モンゴルの民族音楽
何度かテレビでも紹介され、著名な民族音楽モンゴルのホーミー。
いちど聞けば、必ず耳に残る独特の発声。
聞いたことのある人が多いとは思うし、YouTubeでも簡単に検索できるのでお馴染みの音楽だが、どう真似してもあのような声を出すことにはならない 。
いろいろ調べてみるとそれ相応の訓練が必要で、しかもどうやら才能もなければ良いホーミーの使い手とはならないようだ。
もう一つの大きな特徴は、女性の使い手はほとんどいないこと。
この歌は、聞く限りにおいては男性のみが歌っているようだ。
代表的な例を1つピックアップしてみたい
目次
耳を傾けてよく聞いてみるとわかるが、重低音のような響きから高音の笛のような響きに至るまで、 1人の人間が発声しているのである。
しかもその2種類の声色を同時に発声するのがホーミーのホーミーたる所以。
何度もじっくり聞いてみると、音楽好きにはたまらない響きで、はまってしまう。
独特の発声法
6 methods of the khoomii(Throat Singing)
こちらの方のが最もモンゴルらしいホーミーと言える。
もともとは草原で遊牧民が歌うシチュエーションが1番ぴったりしている。
この映像は解説であるが、様々な発声の種類について詳しく述べられているが、その中で鼻のホーミーがある。
そこでの音をよく聞いてみると、鼻から音を抜いているのだが、聞こえてくる音の後ろのほうに少し小さめではあるが、主旋律とおぼしき別の音がしっかりと乗せられているのだ。
ホーミーはもともと倍音で複数の音を発生させるテクニックを駆使する。
そのテクニックを最大限発揮させるとあのような発声になるのではないか。
特に、口の中で舌を上顎のほうに押し付けるような形で空間を2つこしらえているので、その両方の空間に音を共鳴させているようだ。
驚異的なのは、その2つの空間は自在にスペースを変えることができて、前を大きくしたり後ろを大きくしたりして様々な発声方法を可能にしている。
このような特殊な発声方法で、オリジナルは無伴奏で奏でられるようだ。
演奏会などでは馬頭琴と合わせて豪華な曲作りにはなっているが、テレビの特集などでやっていたのはほとんど無伴奏である。これが本来の形だと思える。
この映像の中ではサクソフォン奏者の坂田明がまだ若い頃、モンゴルの中での取材番組として作られたようだ。
この番組だけではなく、様々な日本のミュージシャンがこちらで取材番組を作っている。
見ていて感動的だなと思ったのは、ずいぶん前になるがユーミンが取材したときのもの。
日本でも少なからず愛好者がいると聞く。
コンサートなどではそれなりにお客さんがいるらしい。
多分 他の地域では存在しない
ホーミーの発声方法は、調べてみると喉歌(のどうた)と分類されている 。
これは言葉で説明すると浪花節のような唸るような発声方法。
また高音で笛のような響きを発声。
もともと山岳地帯の遊牧民の音楽だったようだが、1950年代の共産主義時代にモンゴルの国民的音楽として馬頭琴とともに紹介されることが多くなった。
今の世界的なルーツはここから出発してるものと言える。
しかしながら出発は民族音楽で楽器も用いてなかったようだ。
調べてわかることだが、歌詞をつけて歌うようにするものと、あくまでも声だけでスキャットのように歌うもの。いくつかのパターンがある。
映像ではコンサート用のものが圧倒的に多く紹介されているが、地元の遊牧民が歌う本来のパターンが聞き比べとしては大いに推奨していいはず。
様々な発声方法がある中で、ホーミーだけは他に同じものがない。
実は何度も聞くうちにわかったことだが、倍音を使う方法。口の中で舌の位置を巧みに変えて音源を変えていく方法。
この方法を使うと、どうやら腹話術も可能なようだ。鼻のホーミーでは、全く口を閉じた状態で様々な音を発声していた。あの映像は腹話術そのものと言える。
音楽としては他に類を見ないユニークなものと言えるだろう。
まとめ
モンゴル相撲はオリジナルのものはごくまれにテレビでやるだけで実際に見る事はないだろう。
しかし我々日本人は横綱白鵬を始め、多くのモンゴル人力士を受け入れている。
そう思うとあながちまったくよその国の習慣とも言えないだろう。
モンゴルと日本では共通点が多い。
特に民俗学的に見れば、同じモンゴロイドである。子供の頃にはお尻にモンゴロイド斑と呼ばれる青アザがあるはず。
また、あまり一般的には知られていないが、モンゴルは日本とほぼ同じ、仏教国である。
チベット仏教と呼ばれる仏教オリジナルの上座部仏教がそのまま受け継がれているようだ。
お国柄が日本人と似通ったルーツを持ちながらも、全く別な発展を遂げたとも言える。
こと、ホーミーに限って言うならば、日本のどこにも同じようなものは発見できない。
この民族音楽だけはモンゴル国内のみ伝承されてきたようだ。
今では日本を始め、世界中に愛好者がいるものと思われる。
独特な発声方法はとても驚異的だが、この音楽の最も優れた特徴はこの音の向こう側に
モンゴルの遊牧民の見ていた景色、そして吹き渡る風を感じることができること。
紹介したわずかな映像の中でも、モンゴルの草原の風景が目に浮かんでくるではないか。