実は、白状すると20歳の頃には立派な愛煙家だった私。
どちらかと言えば酒が苦手な私はタバコとコーヒーが楽しみの時代があったのだ。
最初はフィルター付きの軽いタバコから始まったものが、だんだん強い刺激を求めて、そして葉巻に移り、その後とうとうパイプにも手を出した。
吸ってみてわかったのは、急ぎには間に合わない。
- テクニックを磨かなければ吸うことができない。
- 紙巻きタバコよりもはるかに味わい深い。
この間ハリウッドの俳優カークダグラスがなくなった。
彼の映画の中に炎の人ゴッホがあったけれど、その時のパイプを咥えた写真を見てかっこいいなと思ったもの。
目次
パイプは奥が深かった
まだ学生の頃、懐具合がいまいちだったのでそんなに立派なパイプを所有することにはならず。
パイプの専門店と言うと都内の著名な店まで出かけなければならない 。
確か新宿の駅前で探したような気が。
最初に買ったのが、イタリアのメーカーサビネリのパイプ。
昭和48年当時のことだったが、確か3000円ちょっとで買った記憶が。
サビネリの銘柄を考えれば、ほとんど格安品のようなもの。
気の利いたものはどれも皆10,000円ぐらいはしていたと思う。
何せ、20歳そこそこの若造が所有するのだ。
デコレイティブなベンチタイプのものはさすがに気が引けた。
そう思って買い求めたのがストレートな最もベーシックなタイプ。
こういった品物は最初にならし運転が必要だ。
パイプを買って、いきなり葉っぱを火口の口元まで詰めて着火したところで、100%喫煙にはならない。
パイプの燃焼部分、つまり内側になるのだが、最初にならし運転として4分の1から3分の1程度の葉っぱで燃焼させる必要が。
それは、ほかならぬカーボンをパイプの内側に付着させるため。
このカーボンがパイプを守ると同時に、葉っぱの燃焼そのものを助ける働きがある。
パイプとか葉巻は点火してから長時間吸わずにいると、自然と火は消えてしまう。
時々吸いながら燃焼を助けることも必要。
また、いきなり強く吸っても簡単には燃焼しない。
表現が正しいかどうかはわからないが、焚き火とかかまどの火を燃やすことを想定するとわかりやすいか。
要するにデリケートに扱えってことかな?
いったん火をつけると、吸い方にもよるが30分以上は連続して吸っていられる。
紙巻きタバコの5分程度とは決定的に差がある。
こういった特徴があるので、ちょっと片手間のくわえタバコにはならない。
また火をつけないパイプを咥えている人もたまには見かけるが、これは子供がおしゃぶりを咥えるようなもの。
正直なところ格好悪いと思う。
パイプを吸う技術
ならし運転が終わるのに、多分1週間程度はかかった記憶が。
しっかりとカーボンが内側に付着したパイプは火をつけても決して熱くはならず 、手で持っていてもほんのりと暖かい程度。
いい加減な使い方をしたものは、とても熱くて持っていられなくなる。
ちなみにパイプの原料になるのはブライアーと言ってバラ科の植物の木の根っこ。
これを職人が加工してパイプに作り上げる。
普通よく目にするのはこのブライアーを材料にしたもの。
パイプの材料にはもう一つあって、メシャム(海泡石)と呼ばれる石製のものがある。
こちらは品数も少なく、値段もピンキリだが、はっきり言って上限がないくらいお高いものが多いと思う。
そして、石でできているので、落とせば割れて壊れる。
私も店頭に並んでいるものを一点か二点、目にしただけ。
種明かしがあってメシャムのパイプは長年使い込むとタバコの成分がパイプ本体に染みて行って、べっ甲色に輝く。
この自然な色合いを愛でる愛好家はとみに多い。
ブライアー製のパイプも使い込むほどに色合いや風合いは濃く味わい深くなっていく。
その味覚のほどは
はるか昔20歳の頃何種類かのパイプタバコを試した結果、イギリス製のこちらの葉っぱに落ち着いた。
この左側の青いパッケージのものが私が吸っていたもの。
決して甘ったるくなく、そして、ただ辛さだけの葉っぱではないので、タバコの葉っぱの風合いが心地よく感じられた。
確かあの当時の値段で1缶1000円以上したような気がする。
しかし、パイプタバコはこれを1つ買うとおよそ1ヵ月位は長持ちしたと記憶する。
紙巻きタバコのように、1日に何十本も吸わなければ満足できないような代物ではないのだ。
準備をして吸い始めて終わるまでに、大体1時間以上はかかったと記憶。
1日に、1回か2回程度のことなので、確かにタバコの量自体は減るのかも。
不思議なものでしょっちゅうタバコを吸う習慣とは明らかに違っていて、この1〜2回の喫煙で満足できるような体になってしまう。
そして、パイプにはわずかだがメンテナンスが必要。
ならし運転でカーボンをためたが、放っておけば溜まりすぎてしまうのだ。
したがってクリーナーと呼ばれる金属製の小さな刀でパイプの内側をこそげとる作業が必要。
時々行って、燃焼口が狭まるのを防ぐ。
パイプを所有する人はこういった1連の作業も楽しみにしている人がほとんど。
パイプこそが嗜好品としての特徴をよく捉えていると思う。
ひょっとしたら紙巻きタバコよりも健康的かも
パイプのメンテナンスをしつつ、様々な銘柄の葉っぱを試すことになる。
日本では昔からキセルと呼ばれる喫煙具があった。
その時の葉っぱはきざみと呼ばれるものを使う
パイプには専用の葉っぱがたくさん用意されていてどちらかと言えば外国製品が多い気がする。
そして私の印象では、アメリカよりもヨーロッパのもののほうがはるかに種類も多く、吸ったときに味わい深いものが多い気がする。
アメリカのものも何点か試した記憶があるが、辛いばかりで少しもおいしいとは思わなかった。
日本にも専用のパイプタバコがある。
この2種類は、もちろん試したこともあるが、どちらかと言えばそれほど強い印象とは思わなかった。
控えめな味付けだったような気がする。
紙巻きタバコと違ってパイプタバコは銘柄が違うと味わいも全く異なるのが普通。
驚くほど辛かったり、甘ったるかったり様々。
そしてどの葉っぱも、皆 結構衝撃があってきつい。
今、みんなが知っている軽い紙巻きタバコの愛好家では、とてもきつくて吸えないだろう。
本当にタバコの好きな、強い刺激を求めている人だけが吸えるのかもしれない。
そして、紙巻きタバコのように燃焼してタールが発生する事は無いので、どちらかと言えばがんの発生率も低い?のかもしれない。
タバコがどんなにきつくても、紙巻きタバコの紙が悪さをしている事は最新の研究で明らか。
今はもうタバコを吸う習慣がなくなったので、はるかな記憶しか残っていない。
ふとしたきっかけで禁煙することになった私は、もうタバコを吸う習慣は無い。
思い出してみるととても懐かしい。