いよいよ岡安が店じまいをすることになって、さらには福富の福助君が出征しなければならない。
時代の流れとは言え、厳しく辛い現実はさらに追い打ちをかけるように次々とやってくる。
この頃は、ほとんどの芸術活動は休止状態に追い込まれていた。
絵画や文学など、愛国者しか認められないような状況では、芸術家の創作意欲といえども限りがあるので。
そして、音楽も然り、舞台芸術も大きく影響される。
生き残りをかけた戦いは、すでに長く続いてきた。
その正念場はいつまで続くのか。
目次
思い出とともに
岡安が店じまいをしようとしたときに、何とかして存続のために力になれないのかを考える千代ちゃん。
しかし、ごりょんさんの決意は固かった。
去り時こそ1番大切なんや
立つ鳥跡を濁さず
そう言いながら、店のお茶子達にごひいきさん巡りの挨拶をさせる。
手伝うことがないように見えた岡安の店じまいだが、ごりょんさんと千代ちゃんで座布団干しを。
9歳の時から岡安で過ごしてきた千代ちゃんはすでに20年以上が経っていた。
彼女にとってはこちらが実家とも言える存在。
家を追い出されたときのあの実家は今は廃墟で跡形もなくなっているだろう。
彼女の半生が詰まった思い出の場所。
こちらの建物はどうやらそのまま残すとのこと。
ごりょんさんと旦さん2人暮らしになるようだ。
岡安と福富
もともとは本家の福富。
後発の岡安と常に店の繁盛を競いあってきた。
長い歴史の中ではお互いいがみあうことも多かったのだが、それぞれの家の息子と娘が結婚することによってお互いのわだかまりを捨てて、良好な間柄を築くことができていた。
福富のお菊さんはお姉さんと呼ばれて慕われているのだ。
何よりもこちらでは跡取りの福助君が岡安のミツエちゃんと結婚して一福くんも生まれている。
フタを開けてみれば親戚同士の間柄。
そして、それぞれが芝居茶屋としてがんばっている中、福富は早々と店を清算。
喫茶店と楽器店に鞍替えを成し遂げていた。
最初は英語などを用いて当時としては先端を行くような商売だったが、戦争が始まってからは全てが日本語表記となり、またジャズなどの外国の音楽は一切禁止となってしまった。
そうして時代に推し流されながら、今最後に残った岡安も店じまいを。
お菊さんもおシズさんも全力で突っ走ってきた最後がこのようなことでは見ていてもちょっと気の毒な気がするね。
道頓堀の花が1つ2つ散ってしまったような気さえしてしまう。
千代ちゃんの発案
既に福助くんの18番のトランペットのジャズは演奏禁止になっている。
しかし、これから戦争へ行くにあたってせめて最後に自分の好きな曲を思いっきり演奏させてやりたい。
その思いは最初ミツエちゃんからあかされる。
見つかったらとんでもないことになると知りつつ、最初は乗り気でなかった一平君もついに折れて演奏することを許可。
最後の演奏は「埴生の宿ジャズバージョン」
演奏はリアルタイムではなかったけれど、ピストンを操る右手の様子とかかなり研究したと見えて、違和感なく画面には映っていたね。
ただし、楽器演奏の経験者なら、実際には演奏していないことがすぐにわかってしまうけどね。
さて、演奏していることが警察にでも通報されたならただでは済まないことに。
そんな中、内緒でやったはずの演奏会は大勢のギャラリーが揃って(ほとんど鶴亀家庭劇のメンバーと岡安福富の従業員たち)
途中警察に踏み込まれて、家庭劇の役者たちによってうまくごまかすことにも成功。
思い出に残る演奏会は、こうして壮行会とともに無事終了。
出征 福助
既に福助君は自分の家族の事やこれからのことなどを一平君と千代ちゃんに託していた。
一福君は子供ながらにしっかりと父親に寄り添う。
壮行会の時に用意された御膳がなんとも見ていて切なくなる。
番組スタッフも色々と時代考証しながら苦労しているのがよくわかる。
もう戦争が終わるのも間近の時代に差し掛かってきているが、予告編であった鶴亀家庭劇の解散もすぐに発表されるのでは。
全力で頑張ってきたことも、ここで一旦リセットボタンが押される格好になる。
昭和16年から20年にかけては戦争一色の時代背景で、世の中の人すべてが生き残りをかけて全力で頑張らなければならない時代だった。
おちょやんで描かれる物語もこの辺が最大の山場になるのかな。