先週からの流れで行くと今週の始まりは智彦さんのラーメン屋さんが発端。
うまく軌道に乗れるかどうかはこれからの事として、ハッピーエンドで終わった最後にあのプリンス久志君が登場。
およそ考えられないようなみすぼらしい姿で自堕落な生活を送っている。
かつて 祐一君が戦後すぐに作曲活動を再開できなかったように、彼もまた戦後、自分自身の経歴が仇となって自分に降りかかってきていた。
軍歌を歌ってきた歌手として世の中からはバッシングを受ける毎日。
そして、彼自身も自分自身の行ってきた活動が思い出すたびに後悔と罪悪感でいたたまれなかったのだ。
今週はそんな彼が再び歌手として復活するまでの物語が描かれる。
目次
物語はここから始まった
吟ちゃんの夫智彦さんは彼も戦後なかなか自分自身を見つけることができず苦労した人。
仕事を探さなければ妻を食べさせていくことができない。
そんな中、捨て身で飛び込んだのがラーメン屋。
その仕事は新たな出会いもあって、やりがいのある仕事へと変化していたのだが、そんな時 かつての仲間から貿易会社の重要な仕事を紹介される。
彼はその申し分のない仕事をわざわざ蹴って、再びラーメン屋へ戻ってくる。
それは、自分の息子とも言えるくらい歳の離れた浮浪児ケンとの出会い。
そして苦しむ夫を見ていて、自分の思うようにしてくださいと優しく応援してくれる妻。
妻の優しさに思わず涙ぐんでしまう素敵なシーンも。
この申し分のないハッピーエンドに突如登場してきたのがすさんだ生活をしている久志君。
いったい彼に何があったのかと今週はその話題でもちきりに。
久志 すさんだ生活を送る理由
久志君は故郷の家族がみんな死んでしまって天外孤独になってしまったようだ。
その故郷に帰ってみて父親の葬式に出席していたところ、周りでヒソヒソと噂話を立てられる。
それは軍歌歌手として活躍していたことを激しくなじる内容。
さらに、父親もきっと苦しんでいたに違いないと陰口を。
そのことを聞いたときに、自分に対する激しい罪悪感と後悔の念が湧いてきてとてもまともでいられなくなってしまったのだ。
すさんだ生活が始まったのはそこから。
博打と酒。
そのことに終始して、およそ健康など考えるはずもなく、その日その日を投げやりに過ごす。
その彼を心配して色々と世話を焼いてくれたのが藤丸ちゃん。
彼女がとうとう面倒を見切れなくなって祐一君たちを頼ることに。
そこで初めて福島三羽ガラスのそれぞれの姿が明らかになることに。
励まそうとする祐一君と鉄男君にも心を開くことのない久志君。
彼の抱えているトラウマは口先だけでどうなるものではなかった。
エールのユニークなところは困っているときにはどこからか救いの手が差し伸べられること。
今回も先週から登場した池田二郎さんが絶妙のタイミングで助け舟を出す。
池田二郎 彼も戦争中は苦労してきた。
そして戦後放送作家として必死でアイデアを出しながらラジオドラマの制作を続けてきた。
古山祐一という最高のパートナーを得てドラマは大成功。
そんな中、ふとしたきっかけで祐一君から久志君のことを聞き出す。
わざわざ彼のために1曲作詞してくれたのだ。
そして、そのレコーディングをなんと引き受けることになった久志君。
彼の歌は決して衰えたりはしていなかった。
むしろどん底を味わった歌声は優しさに満ち溢れていて抒情感たっぷりに聞こえる。
捨てる神あれば拾う神あり
今回久しぶりの登場になった藤丸ちゃん。
彼女はとてもユニークな役どころなので、きっとまたそのうち登場するだろうなと思っていたところが、やっぱり!
うらぶれた久志君をかいがいしく世話する役どころ。
いかにも尽くす女性に見えるかもしれないが、それ以上に彼女自身も歌手。
船頭可愛やの大ヒット作品を歌っている。
むしろ、同じ歌手同士と見た方が良いのかも。
彼女が、祐一君と鉄男君に報告したことからこのエピソードは始まることに。
なんとしても立ち直ってほしいと思う2人に対してなかなか心を開くことができない久志君。
最初のレコーディングの時に、セルフが全くない状態で久志君の背中を軽く叩く藤丸ちゃん。
このシーンはそれぞれ歌手だからこそ通じるものが。
久しぶりのレコーディングでもうろたえる必要なんかない!
堂々とやりなさい!
あたかもそう言っているかのように見えたよね。
栄冠は君に輝く
今週の1番の見所はこの最後アカペラで久志君が歌い始めるシーン。
実は、このシーンは山崎育三郎のアカペラの歌だけで撮影したようだ。
後から映像を見ながらオーケストラを合わせていくとの設定で、リズム感などまた音程が決して狂わないようにかなり気を使ったと。
この辺の1連のやりとりは、朝ドラの後のあさイチのゲストで登場した山崎育三郎自身が詳しく語っていた。
ちなみに歌手がアカペラで歌を歌って後からオーケストラを組み合わせるやり方は実はミュージカルではレミゼラブルで既に行われている。
ただし、その時には歌手たちはイヤホンをつけてピアノの伴奏を聴くことができるように設定。
伴奏の音は実際の録音には使用されないので、音としては歌手の歌唱だけが録音される仕組み。
このやり方はとても合理的で、音が途中で狂ったりとかリズムが乱れたりとかしない大きなメリットがある。
映画レ・ミゼラブルの時は、写りこんでいたイヤホンを後でコンピューター処理して全て消したそうだ。
今回のエールのすごかったところは、山崎育三郎が伴奏も何もなしにいきなりアカペラで最後まで歌いきったこと。
後から組み合わさったオーケストラが何ら違和感なく噛み合っていたではないか。
正直言って、本番一発オーケーの撮影なことを聞いたら驚くしかない。
プロの歌手なればこそだが、誰彼真似できることでは無いね。
山崎育三郎がどれほどの実力者なのかをまじまじと見せつけられた。
今週は、だから山崎育三郎で決まりだと私は思った次第。