NHKのBSプレミアムは、朝7時半から今の朝ドラ“スカーレット”を放送するが、その直前に“おしん”の再放送をしている。
いろいろなネットの記事を見ていると、今現在のリアルタイムの朝ドラよりも、再放送の
“おしん”が大変な人気のようでその後の“なつぞら”や“スカーレット”をしのぐ人気と聞く。
“橋田寿賀子”原作の今では伝説となったドラマ。
このドラマを書き上げた“橋田寿賀子”がインタビューに答えて語っていたのだが。
このドラマの企画を持ち込んでは断られ続けた過去があったようだ。
目次
おしんの再放送今はこの辺


実は調べてみてわかったが、おしんの再放送もどうやら3月10日が最終回とのこと。
つまり、あと10回。
もう残りわずかな回数。全体で300回近い回数になるので、再放送が始まってからもずっと見ていたが、月曜から土曜までの6回放送するとして月に24回ほど。
すでに1年以上前から放送されている。
実は、今のスカーレットの前、なつぞらのさらに前からも見ていた記憶が。
何度も再放送された番組ながら、きちんと見たことがなかったのがその理由。
調べれば調べるほど驚くべきドラマだったと言える。
もともとは橋田寿賀子が明治生まれの女性から手紙をもらったことから始まっている。
バブルの真っ只中にあった、これ以上ないくらい豊かな時代に、貧しさのみを題材にするようなこんな暗い物語を作るなんて。
しかし女性からいただいた手紙には、様々な苦労の歴史がくっきりと語られていた。
そのことをどうしても記録として残しておく必要があったと。
橋田寿賀子自身は売れるとか有名になるとかまるで考えになかったようだ。
とにかく企画をテレビ局に持ち込んでは断られをひたすら繰り返していたと聞く。
やがてNHKが反応。
脚本自体が、いただいた手紙の事実をもとに書かれているので、最初の頃にあった筏のシーンとか、相当な困難を克服しつつ、スタッフの頑張りや俳優たちの命がけの演技に支えられて有名なシーンとして今でも記憶に残る。
この物語がテレビで放送されるときに橋田寿賀子は密かに思っていたようだ。
軍国女性だった自分のことを考えると、何もない人たちの味わった苦労を、昭和天皇にこの物語を見てほしいと密かに思っていたそうな。
貧しさゆえに歴史の表舞台には出ることがなかった人たちが大勢いたことを自分の責任としてきちんと語り継いでおかなければならない。
そういった決意のもとこの物語を作られたのだ。
橋田寿賀子が描きたかったもの


橋田寿賀子は戦前の生まれであるが疎開経験をしている。
彼女の疎開先が何を隠そう秋田県なのだ。
実は、この疎開先で1ヵ月過ごしたのだが、その時の体験が物語の中に大きく生かされている。
彼女は早稲田大学の演劇部にも所属していたことが。
彼女が描きたかったのは戦争の前から戦争を経験して日本がどのように発展していくかを、1人の女性の目を通して描いてみたかったとのこと。
特に秋田に疎開したときの経験から、貧しい農家で娘が奉公に出されるときには筏に乗って行くと聞いたので、そのまま脚本に書いたようだ。
番組スタッフは大変な思いでこの筏をわざわざ作ったと聞いている。
そして九州の佐賀県で、姑に散々いじめられるが、それも自分の体験からだと語ったことが。
彼女も姑がいて多少は嫁姑の問題があったようなのだ。
その時に彼女がとった行動は、決して引き下がることなく“議論しましょう”との逆パターンでの反撃だった。
そのエピソードが生かされたようだ。
また終戦後、おしんの夫“龍三”が自ら命を断つのだが、その時の設定は戦争に加担したと自覚したものは軍属でなくても責任をとって自殺する人ぐらいいたっていいじゃないかとの思いからそのような設定にしたらしい。
そして、おしんのように等身大の幸せがどれだけ大切かを訴えたかったらしいが、時はちょうどバブル。
橋田寿賀子の思いが届く事はなかったようだ。
ドラマの成功は間違いなく大変なものだったのだが。
そしてドラマは伝説に
このドラマは放送されるたびに様々な反響を呼ぶ。
実は、今放送されているスカーレットも昭和の初期に生まれた苦労して生きてきている女性の物語だが、その苦労とは全く別次元の困難がこの物語の中では語られているのだ。
昨年のドラマだったなつぞらの“なつ”と、“おしん”を比べて、なつの苦労が足りないことを指摘する投稿もずいぶんあったようだ。
ドラマの登場人物にそこまで感情移入するのもかなりのツワモノと言えるが、Twitter等ではそのような投稿は数限りなく見かけた。
特に気の毒だと思ったのは女優広瀬すずが、かわいそうなくらいディスられていたこと。
やること成すこと、一挙手一投足がすべて批判の対象になるようなそんな風潮が。
私が見る限りでは、女優広瀬すずに他意があるはずもなく、役柄を一心不乱に演じていただけだとそう解釈するが。
しかし、おしんの物語の破壊力はハンパなく凄い。
再放送で何気なく放送しているのだろうが、気をつけなければ次に来るメインの番組も食われてしまう。
そのぐらいの強烈なイメージとメッセージをこの番組は秘めているのだ。
企画書を提出しても何度もはねられて、橋田寿賀子がこの物語をドラマとして実現するためにはそれなりの努力を必要とした。
作家橋田寿賀子の一世一代の大ヒット作品。
橋田寿賀子には、20年近く連れ添った夫がいたが、その夫を60歳の時に癌で亡くしている。
肺腺癌と聞いた。
夫には決して告知することなく仕事をそのまま続けて、夫の病気のことを悟られないように死に物狂いでがんばったようだ。
作家橋田寿賀子も苦労人である。
いまだに創作意欲は衰えず、特に“渡る世間は鬼ばかり”は一体何年続いているのだろう。
現在94歳だが、当面の目標として100歳まで現役で頑張って欲しいもの。
毎朝のルーティーンでおしんを見た後はスカーレットを見るのが私の日常になる。
この物語は全く別なタイプでいながら、不思議に朝のひとときの調和を醸し出している。
それにしても、おしんを超えるだけのドラマはこの先出てくるのだろうか?