昨日本放送の最終回を迎えたカムカムエヴィリバディ。
本来ならば1週間振り返りのエピソードをここで紹介するけど、せっかくなので今日はこの物語全体を振り返ってみたい。
3世代にわたる3人のヒロインが織り成す家族の物語と銘打ったカムカムエヴィリバディは最近の朝ドラの中ではかつてないほど盛り上がったかもしれない。
盛り上がりの元になったのはなんといっても脚本家藤本有紀さんの実力に負うところが大きいと言える。
そして、物語を演じた3人のヒロインたちが皆、遜色ないほど輝きに満ちていた。
物語を彩ったヒロイン以外の登場人物たちも、驚くほどの完成度で演じられていたような。
ドラマは、3人のヒロイン
安子
るい
ひなた
それぞれが100年間にわたって繰り広げる様々な内容だが、物語が始まった当初は明確に
安子編、るい編、ひなた編と描き分けられると思った人も多かったのでは。
しかし、トータルで見たときにひなた編に相応する部分は必ず2番目のヒロインるいがそばにいて、最後の2週間ほどは安子も登場してストーリーを大きく盛り上げていたと思う。
朝ドラの中では、かつてないほど制作陣の中は厳しく報道管制が敷かれていて、あらかじめ情報が漏れることがないよう、万全の体制が敷かれていたようだ。
その物語全体を改めて振り返ってみたい。
目次
安子編
安子編を演じていた上白石萌音の驚くべき演技力と画面から伝わる存在感には圧倒されっぱなしだったかもしれない。
物語上、彼女の運命でどうしても必要不可欠な、苦難とか後悔とか懺悔とかが描かれることになったと思う。
あまりの過酷な運命に脚本家を呪う声さえ上ったほど。
私自身もここまでヒロインをいじめて一体どうするんだろうと思ったけれど。
さて、様々な検索をしていて気がついたのは上白石萌音が周りの俳優やスタッフたちにどれだけ配慮していたか。
2代目のヒロインを演じたるい役の俳優たちは子役を含めると10人を超えたようだ。
小さな子供たちとどうやってコミュニケーションを取るか上白石は自分の持てる時間を全て注いで、子供たちに接していたようだ。
彼女は子供たちの演技が撮影の大事なポイントになることを熟知。
普通朝ドラの撮影と言えば、1週間分まとめて取ることが多いので、休憩時間は皆 台本チェックに忙しいとされる。
上白石はその台本チェックの時間を全て返上。
子供たちを集めて保育園の保母よろしく、一緒に過ごすことが常だったという。
ヒロインを演じた上白石萌音の人となりがよく表れていると思う。
誰からも好かれる事はとても大切なことだが、そういった事は企んでできることじゃないんだよね。
何気ない さりげない自発的な行動がどれだけ周りの人へのいたわりになるか。
調べてみて特に感じた。
るい ひなた編
物語を見ていてるい編からひなた編に移ってからは、明確な時代分けはなされていなかったような気がする。
それぞれのキャラクターはしっかりと描き分けられていて、
しっかり者のるい。
飽きっぽい性格で、後から慌て癖があるひなた。
それぞれの特徴が時代背景をもとにくっきりとわかりやすく登場していたと言える。
物語の中で重要なアイテムとして度々登場するあんこのおまじない。
これは初代ヒロインのおじいちゃんの時代から代々受け継がれてきたもの。
この不思議なあんこの製法が物語の1番最後で伏線回収されていたのはこころ憎い演出だったね。
物語が中盤以降に差し掛かっていたころ、それぞれの人たちの胸の内をいかに描くかによって物語の進み具合に大きく影響したと思う。
戦後に少女時代を迎えたるいは幸せの形が家庭を持つことだと信じて疑わなかった部分がある。
それに対してひなたが思い描く幸せは家庭もさることながら仕事への情熱などが大きなウェイトを占めること。
ストーリーの中ではひなたのキャリアとしてそういった背景が描かれていたと思う。
物語はこの時期になると伏線回収が怒涛の勢いで行われるようになっていたよね。
物語を彩った登場人物たち
物語は全編通して脇役の存在が大きくクローズアップされた時期があった。
主人公と呼ばれる人たちも、脇役に回ることがあったような気がする。
思い出してすぐに出てくるのは安子の再婚相手ロバート。
彼の存在が後に森山良子演じる安子の心に大きな影響を与えただろう。
晩年になってから日本に戻ってきた安子は過去の記憶をしっかり受け継ぎながらも、人生の大半をアメリカで過ごしてきて、その振る舞いはどちらかと言えばアメリカ的だったかも。
物語としては最後に年老いた安子を登場させてストーリーをしっかりまとめ上げる必要が。
時代背景の奥で描かれた人々の胸の内
安子編はすなわち戦時中の体験が中心になって描かれた。
あの戦争がどれほど多くの人を傷つけ、後悔させ、苦しめただろうか。
与えられた運命を選ぶしかなかった登場人物たちの胸の内は、何にも増して苦しみを表していたと思う。
物語は安子編で問題提起し、最後にまた彼女の登場によって解決への道が描かれる。
安子の辛い体験をるいとひなたが力を合わせて回収する。
そんな描き方になっていたと思う。
それぞれ、胸の内に秘めた様々な思いがその都度巧みな演出によって表現された。
カムカム制作の時に3世代続くヒロインのうち、るいを演じた深津絵里だけが初めから決まっていたと聞いた。
この物語は彼女こそが3世代ヒロインの象徴となるべき存在なことを表していると思う。
彼女が、ヒロインとして全編通していた時代は意外と少なかったような気がする。
その後登場したひなたに物語の中心は移動していたように見えたから。
るいこそがヒロインであり、脇役でもあり続けた。
この不思議なスタンスはひなたにも受け継がれたと思う。
カムカムロス
ネットでは早くもカムカムロスの声が上がっている。
そのぐらい、この物語には重みがあり味わいがあった。
15分の放送でどれだけの表現が可能なのか、スタッフたちの心意気も伝わってきたような。
もう来週にはすぐ次の物語が準備されているので、気持ち的にはリセットしなければいけないはず。
しかし、
この物語の味わい深さはかつてないほど新鮮で驚きを伴うもの。
最後に1視聴者として湧き上がる気持ちは、番組ロスと同時に感謝の気持ちな事は言うまでもない。