祐一君は、戦後放送作家池田二郎さんからの誘いで復活できた経緯がある。
今日の物語ではこの池田さんが重要な役どころで登場している。
彼のキャラクターを演じている
北村有起哉がとてもユニークで存在感たっぷり。
それを見ているだけで納得しちゃっている自分がちょっとこそばゆくもあって。
今日は新しく舞い込んできたチャンスに久志君がどんな対応をするのか、次に来る物語への布石となるか興味津々で鑑賞することに。
目次
相変わらず自堕落な久志君
久志君は父親の葬儀の時に周りの噂話が耳に入ってきたことがトラウマとなって心に残っている。
戦争中 軍歌なんか歌って戦犯ものだよ。
お父さんをずいぶん苦しめたはずだ。
この言葉に激しく反応。
自分が一生懸命がんばってきた事を頭から否定されたばかりでなく、そのことに罪を問われる。
このことを考えたときにいてもたってもいられなくなったのだ。
モデルとなった伊藤久男も同様の苦しみで戦後長くスランプが続いていた。
軍歌歌手として大活躍していた伊藤久男だが、彼の歌を聴いて若者が戦場に赴いて行ったと曲解していた。
大勢の若者が亡くなったのは自分のせいだと。
それは、戦後すぐに祐一君が抱いていた苦しみと全く同じもの。
史実では古関裕而さんは戦後すぐに活躍したことになってはいるが、伊藤久男はこの物語の通りだと言えるかも。
自分のせいでたくさんの人が亡くなった認識は簡単に置き換えられるものではない。
誰がなんと言おうとそこから発生する苦しみはほとんど永遠に死ぬまで続くと捉えられた。
池田さんの計らい
祐一君が生涯の友達と公言してはばからない佐藤久志。
そしてまっすぐに友達を心配して力になってやろうと努力し続ける姿に池田さんはカルチャーショックを受けたように見えた。
池田さんは長く生きて学んだ事は人を信用してはいけない、頼れるのは自分だけと凝り固まった思いがある。
そのことを真っ向から否定して友達のために精魂傾けている様子は驚くほど意外なものに映ったようだ。
そしてその友達が佐藤久志であることにすぐに気がつく。
本当は、興味本位とおせっかいだけで久志君のバラックを訪ねたのだが、そこで粋な計らいをする。
博打を持ちかけて、もし負けたなら俺に飯をおごれと。
そのかわり勝ったら、財布の中の金を全てお前にやる。
この場合、勝ち負けは関係ない。
どれだけ相手の心の中に入っていけるか。
結局は池田さんが勝ってラーメンを奢らせることに。
そのラーメン屋さんは何と智彦さんの屋台。
物語からみてもとてもユニークな計らいが。
なんとレコーディング❣️
さすが作家池田二郎。
久志君をイメージしてすぐに作詞してしまう。
今の久志君が抱える心の闇を見事に表現していたよね。
このときの描き方ですごいなと思ったのはあれだけすさんでいた久志君がレコーディングを簡単にオーケーしたこと。
そんなもの歌えるか!と断ることだってできた。
後から、お金欲しさにレコーディングしたと言っていたがそれは祐一君がすぐに嘘だと見抜いていた。
もしお金のためだけに歌ったならば、すぐに気がついていたと。
あの歌いっぷりからは、本当に心の底から気持ちを込められなければ伝わらないほどの歌い手の思い入れがこもっていたと。
軍歌だけではなく様々な歌に対応できる歌手としてなんとか立ち直ってほしい周りの人たちの思いが久志君に通じるかどうか。
歌い手としてのポテンシャルは決してさびついてはいないと証明していたような。
闇は深かった
久志君の抱えている闇は一筋縄では太刀打ちできない。
父親の事、軍歌を歌い続けて若者が大勢戦場に赴いて亡くなったこと。
そのことを考えると自分が安穏と生きること自体が罪を犯しているようなそんな気にさえなってしまう。
心の闇は驚くほど深い。
そして簡単に方向転換できるほどの器用な人間ではなかった。
なんといっても周りから認められた芸術家なのだ。
心を込めて歌うことができる事は、すなわち周りの様々なことに激しく反応してその思いを汲み取ることができる。
芸術家であるが故に、人並外れた感性の持ち主でその感性は武器でもあって自分自身の味方になることも多かった。
しかし、今は逆に諸刃の剣で自分に向かって激しく切り込んでくる。
自分の持ち合わせた感性が自分の苦しみになっている事実。
ここから立ち直る事はたやすいことではないが、どうやら明日この物語に決着がつきそうだ。