先週の予告編で描かれた通り今週の始まりは厳しい現実を突きつけた「おちょやん」。
老舗福富の旦さんとごりょんさんは空襲で亡くなったのだ。
岡安の旦さん、ごりょんさんは何とか無事生き残ることができた。
大阪大空襲では大勢の人がなくなったが、そのエピソードをモチーフに今週の物語が語られる。
亡くなった人たちも悲惨だが、生き残った人たちも同様の試練が待ち構えていた。
そんな厳しい時代の物語。
目次
壊滅的な被害を受けた道頓堀
一平君と千代ちゃんは1回限りの公演で京都にいたので、空襲の難を逃れることができたのだが。
しかし被害の状況はすぐに知れ渡ることに。
急ぎ道頓堀へとって返してみたところが、状況は惨憺たる有様。
この時は大阪大空襲の1回目が終わって、この時すでに数千人の犠牲者が出たと聞いている。
見た感じでも以前の街並みの様子はかろうじてうかがえるくらいで、およそ人が暮らせるような状況ではない。
実はここから何度も空襲は繰り返されることになる。
すでにこの時、アメリカは日本の制空権を完全に支配できていた。
当時の様子を考えてみれば日本の南方戦線のグアムサイパンが陥落した後で、この時東京や大阪を爆撃したB29はサイパンのテニアン島から出発している。
ここに前線基地を作られてしまえば、日本の本土などひとたまりもなかったのだ。
当時の米軍のパイロットたちの証言があるが、彼らはまっすぐ西へ向かって飛ぶんだそうだ。
そして飛んで行くと前方に富士山が見える。
右に曲がれば東京、左へ曲がれば大阪と実にわかりやすい仕組みになっているようだ。
すでに、大阪大空襲が3月13日だったのに対して、東京は3月10日に同様の空襲が行われた。
アメリカは総力を挙げて日本本土への攻撃を開始し始めた頃。
福富消滅
先週でもこの写真を利用させていただいた。
かつて福富の喫茶店と楽器店があった場所は瓦礫の山と化している。
ここで悲しい事実が告げられることに。
福富のご主人福松さんとお菊さんは空襲の被害で亡くなられていた。
今日の物語の中でそのいきさつが詳しく語られていた。
岡安の宗助さんとおシズさんを救うために足しげく通って疎開を進めていたお菊さん。
みんなが無事なんとか思ったところが、大事にしてきた福富の暖簾を忘れてきたことに気がつくのだ。
その忘れ物を取りに帰って命を落とすことに。
結局この1時帰省が仇となった。
2人の亡骸のそばにたたずんでいる岡安の宗助さんとおシズさん。
その側に放心したように立ち尽くすミツエちゃんと一福君。
あまりに厳しい現実だが、亡くなった人たちを思って必死で力になろうとする千代ちゃん。
ミツエちゃんの背中をさすってあげるが、2人とも結局は泣き出してしまうばかり。
誰かが亡くなると生き残った者たちは自分を責める。
それが個人へのせめてものお弔いの気持ちを表すことになるのだが、見ていても切なくなるよね。
この時代、全国でこんなことが起こっていた。
B29の空襲は無差別攻撃以外の何物でもないのだが、誰もそのことを咎めるはずもなく。
昭和20年の3月に入っているので、終戦まではもう半年もない。
およそ反撃も何もあったものではない。
本土決戦などを唱えるものも軍部には多かったようだが、所詮誰からも指示はされていなかったと言える。
ミツエちゃんと一福くんは千代ちゃんの所へ
行き場所を失ったミツエちゃん親子。
空襲の難を逃れた一平君のところに居候をすることになる。
食料の配給その他、もう国としての形は残っていないに等しいが、それでも人々は皆懸命に頑張って生きようとしていた。
今日はそんなエピソードがなんとも切なく描かれていたが。
千代ちゃんは皆が揃って食事できることが無条件にうれしそうにも見えていた。
寛治君は満州行きを志願
今回の空襲などを受けて、寛治君には思うところがあるようだ。
それは満州へ行って芝居の慰問団に入って活動をすること。
今回ミツエちゃん親子がこちらの家に厄介になることで決心がついたとのこと。
それは自分の居場所がなくなる思いではない。
家族が1カ所に集まることができて一安心つけると思ったのでその結果自分に何ができるかを考えたようだ。
満州へ行けばそれなりに給金が出て、仕送りすることも可能なんだと。
つまり彼なりにこの家族の力になりたいと真剣に悩んだ挙句出した結果。
しかし、その決定は一平君と千代ちゃんの大反対に会うことに。
当時の新聞記事の大本営発表はそのほとんどが嘘八百。
大抵の場合、被害はごくわずかとかの言い回しで片付けられていたが、現実にB 29の大挙してやってくる空襲を見たなら、明らかに内容がちぐはぐなことに気がつく。
そのことで分析すれば、おそらく日本は制空権はおろか日本の本土以外は全て失っているのではと考察できる。
結果一平君が出した結論は
この戦争は負ける!
彼以外にもそのように考えている人は多かったのでは。
俳優の三船敏郎が、戦争中の思い出として語っていた言葉を思い出す。
日本が戦争に負けたときに思ったそうだ。
大勢の人を無駄死にさせやがって!
ざまぁみろ!
そう思ったと。
さて今日の物語はそこまでだが藤山寛美のモデルとされる寛治君は実際に満州に渡っている。
そんなことも含めて物語は続く。