物語は明治2年から明治3年にかけての明治政府設立直後の様子が描かれている。
とにかく、全てが新しく出発させる必要があった。
政府とは名ばかりで、その中身はほとんど実態が伴っていなかったのが事実。
渋沢栄一はその中にあって大蔵省の中に「改正掛」を設立させ、明治に何が必要でどんな活動をしなければならないか話し合いによって次々と手掛けることになる。
今までの藩制を引きずっていたのでは全国統一の貨幣や様々な測量の単位など、それらをいかにして統一すべきかそういったことが日々急ピッチで話し合われることになった。
これは見た感じでは、世の中全体はサバイバルゲームで生き残りをかけた活動のようにも見える。
この当時、真っ先に必要とされたのが税制を始めとする収入源の確立。
さらには殖産興業の掛け声の下、製糸工場等の設立が急がれたのだ。
そしてすぐにできたのが郵便システム。
これは通信費に莫大な経費がかかっていたことが発覚することで、その必要性が大きく認識されたことによる。
これら明治初期の様々な活動はことごとく渋沢栄一が関わってきた事業だと言える。
目次
改正掛
とにかく始まったと言え、まとまりがないことで誰もが疲労困憊していた。
素早く動かない事はすなわち、国としては機能していると言えない。
渋沢栄一の発案で、まず何が必要なのかその話し合いの場がもたれることに。
改正掛がその任にあたる。
渋沢栄一を中心として各省庁の代表、さらに駿府でかつてパリ行きで同行した仲間たちを呼び寄せることに。
そして全員が忌憚なく意見を出し合うことになった。
ドラマの事なので話し合いの様子は皆がつかみ合いしそうになるほど熱を帯びたものになった。
その中でただ1人面白がって参加していたのが栄一。
切磋琢磨とはこういうことだと言わんばかりに皆の意見をメモに留め、業務に活かしていこうとする。
養蚕と紡績工業
明治政府は最初お金がないことでも苦しんでいた。
富国強兵とはこの頃の合言葉で、とりあえず国が富んでいないことには何事もままならない。
目をつけたのが養蚕業。
当時この業務に携わっていた人たちは蚕のことを「お蚕さま」と尊敬を込めて呼んでいた。
当初、改正掛には絹糸がどのように生産されるかを知っていたのは渋沢栄一1人だったと描かれていたね。
繭を熱湯にくぐらせて1本の糸を紡いでいくやり方は、実際にやったものでなければわからない。
昔の映画に「ああ野麦峠」というのがあった。
ここで養蚕業について詳しく語られていたと思う。
この事業を立ち上げにスカウトされたのが尾高惇忠。
彼は本当は明治新政府には恨みの気持ちを持っていたのだが、渋沢栄一にさとされて弟のお弔いの気持ちも込めて参加することに。
日本の生糸の専門家として参加することになったのだ。
郵便事業
様々な会議をする中で、重要なのは情報交換である事は言うまでもない。
今のように電話もなければメール等連絡手段は飛脚便しかない時代。
これが結構な料金がかかることが発覚
物語の中で出ていたが、月1500両とあった。
ちなみにこの時代の一両は今のおよそ10万円と換算できる。
そうなれば、明治政府はこの時通信費として月に1億5千万円ほどかかっていたことになる。
目の利くものなら、必ず注目すべき手痛い出費だろう。
郵便事業の出発点はこの辺にあると言える。
郵便物としてひとつところに集約して送り届けるやり方は誰が考えても効率的。
今で言うところの郵便ポストもこの頃から採用されたようだ。
郵便とは言っても、切手を貼るシステムとか消印を押すやり方とか、すべて手探りで始まったのだ。
今でこそ出来上がったものがあるので私たちは違和感なく利用できるが、この時代は何もかもが新しく始まったばかり。
考えて事業を起こした人たちの苦労は並大抵ではなかったと推察。
明治政府を機能させていたもの
大隈重信は愛国心に富んだ有能な政治家だった。
彼は、自宅に栄一たち職員を毎日のように呼び寄せ、酒盛りをしながら会議の続きを行っていたのだ。
大隈重信がいればこそ渋沢栄一は活躍の舞台を与えられたと言える。
そして渋沢栄一の相棒として伊藤博文がいた。
始まった頃は旧幕臣だった渋沢栄一らの活躍を快く思わない新政府波野役員たちも多数いたが、実際に一緒に仕事をしてみて栄一の有能さに圧倒されることになる。
実務能力もさることながら、何よりも日本のためにと思う愛国心、その熱意の点で誰にも負けないものがあったようだ。
物語でも疲弊困憊しながらも日々仕事にまい進する様子が描かれていた。
明治がこのようにして始まったとは概ね見当がついていたが、やはり戦に勝った官軍たちは自分たちの褒賞についてさもしい気持ちがあったようだ。
勝ったんだから褒美をよこせと平たく言えばそういうこと。
そんな人間が政府の中にいれば、まとまるものもまとまらない。
明治の始まりはそういった者たちを乗り越えるところから出発したと言える。
青天を衝けの物語としての本当の面白さは多分ここからではなかろうかと感じる。
日本の資本主義の祖とされる渋沢栄一。
彼の本当の値打ちが今から語られることになる。