久しぶりに映画館で映画を見ることにしたので、その感想をアップ。
コロナ騒動のおかげでまともな防衛スケジュールを取れることなく映画館も配給会社も苦しい状態が続いていると思っていた。
大作と呼ばれる主な作品はすべて上映が後回しにされたり、また上映そのものが取り消しになったものも。
その中で今回の映画がこの直に上映されたのは私にとってはまさにうってつけだったのかも。
もともと歴史の様々なことについてとても興味があって、しかも映画好きとなればこの映画をスルーすることなんてできるはずもなく。
普段はめったに利用しない吹き替えなしの字幕スーパー版の通常のスクリーンでの上映。
しかし、期待を裏切られる事はなかったんだなぁ。
目次
ミッドウェイ海戦史実では
真珠湾攻撃の後、日本はさらに次の作戦を決行する必要があった。
それがミッドウェイ諸島を占領してアメリカ本土を攻撃する足がかりとなる基地を作ること。
それらの作戦は、全て山本五十六の発案によるもの。
もともと山本五十六は当時の日本では有名な戦争回避論者。
彼が絶対に戦争をやりたくない旨を常に公表してはばからなかったので、暗殺話が持ち上がるぐらい、日本では有名と同時に要注意人物だったようだ。
何よりも彼はアメリカに駐在経験があって、アメリカの国力を熟知していて、しかも英語にも堪能だった。
アメリカをよく知る軍人なるが故に、まともに戦って到底叶う相手でないことを重く受け止めていた。
そして、彼の立てる作戦は驚くほど奇抜なもの。
当時の海軍にあたっては、主力となる戦艦同士が雌雄を決する戦いこそが海軍の真骨頂と思われていた時代。
きたるべき戦いは航空機が主力となることをあらかじめ予見していて、その準備を怠ることなく進めていた。
そんな中発案されたのが真珠湾攻撃で、航空機主力による先制攻撃。
山本の目論見通り大成功を収めるが、作戦は次々とたたみ込んで、次のステップに進まなければ、もともと国力に決定的な差のあるアメリカとはまともに戦えるはずもないと踏んでいたようだ。
真珠湾攻撃の後は予想ではアメリカは戦意喪失で講和に応じるのではと甘い期待を抱いていた。
しかし、山本がもしミスを犯したとすればここ。
戦意喪失なんてとんでもない!
これは言ってみればアメリカの罠にはまったようなもの。
アメリカは日本に先制攻撃をさせたくてうずうずしていたのだ。
その目論見は思った通り、日本が先制攻撃を仕掛けたことによって、アメリカはこれで国を挙げて戦争に突入できる。
もし、真珠湾を攻撃しなければアメリカは日本に対して戦争行為を行うことができなかったとも言える。
ただし、日本としては引くに引けない厳しい事情があったのも事実。
石油製品の8割をアメリカに頼っている以上、その補給を頭から停められてしまったのでは国が成り立たなくなってしまう。
さらに、アメリカは中国からの無条件撤退を要求していた。
この時日本は中国戦線に700,000の将兵を投入。200,000人ほどの犠牲者も出ている。
手ぶらで帰ることにはならなかっただろう。
さて、歴史的にはこういった事情を踏まえて、ミッドウェイ海戦は真珠湾の半年後の話になる。
結論から言えば戦力的に上回っていたはずの日本が、ボロ負けするのだ。
映画は戦争映画の装いだが
映画はまさに今日封切られたばかりなので、ネタバラシをするわけにはいかないが、差し障りのない範囲で少し説明をしてみたい。
ミッドウェイ海戦は過去にも何度か映画化されたことがあったが、今回の映画はもちろん戦闘シーンもかなり綿密に作られてはいるのだが、どちらかと言えば登場人物一人ひとりの心の葛藤を描いていたようだ。
そういったシーンが長く続くので、戦争映画を期待する人にはひょっとしたら少し冗長に映ったかもしれない。
しかし、こういった映画の場合、戦闘シーンに注目してしまえば、映画の作りはおのずと形が決まってしまう。
70年以上も前の古い時代の戦争をSFXを用いて描いてみても、どれだけの面白いものができるだろうか。
最新のコンピューター技術では迫力ある映像シーンが山ほど溢れているのだ。
1つ間違えばつまらない映画を作ってしまうことになってしまう。
エメリッヒ監督の思惑では、登場人物はすべて実際に当時存在していた軍人たちをそのまま実名で登場させている。
つまり、俳優たちが演じていた様々な個人の名前の兵隊たちは全て記録として残っていた人たちばかりなのだ。
映画の描き方としては、戦力の面で圧倒的に劣っていたはずのアメリカが劣勢を奇跡的に挽回して勝利をもぎ取るストーリー。
その中では重要なポイントとなるのが情報戦。
既に日本軍の暗号はそのことごとくがアメリカ側に傍受され解読されていた。
そのことについても映画の中で詳しく語られている。
もし暗号解読がなければミッドウェイは日本軍の思惑通り、支配されていてアメリカへの本土攻撃への足がかりとなっていた可能性が。
しかし、その作戦行動が実はアメリカに筒抜けになっていて、しかも戦力的に劣っていたはずのアメリカに逆転され大敗を喫してしまう。
俳優たちの名演が光る
豊川悦司演じる山本五十六が存在感充分だったかもしれない。
彼の英語も披露されていたし、作戦を命じることや、部下たちとのやりとりなど克明に描かれていた。
國村隼演じる南雲中将は真珠湾攻撃の時の立役者だが、今回は読みを間違えて日本軍を大敗させる原因を作ったかもしれない。
航空機への爆弾の載せ替え時間が、主力空母の命運を決めてしまったのだ。
また気の毒だなと思うのは、日本軍の攻撃命令がアメリカ側に筒抜けになっていたので、その裏をかかれてしまったこと。
日本軍の戦闘機が攻撃用に飛び立って、空母にほとんど護衛がいなくなった状態を見計らってアメリカ軍戦闘機が逆に攻撃を仕掛けた。
これがまんまと成功する。
ここら辺のいきさつも映画の中ではさらりと描かれてはいたが、この映画は予備知識なしで見るには少し複雑かもしれない。
どうしても登場人物たちの心の有り様が中心に描かれるので、歴史的な説明は画面の中で事実としてそのまま流れるだけなので、知らずに見たのでは途中何が何だかわからなくなってしまうかも。
エメリッヒ監督が描きたかったもの
映画の最後の方にエメリッヒ監督の思いとも言うべき言葉が。
この映画をミッドウェイ海戦に参加した日本軍将兵に捧ぐ
映画の中では、どちらが正しくどちらが誤りのような描かれ方は一切していない。
戦争に勝者はいない(ローランドエメリッヒ)
歴史的な事実を、その時存在した人たちの胸の内を想像しながら淡々と描いていただけ。
この監督は昔から娯楽映画を作ることでとても有名な人。
私がよく知っているのはインデペンデンス・デイ。
この映画で誰もが楽しめるSF娯楽映画を作っていた。
このときの映画作りから考えると、今日見たミッドウェイはどちらかと言えば社会派のような意味を持つだろう。
戦場のピアニストを見たときと同じような気持ちになったので。
しかし、映画の完成度は私的には申し分ないものと思った。
様々なダメ出しの意見ももちろんネットでは検索されるが、それは娯楽映画を期待していた人たちの期待はずれの思いがあるからでは。
娯楽映画とはちょっと違うので、そこがポイントなのかも。
映画館は私と同世代とおぼしき観客が30人近くはいたような気がする。
私と同じような歴史マニアだったかもしれない。