わずか15分の放送枠で描くにはとても重い内容であるにもかかわらず。
エールが扱うテーマは思いのこもったもの。
音楽こそがすべての祐一君。
それは人を幸せに明るくさせるものであるにもかかわらず、今彼が果たしている役割は国民全体を戦争に駆り立てるためのもの。
頼まれるといやとは言えない祐一君。
そこだけはどうしても消化することのできない重大な葛藤となって彼を責め続けていた。
目次
藤堂先生の所在
戦地の本部ラングーンからあまり動く事はしていなかった祐一君。
しかし調べてもらったところ、恩師藤堂先生がこの近くの前線基地に配属されているとの事。
悩んだ末に慰問のために訪れることを決心する。
この時、同行してきていた画家と新聞記者の仲間は自ら志願して最前線へと赴いていたのだ。
最前線の様子を聞くにつけ、戦場は驚くほど過酷であることをうすうすは理解し始めている祐一君。
もし、藤堂先生が現地にいるとの事実がなければ、おそらくは前線への慰問は計画しなかったかもしれない。
それは軍属ではない人間であっても、実際に戦場に行ったならば命の保証は無いわけで。
それは最初から覚悟しているはずの事だったのだが。
鋭い指摘にたじろぐ祐一君
ラングーンの本部での厳しいやりとり。
画家は祐一君に鋭い指摘をする
あなたの音楽は人々を戦争にかり立てているではないか!
この言葉を聞いたときの祐一君の激しい狼狽。
それはまさにズバリ心の奥底をえぐられる事実。
祐一君の葛藤はまさにそこなのだ。
戦っている兵隊たちのために何とか元気をあげたいと頑張ってはみるものの、それはすなわち人々を戦争に駆り立てる事実がいつまでもついて回ってきた 。
心の中では、葛藤がどうしても抑えられずにそれは激しく自分自身を責め続ける。
そしてその葛藤を必死で押さえ込もうとしている祐一君はそこを指摘されると平静を保てない。
この指摘を受けたときの窪田正孝の迫真の演技は賞賛に値する。
自分自身の音楽が自分の気持ちとは真逆の効果で世の中に受け入れられてしまっている。
それを必死に押し殺して自分流に正当化しようとしても所詮は無理がある。
ここで抱く激しい感情は戦争が終わった後、長く祐一君を苦しめる。
福島では
音ちゃんと華ちゃんは福島に疎開しているような雰囲気に。
お母さんまささんと浩二君との生活は穏やかでとても安心できるもの。
特にまささんと華ちゃんの信頼関係は何にも変えがたい。
その事は音ちゃんにも浩二君にもとても好ましいもの。
エールの中で唯一ほっとできるシーンがここ。
浩二君とまささんの2人のやりとりの中で出てきた亡くなった三郎さんと安隆さん 。
わざわざこのためだけに撮影していたんだね。
戦争中の厳しいエピソードだから絶対に明るくなんかなりっこないけれど、このような演出は作者のユーモアと優しさが感じられる。
戦地の音楽会


戦地では和気あいあいと楽団結成の話が持ち上がる。
パートはドラム、ギター、トランペット。
そしてなんとボーカルを藤堂先生にお願いすることに。
たとえ前線基地とは言えこのような試みがなされると物語は一気に明るくほころんでくる。
やっぱり音楽の持つ力は偉大だよなと思いつつ、しかしここが戦場であることの皮肉。
エールではこの先にも厳しいエピソードがいくつか予定されているが、何せ最前線での物語。
敵の攻撃がないとも限らない。
そのような辛く厳しいことがおそらく描かれてくるだろうと。
しかし戦地で歌を歌う森山直太朗もずいぶん新鮮に移った。
ビルまでのエピソードがどのような結末になるのか今週の話はまだ2日目なので、あと三日間できっちりと描かれるのだろうと想像する。
戦争と音楽。
私の中でもとても重要なアイテムで、ここを同時に描かれる物語は数少ないのだ。
毎朝のルーティーンで見る朝ドラなのに、すでに朝ドラの集中力をはるかに超えて物語に入り込んでしまっている自分がいる。