実はネタバレ情報で知ってはいたけれど、戦死者が出ることは悲しく厳しい。
どんな描かれ方をされるのか興味津々だったのだが、今までの朝ドラの中でも戦時中のエピソードがたくさん語られてきたが、おちょやんが1番過酷な描き方をしていると思ったね。
どうしても客観的な他人目線のものがすべてだった気がするけれど、人がなくなったらどんなふうに悲しみが押し寄せてくるのか、生き残った者たちがどんな気持ちで暮らしていくのかが今日のエピソードで克明に描かれている気がする。
福助、百久里の両名が戦死。
目次
福助 百久里戦士
夜中にこっそり抜け出して小声で芝居の稽古をしている千代ちゃんに一平君がそっと寄り添う。
どこまでも芝居が好きなんやな
最後に残った砦が芝居なんだと改めて思う千代ちゃん。
しかし翌朝自宅に帰ってみると福助君の戦死報告が。
紙切れ1枚で死亡を告げられて見たところで家族はどんな反応すればいいんだろう?
感情が高ぶって気持ちを抑えられないミツエちゃん。
福助君のことを思えば冷静でなんかいられるはずがないよね。
悲しみに打ちのめされている母親の傍で健気に強がってみせる一福君。
僕はお父ちゃんを誇りに思う
なんとつらく悲しい響きだろうか。
その後1人で竹槍修行に励む一福君の姿の悲しいこと。
父親を誇りに思うと言ってみたところで、戦死した事実が変わるわけでもなく、また悲しい気持ちは幼なくても同じ。
竹槍を激しく突くことで気持ちをまぎらわそうにも涙をこらえるのが精一杯。
そんなミツエちゃんには岡安の旦さんとおシズさんが慰めに来るが、心の傷を癒すには到底及ばなかったのだ。
失意のミツエちゃん
ミツエちゃんは両親が慰めに来てくれても、頑なに心を閉じて帰ってくれの一点張り。
誰にも会いとうない
何とかして励ましたいおシズさん。
あんたがしっかりせんでどうするのや😠
そう言って叱咤激励するけれどそれ以上のものにはならなかったのだ。
自分の周りのものに容赦なく不幸が襲ってくることを、我が事のように受け止める千代ちゃん。
ウチががんばらなあかん
歯を食いしばって前へ進もうとするが、頑張れば頑張るほどくじけそうになる。
おちょやんで描かれる人物描写は、ずっと見続けてきて感じるが、驚くほど巧み。
心の内をセリフに出さずに演技だけで伝えようとする。
大阪の物語なので基本的にはお笑い系のノリで作られているが、苦しみとか悲しみを表現するときにセリフとか表情ではなくむしろストーリーの流れで見ているものに感じられるように組み立ててある。
およそ朝ドラにはふさわしくない重く辛い話だが、しかし意図するところは驚くほどよく伝わってくる。
戦死した者たちも苦しかっただろうが、残った家族も同様の苦しみを受けたと改めて納得させられる。
一平君も自暴自棄に
百久里が戦死した報を受けて、激しく自分を責める一平君。
彼は愛国ものの舞台をたくさん作ってきた。
そうやって人々の戦争への気持ちを鼓舞し、日本の勝利のために貢献しているのだと自分に言い聞かせてきたのだが。
結果はあにはからんや、戦争は十中八九負けるだろうとの読み。
事実、自分の仲間が1人戦死しただけでこれだけ厳しく追い詰められてしまうのだ。
毎日酒浸りで、しかも酒場では喧嘩で体中傷だらけ。
日本を愛する気持ちは誰も皆同じようなものだが、その表現方法はそれぞれ違っている。
ドラマとして見ているのでそれぞれの気持ちがとてもよく納得できるが、この時代に生きていた人たちにとっては生きるか死ぬかの問題だったわけで。
お互い一直線に進んでいるので、なかなか隣の人の見方や考え方などに思いが至る事はなかったのだ。
そんな中でも生活だけは容赦なく様々なものを求めざるを得ない。
食料調達のための千代ちゃんの努力も、より過酷さを増しているようだ。
食料調達の時に受けた拷問のような仕打ち
この時代の食料は、生活必需品として全て配給制が敷かれていた。
しかし、歴史で伝わっている事はこの配給もほとんどまともには機能できていなかった。
それぞれが皆知り合いのツテを頼って自分たちの食料を調達する必要が。
千代ちゃんは近くの農家に赴いて野菜を分けてもらっているようだ。
年々条件が厳しくなって、お金や様々なものを持ち込んで物々交換の状況で行っているが。
このジャガイモとカボチャで何人家族がどのくらい生きていけるのだろう。
もう少しもらえるものと思っていた千代ちゃんがさらに無心をすると、激しくののしられる。
女優だか何だか知らないが、アンタらは気楽な商売や
もっと世の中のためになることをしいや
おそらくこれ以上の侮辱はないだろう。
戦争で頑張る日本を応援するために全力で芝居に身を捧げてきた。
それが頭ごなしに役に立たない発言ではまるでたつせがないではないか。
帰りの道すがら、芝居のセリフをブツブツ呟きながら必死で心を鎮めようとする千代ちゃん。
しかし石ころにつまずいて地面に突っ伏してしまう。
その途端、辛抱できずにボロボロと泣き出してしまう。
あまりのみじめさ、あまりの無力さ、自分が精魂込めてやってきた努力は一体何だったんだろうかと。
世の中に役立ってないと決めつけられるのは存在そのものを否定されるのと同じこと。
今日の物語はここまでだったが、明るい要素は何一つ描かれなかった。
今週のエピソードがあと二日間描かれるが、どんなことになるんだろう?