2010年の映画インセプション。
映画館では見ることができずに2年後ぐらいにwowowで見たと思う。
その時から映像や音楽などの視聴覚効果が経験したことのないエキセントリックなもので、アカデミー賞を総なめにしたのを覚えている。
このときの主役もディカプリオ。
彼はこれはと思う作品には必ず出演しているのだが、なぜか主演男優賞には届かない俳優だったよね。
タイタニックの時はずいぶん若い印象だったけれど、この映画では
日本人俳優渡辺謙と共演でかなり落ち着いた感じもしていた。
ざっと見ても、かなり複雑でデリケートな設定になっているのでちょっと振り返ってみたい。
目次
夢の世界をハッキングする
私のように英語を話せないものだとやはり日本語に吹き替えていただいた方が意味がすっきり伝わるのでとてもわかりやすい。
少ない字数の字幕をボッてみても、これだけ複雑な意味を持った映画だとちょっとわかりにくいかもね。
セリフなどで説明する部分ももちろんだが、この映画の場合特に映像に注目すべき。
それは予告編だけ見ても十分に伝わってくる。
時間は短いがいいとこ取りで作られた映像は、映画がどういったニュアンスで描かれているか伺い知れると言うもの。
平たく言えば、夢の中に入り込んで、その情報を引き出したり、あるいは心の底、つまり深層意識を操作したりすること。
かなり大掛かりなマインドコントロールといってもいいが、この映画の設定では実際に夢の中に入って現実のものとしてそのコントロールの作業を行う。
この夢に導くことに当たって、夢そのものを作り上げる企画する人間と、後は出演者。
設定の中で、様々なモデルを想定して、夢の中にターゲットを導いていく。
こういった現実と夢を行ったり来たりする物語は、この作品より古いもので言えば
マトリックスがそう。
知っての通りマトリックスはコンピューターが作り上げた仮想世界の中に実際に意識が入っていくストーリー。
あの三部作もかなり衝撃的な映画だったが、難解な事でも知られていた。
何度も拝見させてもらったが、いまだに謎めいた部分は残っている。
そして、続編のできる話もちらほら聞こえてくる。
インセプション以降の仮想の世界を描いた映画ではドクターストレンジが挙げられるだろう。
ドクターストレンジのあの映像はインセプションで描かれたものと酷似してはいないだろうか。
こういったコンセプトで作られる映画は、本当に映画向きだと思う。
如何様にも描くことができるわけだから、そして夢と現実と言う二本立てをさしたる説明もなくいきなり映像化できるのだ。
インセプションがよりすごい設定だなと思うのは、夢の階層にさらに段階を設けていること。
つまり夢の中でまた夢を見て、さらにまたその中でも夢を見る。
第一、第二、第三まで全く別の次元の世界を描いていた。
特にこの中の設定で要になるのは、まず
夢を見ている人たちはそれを夢とは自覚していない現実と思っている。
夢の中で過ぎていく時間は現実の20倍。
現実で5分間過ぎたとしても、夢の中では1時間過ぎたことになるのだ。
そして階層を重ねればより時間は短い時間で経過することに。
こういった設定を一体誰が考えたんだろうか。
とてもユニークで面白いと言えるが、最新の脳科学でもどうやらそれは当たっていそうだ。
決して出番は多くないが女優たちが光っていた


この中でマリオン・コティヤールはエディット・ピアフを演じた映画でアカデミー賞の主演女優賞を受賞。
フランスが誇る女優。
この映画に出演していた頃は30歳を過ぎたあたり。
思い詰めた演技をさせるとかなり光るものを感じる。
彼女はこの映画の中では亡くなった コブの妻。
夫婦関係に疲れてビルから飛び降り自殺をする設定だった。
映画の中に出てくる彼女は全てコブの心の中での存在。
つまり、結論から言えばちょっと怪しい女性を演じているのだ。
この部分はコブの心の中にあるトラウマでもある。
エレン・ペイジはまだかなり若い女優だが、この頃X-Menシリーズにミュータントの役柄で出演していた。
彼女の能力はテレポーテーション。
壁でもどこでも簡単にすり抜けてしまう能力。
またJuno/ジュノで未婚で子供を出産する学生の役柄も演じていた。
しかし調べてみると彼女ももう32歳。
インセプションに出演していた頃が22歳なので、若くは見えるよね。
10歳の頃から子役として活躍しているので顔なじみの女優さんだよね。
クリストファーノーランの意図したところ
インセプションはクリストファーノーランの書き下ろしの脚本。
そして彼はイギリス出身の脚本家、映画監督となっている 。
映画と言えば大抵ハリウッドのSF映画を想像してしまいがちだが、映画のオリジナルのアイディアはどちらかと言えばイギリスとかオランダ、スウェーデンなど、ヨーロッパ発祥の場合も多い。
もちろんフランスも有力な映画産業国家と言える。
ヨーロッパはおしなべて映画には造詣の深い国が多いと言える。
あまり映画になじみがないなと思うのはドイツぐらいだろうか。
イタリアもスペインも映画産業はとても盛んだから。
この監督のインタビュー記事を読んだことがあるが、やはりマトリックスの影響を受けたと答えていた。
ちなみにInterstellar、バットマンのダークナイトなどノーランが手がけた作品。
これら2つの映画はどちらも難解だったと記憶している。
また同じイギリス映画では最近のものではエクスマキナが難解な解釈を秘めていた記憶がする。
彼の持ち味として通りいっぺんの物語では納得しないのだろう。
物語の奥に潜む人間の心の底とか、時間の経過とかそういったものをテーマに取り上げているようだ。
しかし、作品として見たときには娯楽映画の領域にありながら、それを超越するだけの芸術性を兼ね備えているとも言える。
その発想の持って行き方など、多くのクリエイターたちに賞賛される所以。
2010年前後は彼が最も活躍していた時代だと言えるだろう。
これからも大いに期待されると思う
インセプション(きっかけ、発端)


今いるところが夢なのか現実なのか、確かにそこら辺の判断はどうしても必要になってくる。
そのためのアイテムが夢に入っている人間がそれぞれ所持しているトーテムと呼ばれる小さな持ち物。
コブは写真にあるような金属製のコマを持っていた 。
種明かしがあってコマを回してコマが回り続ければ夢の中、
途中で回転が止まって倒れてしまえば現実との設定だ。
映画の最後に子供たちに会いに行くコブ。
コマが回り続けるかどうかを見届けることなく映画は終わってしまう。
つまりあの空港でのシーンが夢なのか現実なのかはっきりしないところがこの映画の意味深なところ。
あのマトリックスの最後のシーンも似たような描かれ方をしていたと思う。
あれだけ大掛かりなストーリーを作り上げていながら、まるで関係なさそうな穏やかな講演のシーンで終わっていたではないか。
一体どれが現実で、どれが夢なのかこういった映画の設定は、見るものにかなり問題を投げかける。
今いる現実が本当に現実なのか、それとも夢なのかそういったことをチラリと考えてしまう映画だった。