安心して見れるドラマとしてはどうしても時代劇を上げざるを得ない。
基本的には歴史の1ページを描くものなので、
その時代背景はもとより当時の風習とか衣装とか、また私が最も興味深く見る点はセリフ回し。
なるべくならばその当時のセリフに近いものでやっていただけるとより楽しめると考える。
今回の柳生一族の陰謀は深作欣二が企画立案したもので何度もリメイクされている。
映画版やテレビドラマ版など様々上映されているが、今回はつい最近放送されたNHK枠のもの。
宣伝も盛んにやってたので見たいなと思ってじっくりと見ることに。
目次
江戸時代初期産大将軍即位の裏に潜んでいたと陰謀として描かれる
この物語はいきなり2代将軍秀忠が毒殺されるところから始まる。
ここからもう史実とは明らかに違うので、要するに時代劇の固有名詞を用いた娯楽のドラマだとすぐに納得できる。
さらにこの秀忠が亡くなった時に奥さんの於江さんが生きている設定になっていたけれど、これも実際は違う。
於江は秀忠よりも6歳年上。
旦那さんよりも先に亡くなっているのだ。
また秀忠の死因は今で言うところのガンだと推定される。
ちなみに同じ歴史ドラマでもこの辺の歴史観はNHKの大河ドラマ葵三代で忠実に描かれていたと記憶する。
ちなみに柳生一族の陰謀では、秀忠を暗殺した犯人は柳生宗矩一味と設定されていた。
要するに将軍家の跡目争いに秀忠の長男家光を立てたかったので、次男の忠長を牽制する意味があったと設定。
実はこの辺も史実とはまるで違う。
3代将軍家光は初代の徳川家康の命により、生まれながらにして将軍となるように育てられた。
子供の時から既に次男忠長とは明らかにその待遇が異なっていたし、今で言うところの帝王学を学ばせていたのだ。
将軍となるべく小さい時から教育させていた。
しかも、秀忠が亡くなってから3代目が誰にするかなんて話はこれも実際は違っていて、秀忠は自分が家康にされたと同様に、まだ自分が存命のうちに家光に将軍職を譲っている。
徳川家康は将軍職を自分が存命のうちに秀忠に譲って、自分自身は大御所として権勢を振った。
秀忠は父親と同じことを自分の息子にもした。
今で言うところの生前の権威委譲が行われていた。
この物語の発案者深作欣二はそこら辺のところをよく踏まえて時代劇の物語として面白おかしくストーリーを組み立てたようだ。
実在の人物を利用しているので、名前が出るたびに皆それぞれが本当のことのように受け止めてしまう。
徳川家の指南役となっていた柳生新陰流柳生宗矩はただ単に舞芸の指導だけではなく、政治的にも大きな力を発揮していたとされている。
彼の息子が何人かいるが有名なのが柳生十兵衛。
ちなみに映画バージョンでこの柳生十兵衛を演じたのは千葉真一。
脇役としては主役に次ぐ重要な役どころなので、インパクトのある俳優を起用する必要が。
今回は朝ドラスカーレットでも出ていた溝端淳平。
千葉真一ほどの迫力はなかったが、そつなく演じていたと言える。
どうやら歴史的な事実は無視している



歴史的な事はともかく、物語として面白いかどうかが追求されている。
ドラマが始まって最初の40分50分あたりまでは、実は役者たちの演技がとてもクサい演技で
これはどうしたものかと思ってしまった。
役者一人一人がとにかく大げさに感情をあらわにして、時代劇にはふさわしくない絶叫シーンがずっと続いていた。
演出でそのように仕向けられていたと思わせる。
それは物語のストーリーを際立たせるためには、どうしても俳優たちの演技力に頼らざるをえなかったと。
これらの俳優たちの過度な感情表現は最後の30分あたりに大きく集約されていた。
最後に描かれるシーンはとんでもなくエキセントリック。
普通はありえないだろうと思いような奇想天外な方法で結論付けられていたのだが。
あれだけ衝撃的な事実を描くとなれば大げさな演技の方法が求められたのかもしれない。
結論に至るまでの伏線と思えばクサい演技も納得できる。
テレビドラマとは言え血しぶき舞い散るシーンは迫力満点


このドラマを作るにあたってどうしてもはずせないのが戦闘シーン。
戦国時代の物語なので鉄砲などももちろん出てくるが、中心となるのは弓矢、刀。
これらのものを駆使する斬り合う殺陣のシーン。
こういったシーンに信憑性を持たせるのは血しぶきである。
しかしいかんせんテレビで放送されるドラマなので、一般的な時代劇では切り合うシーンがあっても血は流れないのが常識。
そこをあえて超えてみたんだろうと思う。
全編通して血しぶきが舞っていたので、いつになく迫力あるシーンが目白押しだったと。
特に最後のほうになるにつれてその表現の度合いはエスカレートしていった。
最後に柳生十兵衛が3代将軍家光の首をはねるシーンがあるのだが、今回のドラマの中では生首を持つシーンで全て描かれていた。
映画バージョンでは千葉真一が松方弘樹扮する家光の首を問答無用で切りはねるシーンが描かれている。
しかしそういったシーンがあろうがなかろうがこのドラマの真骨頂が最後に描かれきっていた。
俳優たちの演技が秀逸


ドラマを見ていて感じたのは皆さん殺陣のシーンが上手。
先生がいて綿密に打ち合わせてリハーサルも行ってその上での撮影。
特に今回は血が出るシーンが多いので、小道具を仕込むのも大変だったに違いない。
しかし役者さんとしてはどうなんだろうか、刀で斬られて死んでいくシーンとか、また容赦なく人を殺すシーンとかは役者冥利に尽きるのではと。
こういったシーンで真っ先に思い出すのは黒澤明の椿三十郎。
あの1番最後の決闘シーンを知っている人はどれだけいるだろう。
三船敏郎と仲代達也の居合い抜きのシーン。
わずか1 2秒で勝負が決まってしまう。
そして吹き出る血しぶき。
実はあのシーンは日本の映画だけではなく世界中の映画の作り手に衝撃を与えたのだ。
決闘とはまさにこういったことだよなと。
あのシーンを思い出すくらいの演技で役者たちは演じられていたので、今回の柳生一族の陰謀も私的には久しぶりに楽しめた作品。