いよいよ勢いを増す源氏軍。
源氏の本体は坂東武者たち。
京都からは源氏追討のための平家軍が迫る。
物語を見ていて感じるのは、どちらも完全な勢力ではないってこと。
平家は平維盛を総大将に立てていたが、どうやら戦経験のない素人集団のような雰囲気。
軍勢こそ5万から7万の大人数だが、およそまとまりにはかけていたようだ。
対する源氏も坂東武者とは言え寄せ集め集団。
特に上総常広や武田信義など頼朝のもとに集結はしているが、決して家来になったつもりはない。
源氏も頼朝を総大将に立ててはいるものの、皆それぞれの思惑はバラバラだった。
日本の歴史の重要な部分がこんな形で進んでいたことがなんとも驚くばかりだが。
この物語は吾妻鏡が原作になって脚本が作られている。
三谷幸喜は原作を大きく変えないことで知られるが、今日のドラマの中で描かれた内容は全てが史実通りだと言って良いだろう。
脚色部分だけが脚本家の思いを反映しているようにも思う。
目次
頼朝と伊藤祐親
伊藤祐親は頼朝の義父に当たる。
彼の娘八重は頼朝の最初の妻。
しかし、伊藤は平家側の勢力。
流人となった頼朝を平家より預かっていた。
源頼朝は板東の源氏勢力を結集し、ついに祐親を追い詰めることになる。
祐親は頼朝の上から目線が大嫌いだった。
さらに、自分の娘に手をつけて子供を儲けたことも憎しみに拍車をかけていた。
自分の孫ばかりか娘にまで手を出そうとする祐親。
理由は1つ。
とにかく上から目線で偉そうなものの言い方をする源頼朝が大っ嫌いだった。
その男に再び娘を渡すぐらいなら殺してしまった方が良いと。
尊敬する男と父親の間でもてあそばれる八重
八重は本来なら、幸せな結婚ができたはずだが、源頼朝と通じたために、運命が狂わされたと言える。
自らの命も危うくなったところを義時らに救われることになる。
八重と政子
八重は父親祐親同様、三浦義村預かりとなった。
父親伊藤祐親は北条家の彼の孫たちの必死の嘆願によって死罪を免れた。
この時、八重は北条家に申し入れをするのだ。
それは父親と三浦家に預けられるのではなく、自分は1人頼朝の館に残って、下働きをしながら頼朝を支えたいのだと。
最初激しく反対していた政子だが、周りの兄弟たちからの強い申し入れで、その願いを聞き入れることになる。
もちろんその事は頼朝が知る由もない。
坂東武者と北条家の立ち位置
基本坂東武者は頼朝のために戦をするのではない。
彼らにとって何よりも大切なのは自分たちの所領、そして家族たち。
それらを守るために死に物狂いで戦うのだ。
頼朝はいまひとつその辺の事情を理解していない。
富士川の戦いで平家を追い詰めたと悟るやいなや、直ちに追撃して京都まで駆け登ろうと画策する。
しかし上総常広ら坂東武者の意見は違った。
彼らは自分たちの所領を守らなければならないのだ。
さらにはそのまま戦を続けるためには、兵糧が明らかに不足していた。
このまま突っ走るわけにはいかない。
そのことを頼朝に必死で訴えたのは義時の父時政。
頼朝はその意見にしぶしぶ従わざるを得なかったのだ。
武田源氏と頼朝
物語で描かれる武田信義は曲者。
頼朝に合流すると言いながら、気持ちは自分の身の保身しか考えていない。
何とかしてアピールして、自分が世の中の表舞台に登場できることのみを考えているのだ。
そのことをよく理解している頼朝。
その下心を巧みに利用しながらも、彼の軍勢はぜひとも必要なところ。
この物語の中で描かれる頼朝は、実は物語の最後まで登場するキャラクターではない。
彼は鎌倉幕府を設立、政治的な基盤を確立して見せるが、この物語は頼朝が亡くなった後の鎌倉幕府を継続させるに至る他のメンバーたちの様々なエピソードが事細かに語られるのだ。
鎌倉殿の13人とは北条時政を中心に幕府が合議制で運営されるためのメンバーのことを指す。
実は頼朝が亡くなった後、北条時政が幕府の実権を握ることになるのだ。
このドラマの中ではしょうもないオヤジで描かれている時政だが、長生きして周到に根回しをしつつ北条家の存続を図る。
彼の後を継いだのが今回の物語の主人公とされる北条義時。
さらには源頼朝の妻政子が政治的な実権を握ることにもなるのだ。
富士川の合戦では平家軍は水鳥の羽ばたく音に驚いて逃げ出したとあった。
歴史書にそう残っているが、三谷脚本では水鳥が羽ばたくに至るエピソードが彼らしいユーモアを交えて描かれていた。
義経と頼朝
今日の物語の最後の方でついに義経が頼朝と合流することになる。
頼朝は義経が自分の本当の弟であることを知るのに若干の時間を要したようだ。
今のように写真も何もないので、何か証拠になるものをお互い示すしかない。
合流した時頼朝は義経と昔話に花が咲いたと言われている。
この後、義経は歴史書に残るような大活躍をすることになるが、やがては頼朝に追われて命を落とす。
さらには義経の後ろ盾だった藤原秀衡も頼朝に滅ぼされる。
ここから先は短いスタンスで歴史は動くことになるはず。
物語の中でひょうきんな役どころで出ている登場人物たちも、歴史書の中では過酷な運命を生き抜いてきたことが記録に残っているのだ。