もうずいぶん前になるが、映画で復活の日を見たことがある。
主演は草刈正雄で、ヒロイン役をあのオリビア・ハッセーが演じていた。
感動的な映画でいくつか印象に残っているシーンも記憶の中に。
特に私が気にいっていたのはジャニス・イアンの歌う主題歌。
この曲が素敵だったのでわざわざジャニスのアルバムを買ったくらい。
さて、復活の日で小松左京が初めてウィルスのパンデミックを描いていたようなのだ。
そのことを少し調べてみることに。
目次
SF作家小松左京
調べてみてわかったのは驚くほどの好奇心の持ち主。
自分自身がSF作家であることに誇りを持っていたと周りの人たちが口を揃えて発言。
科学的なことに対する興味は尽きなく、この当時はオリンピックもあったり、また宇宙開発も米ソで競うように力を入れていた経緯がある。
それと同時に生命の分野においても様々な発見があって、それらのことも常に下調べをして小説のネタにしたと言われている。
もともとは関西の出身なので、京阪地域への愛着はとても強いようだ。
阪神淡路大震災の時に自ら取材に赴いて、その様子を克明に報告していた。
どうすれば速やかに元に戻ることができるのかを全力で考えていて、そのまま疲弊してしまってうつ病を患うくらい思い悩んだと聞く。
SF作家とは分類されるが、作風は多岐に渡っており特にこれが小松左京風と呼ばれるものはなかなか特定しにくいようだ。
取り上げた復活の日は戦争によって世界が滅びる危機を描いた。
小松にとっては過酷な戦争体験があって、そのことが作家人生に大きく影響与えているとされる。
何度も空襲を受けた中で生き延びてきた少年時代がある。
なくなったのは2011年でちょうど東北大震災の半年後だったような。
彼は様々な過酷な災害に直面しても、最後は人類の英知が必ず過酷な現実を乗り越えることができると信じてやまなかった。
その確固たる思いはSF作家の領域をはるかに超えて思想家と呼んでもいいぐらいの支持を集める。
作品のために極限まで調査を進めた
科学的な情報は主にアメリカからのものが早かったようだ。
まだ日本では科学雑誌や様々な情報が発信する前で、彼はわざわざアメリカの資料センターまで赴いて、英語の文章をひたすら書き写して書類として持ち帰っていたらしい。
普通SF作家と呼ばれる人たちは、その資料センターに月に一回2回程度は通うらしいが、小松の場合は週に5回ぐらい通っていたと聞いた。
要するにほとんど毎日。
そのぐらい、新しい情報に貪欲に向かっていったようだ。
何よりも驚くのは当時コピー機なんてものはないわけで、すべて情報は手書きで書き写すしかなかった。
その労力をいとわずに毎日続けていたことがなんともすごいなと。
あのウィルスのパンデミックを描いたとされる復活の日はそうした過酷な取材の果てに生まれた小説。
1964年の作品 復活の日
書籍としては400万部売れたと聞いた。
大変なベストセラーだろう。
ちなみにこの本以上に売れたのが日本沈没。
こちらが小松左京の作品の中で1番の人気作品とされている。
復活の日はデビュー作品と言っていい。
実は、恥ずかしながら私はオリジナルの小説を読んでいない。
私は映画を何回か見て、主題歌の入ったサントラ版のレコードを買った程度。
本来ならば読むべきだとつくづく思う。
こういった重大なテーマを扱った作品の場合絶対にオリジナルが優れているよとかつて本好きの人から教えられたことがある。
あのマイケルクライトンのジュラシックパーク。
あの映画の面白さは格別だったんだけれど、私の知り合いの本好きのその人は映画は原作に比べればつまらんねと言い放っていた。
やはり原作を読まねばならないとつくづく思う。
永遠の0を映画で見たときに素晴らしいと思ったけれど、オリジナルの小説を読んだ時はさらにもっと感動した記憶が。
やはりオリジナルのものには他の芸術分野に置き換えることのできない優れた資質が備わっているのかも。
復活の日はある意味恋愛映画の側面も含まれている。
草刈正雄とオリビアハッセーのみずみずしい演技が今でも思い出される。
さらに私が感動したのが主題歌で、このとき初めてジャニス・イアンなる女性シンガーを知った。
自らピアノを弾きながら歌うのだが、シンガーソングライターとして驚くほどの説得力を持ち合わせていたと考える。
まとめ
復活の日は、今回のコロナ騒動をあたかも予言したかのような作品だと皆が口を揃えて言っているのテレビで拝見させてもらった。
この作品は戦争体験と科学オタクのSF作家小松左京の作品。
彼はウィルス兵器なるものを様々な資料の中から設定として取り入れて、イギリス陸軍が開発した兵器を誤って山中で容器を破損したがために世界中の人間が死んでしまう設定に作り上げている。
しかも、このウィルス兵器はウィルスの中心部にある核酸しか持っていない特別なタイプとの設定。
さらにウィルスはその中心部分にDNAかRNAを持っているが、そのウィルスがどのようにして感染し毒性を発生していくのか克明に調べあげていた。
今なら私レベルの素人でも知っているような知識だが、この当時ではほぼ最新の科学情報と言える。
このウィルスは条件が整うと爆発的に増えて人類以外の生命体もことごとく感染させて死滅させる。
物語も驚くほど精緻に作られていて、地質学や軍事科学などの最新の情報を取り入れて複雑に組み上げられていたね。
物語の最後では南極に残ったわずか10,000人ほどの人類の生き残りが、世界を再生させる内容で終わっている。
小松左京は人類の英知が必ず勝利することを物語の締めに据えた。
かなり古い映画だけれどどこかでもう一度やっていただけないだろうか。
そういえば日本沈没はこの間やっていたけれど、できればこの復活の日ももう一度見てみたい。