終戦記念日の頃から見ていたテレビで心に残った番組がいくつかあった。
原爆ピアノと呼ばれる被爆したピアノのドラマ仕立ての物語。
それともう一つはもうずいぶん前になるがアカデミー賞に輝いた戦争映画
戦場のピアニスト。
テレビの番組としてはどちらもピアノにまつわるエピソードについて語られていた。
その中でも広島で被爆したピアノ。
そのピアノの持ち主だった19歳の少女河本明子さん。
広島で原爆の直撃を受けて、そのまま急性放射線障害で亡くなったのだ。
彼女が所有していたピアノはおよそ60年間、誰の手に触れられることもなく放置されていたが、有志の人たちがピアノを復元するために立ち上がって何とか元に戻した経緯がある。
目次
被爆ピアノ
このピアノは河本さんの自宅にあったもの。
被爆して著しく破損したが、部品を交換せずにそのまま修理してもう一度ピアノとして復活できるようにしたもの。
被爆の時の生々しい傷跡も実はそのまま残っているのだ
当時19歳の少女河本明子さんが日々演奏していたもの。
彼女は一家でこの広島に移り住んできた。
戦争が始まるにつれて、広島では食糧事情も悪くなり生活もだんだん厳しいものに。
そんな中でも一家力を合わせて頑張っていたようだ。
何よりも明子さんはピアノの演奏が大好きだったようで、彼女のピアノの伴奏で友達が歌を歌うこともあったと聞いている。
河本明子さん一家
ちなみにこの一家はもともとアメリカで保険業を営んでいたが、明子さんが誕生した後日本に帰ってくることに。
奥様の実家の近くが広島だったとのことでそこに居を構えることにしたのだ。
成績優秀だった明子さんは原爆投下の日も住居から作業場まで出かけており、そこで被爆する。
爆心からちょうど1キロほど離れたあたり。
普段なら小一時間ほどで自宅まで帰れるほどの距離だったのだがすでに息も絶え絶えの状態で川を泳いで渡ったりしたこともあって夕方までかかってやっと自宅近くで力尽きて発見されるのだ。
急性放射線障害で翌日息を引き取る。
彼女は律儀にずっと日記をつけていた。
その日記が今でもしっかりと残っているのでこのドラマ制作のきっかけになったようだ。
彼女は朝ドラでべっぴんさんの主役をやった女優。
他にも様々な役柄でドラマ映画に出演しているが、全く正反対の役柄を難なくこなしているのでかなりの実力派の女優と思う。
彼女の持ち味は、なんといってもその感じ取る力、感性だろう。
原爆ピアノに向かった時に涙を流しながら、
とても弾くだけの勇気は私にはないと述べていたのがとても印象的。
戦場のピアニスト(ウワディスワフ・シュピルマン)
もう一つ、こちらも再放送でやっていた番組を再び見ることに。
この映画を初めて見た時は正直なところそれほど面白みを感じる映画とは思えなかった。
ただあのタイタニックが封切られたときにあの超大作のアカデミー賞の最も大切な受賞をこの映画が阻止したことでとても記憶に残っていたのだ。
タイタニックの主役ディカプリオはアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされていておそらくと言われていたのだが、結果はそうはならなかった。
私には聞いたこともない俳優と、映画が受賞したことでとても印象に残っている。
そしてwowowで何度も放送を見るうちにこの映画の本当の値打ちが納得出来るように。
この映画はロマンポランスキーの傑作。
ナチスのユダヤの迫害を生き抜いた
ピアニストシュピルマンを描いた作品はまさに叙事詩。
この映画はさしたるセリフがあるわけでもなく、淡々と事実関係を描写し撮影していた。
その表現は、およそ感情表現をギリギリまで廃していて、ぱっと見た目はたんぱく、
しかし、よく見ると暴力の表現は驚くほど冷淡に描かれていたとも言える。
この写真は映画の中でも最も重要なシーン。
ドイツ兵に見つかったシュピルマンだが、ピアノの演奏を通じて命を助けられる。
この映画の随所に流れるショパンのピアノは耳に聞き覚えのある人も多いだろう。
かつて私が映画について語った記事。
何度か手を加えて書き直している。
私にとってはそれぐらいインパクトのある大切な映画。
この映画も実はピアノが影の主役だろう。
今回もたまたまやっていた放送を見かけたが、やはり見入ってしまう。
まとめ
被爆ピアノ演奏するマルタアルゲリッチの様子が番組の中で放送されていた。
現存するピアニストの中でも私の中ではトップスリーに入るピアニスト。
私がお気に入りのピアニストは
グレン・グールド
マルタアルゲリッチ
後はその時の気分でもう1人 誰が加わるだろうか。
彼女が被爆ピアノ弾いていて率直な感想を述べていた。
このピアノはショパンがお好きのようで。
演奏していた明子さんがショパンが好きだったからではないか。
だからピアノの中に好きだった持ち主の記憶がそのまま宿っていると。
さすが第一級のピアニストは感じ方から違っているような気がする。
久しぶりに見ごたえのあるテレビ番組で大いに楽しませてもらうと同時に、このピアノを通じて被爆の記憶を語り継ごうとしている人たちの切ない思いも強く感じた。
音楽は戦争の記憶を忘れさせずに語っていくことに貢献するはず。