確立されない限り、これからも今まで通りのことをやっていれば、ほぼ助からないと言える。
さて、せっかくの松茸ご飯だったが、父常治は『うまそうや』と言うところが精一杯。
みんなで作った大皿の上にたっぷりと盛られたご飯だったが、それは家族のものが平らげることに。
松茸ご飯がたっぷり乗っかっているおかげで皿の絵が見えない。
ご飯が亡くなった後の皿をしげしげと眺めてお父ちゃんは言った。
なるほど心に届くんはこういうことだ。
『ええ皿やなぁ』
八郎君と喜美ちゃんの作っている芸術の真髄に今まさに触れた。
相手の心に届ける。
そういった作品を作りたい夢。
死ぬ間際になってお父ちゃんはその夢を理解し、納得することに。
そして、『少し眠いわ』と言いつつ横になる。
それが父常治の最後。
必死に呼び止めようとする喜美ちゃんだったが、その呼びかけにお父ちゃんが答える事はなかったのだ。
私の個人的な経験から言うと、死ぬ間際にこのようなコミニケーションが取れたのはほぼ奇跡。
普通息を引き取る1週間くらい前は、ほとんど意識は混濁していて、呼びかけにも全く無反応だったと思う。
その時の病人は、ひたすら眠りの中にいて、少しずつ働きを停止していく内臓を体内に保ちながら、そして、そのうち努力呼吸を始めることに。
必死に息を吸い込まなければ、体に酸素を供給できない。
そのための呼吸は見ていてもかなり厳しく感じる。
自宅で息を引き取ったお父ちゃんは、ドラマの中と言うこともあってそのようなシビアな描かれ方はされてはいなかったが、“北村一輝”はまさに今息を引き取ろうとする父親を切なく演じていたのではないか。
顔の最後に息を引き取ってことを切れる演技は、私の中では“宮沢りえ”が主演した映画、『湯を沸かすほどの熱い愛』
この中で主役を演じた彼女が癌で亡くなっていくシーンの演じ方が最もリアリティーがあったと感じる。
努力呼吸から少しずつ呼吸は浅く小さくなり、うつろな瞳を虚空に向けたまま、静かに息が止まる。
この部分の描き方は私の母親がこと切れるときの様子に酷似していたと思ったので。
考えてみれば、女優“宮沢りえ”は自分の母親を同じようにガンで亡くしているので、その時の様子をしっかりと再現して見せたのではなかったか。
今回の“北村一輝”の演技はそのような匂いこそなかったけれど、少しずつ力が抜けていく感がうまい具合に表現されていたなと。
父常治逝く
父常治は息を引き取る直前、家族を部屋から遠ざけて、なぜか喜美ちゃんだけをそばに呼び寄せた。
そして、『家族は仲ようせないかん』
そういったメッセージを伝えようとしていたのではないか。
仕事や家庭のことで、心がささくれだっていて、八郎君にもとげとげしい言葉で対応している喜美ちゃん。
そういった様子は見るに耐えなかったのだろう。
誰のせいと言う事でもないが、家族は手を取り合って仲良く明るく暮らすべきと、それがどうしても伝えたかったメッセージと取れた。
そして自分の妻、『マツ』の行く末も随分心配していた。
戦友の大野忠信へ、『わしがいのうなったらいい男紹介してやってん』
さすがに苦笑する大野さん。
そしてこれらの1連のやり取りの後、父常治は逝ってしまうことに。
スカーレットではこれからは八郎くんと喜美ちゃん中心で川原家をもり立てていくことに。