2011年の東北大震災。
日本全国の誰もが決して忘れる事は無い大事件だったが、しかし、当事者と言える人々は限られる。
実は、様々なテレビドラマなどが震災をモチーフに世の中に出されているが。
今年の春に作られたこのドラマは震災10年を記念して作られた。
1つのエピソードを紹介する形をとりながら、その心は人が過去から未来に向かってどう歩みを進めるのかが印象深く語られた。
つい数日前再放送で見たドラマは、物語の最後に驚きの伏線回収がなされて、とても印象深いものに感じたのだ。
「お帰りモネ」の後と言うこともあったが、東北大震災の記憶を風化させてはならない。
気持ちは、脈々と受け継がれていることを実感。
目次
アルコール依存症同士
物語に出てくる主人公は東北大震災の被災者。
結婚して、夫婦2人でイタリアンの店を経営していたがすべてを失うことに。
物語の中では夫婦2人で仮設住宅に入居している様子なども描かれていた。
実は震災から数年後まではアルコール依存症でほぼボロボロな状態。
なぜここまでアルコールに溺れてしまったのか、いまひとつぴんとこないまま物語が進む。
そして飲酒運転でバイク事故を起こして担ぎ込まれた先の医者が、同じアルコール依存症だったことが判明。
ここでのやりとりの草彅剛と國村隼の演技が驚くほどの説得力を持っていた。
物語の作者一色信介はうつ病関係の書籍も多くて、活発な創作活動を続ける作家として特に有名。
彼自身がうつ病体験を通じた様々な医療に関する知識が豊富なものと推察する。
特に、医者が患者に向かって意見をするシーンでは、患者の病理的な数字の紹介もされていたね。
肝臓細胞が壊れていくときの指針となる数字γGTP
正常な人だとせいぜい30が上限位だと記憶する。
この値が900越えだったね。
物語の中でいつ死んだっておかしくないと紹介されていた。
しかもドクターと患者のやりとりの中で、酒を飲みたいばっかりに消毒用の脱脂綿をくすねてその匂いを嗅ぐ動作。
さらには“流しに捨てる酒を床にこぼしてくれたら舐める!”と言わしめた患者の気持ち。
これだけのリアリティーが病気の深刻さをまざまざと見せつけていたんだが。
主人公が、なぜここまで彼は追い込まれたんだろうと素朴な疑問を抱きつつドラマを見続けることになる。
主人公を演じた草彅剛の評価
草彅剛は今出演している大河ドラマ青天を衝けで徳川慶喜を演じている。
彼が演じる慶喜は幕末と明治維新さらにはその後の世界も見据えることになる複雑な心境を演じ分けなければならない。
彼の少し抑制した演技は批判する声が聞こえてこない。
まさに大絶賛なのだ。
徳川慶喜は、おそらくこんな人だったんだろうと誰もが思ったに違いない。
生涯を通じて気の休まる時はなかった。
そしてそのことを決して表には出さない。
自分が背負うべき宿命を泣き言1つ言わず、じっと耐え忍んで背負い続ける。
複雑な心境を描かねばならない彼の役どころはかなり難しくもあり、草彅剛でなければ務まらなかったのかもと思わせることしきり。
昨年のアカデミー賞も彼のトランスジェンダー役が評価されて主演のアカデミー賞を獲得している。
ここ数年で特に演技力が評価された俳優だと言える。
SMAP出身者は大抵役者も歌手も全てこなしているが、演技力で評価される俳優はほぼ全員なのかも。
木村拓哉は言うまでもなくへ香取慎吾も稲垣吾郎も俳優としてあちこちで活躍しているね。
作者一色伸介と俳優一色洋介


息子一色陽介は森田望生と夫婦役で出演。
漁師の役柄。
ちなみに父親が脚本を書いて息子がその物語の配役で出演するのはかなり珍しいケース。
特に脚本家の一色伸介は調べてみたところテレビドラマの脚本や映画の脚本もさることながら作家としても様々な書籍を執筆。
特に恋愛物のドラマが多いような気がする。
また、うつ病などの病気をモチーフにした物語。
作家と呼ばれる人たちは大抵の場合、自分自身の体験をもとに物語を作る傾向があると言える。
以前取り上げた白い濁流も作者は平壌関係の分析を専門にする職業が本職と聞いた。
1ヵ月ほど前にブログにアップしている。
その道の専門家が自分の得意なジャンルで勝負するのは、むしろ自然な流れかもしれない。
今回のドラマのモチーフはアルコール依存症からの脱却。
その辺の信憑性を纏わせつつ、物語全体の流れから震災を乗り越えて未来へ歩みを進める主人公たちの様子が描かれる。
実は、ついこの間まで放送されていた朝ドラおかえりモネは私にとっても記念すべき物語だったと思う。
「ドラマペペロンチーノ」は1時間の放送枠なので、すっきりと終わる必要がある。
どうしてアルコール依存症がここまで中心的な役割を果たさなければいけなかったのか、物語の最後の方で、震災から10年を記念して行われるパーティーの席上で、その理由が語られることになる。
ドラマの伏線回収から感じる被災者の心
はじめから物語に違和感なく登場していた奥さんの灯里さん。
東京出身の彼女は、結婚した夫について故郷を離れて周りに友達も何もいない状態で宮城県までやってきた。
そして地震に会うのだ。
結果として行方不明になってしまう。
このときの地震で大勢の行方不明者が発生したが、全員ほぼ生存は絶望的と思われた。
物語に出ている奥さんは実は全て霊体だったと納得させられる。
このような最後で伏線回収する作品は他にも映画であった気がする。
Other'sとシックスセンス
Other'sではニコール・キッドマンを始めすべてはこの世のものではなかった。
さらにシックスセンスではブルースウィルスが既に亡くなっていたとの設定だったね。
この2作品と同じ作りで描かれたと想像した。
自分の店ばかりか奥さんも失って孤独な身の上となれば、アルコール依存症も納得できる。
おかえりモネの新次と同じ。
ドラマは1番最後で見事な伏線回収がなされて、物語としての完成を見た。
あの震災の時、同じような思いをして今に至る人たちが一体どれほど存在したのか。
あの大災害を風化させてはいけないと思う人は多いだろう。
その思いに応える形でこのドラマは存在し、私を啓蒙し続けている。