物語で描かれた当時のご時世がよく伝わってくる内容。
思い出してみても不景気が世の中を席巻していた。
舞の父浩太の会社は、業務不振がそろそろ限界を迎えようとしていた。
どうやら規格品のネジを作る工場のようだが、注文ゼロの状態が。
浩太は自らあちこちの会社に顔を出して必死に営業活動をするが、色良い返事がもらえるはずもなく。
さて、舞は自作の模型飛行機を作ろうとチャレンジしているが竹ひごを熱で温めて曲げるところがうまくいかない。
曲げようとしてろうそくの火に竹ひごを近づけると、うっかりすると燃えてしまって真っ黒焦げに。
何事もものづくりは、それなりの心意気がなければおよそ務まるものではない。
今日のエピソードが始まったすぐの時に、昨日紹介された古本屋デラシネの主人と貴司君の会話が紹介されていた。
あのセリフのやりとりの中に、この物語を書いている脚本家桑原亮子さんのこだわりが紹介されていたと思う。
さて、会社経営に行き詰まっていた浩太は舞を連れて遊園地に行くことに。
父と娘の楽しい休日の様子が物語に更なる優しさを添える。
目次
古本屋デラシネ
最初のエピソードとして描かれていたが、昨日紹介された詩集の話。
詩を書くことが辛くしんどいと言う店の主人の話。
しんどいのにどうしてやるの?
そこで物語の中で紹介されていたのは、息苦しく感じた作者は深い海の底に潜って花を1輪見つけてくるんだと。
そしてその花こそが詩なんだと。
ネットで調べてみると
この詩を書いたのは、この物語の作者桑原亮子さんとのこと。
物語の中では八木巌作となっているけどね。
しかしながら、物語の作者本人の詩だとすると感じるものが少し変わってくる。
物語を紡いでいくことにそれなりの苦労を感じていることが見てとれる。
しかし、その物語にどれほどの愛着があるかは、海の底から拾ってきた花に例えていてよく伝わってくる。
この物語全体の説明ではこの店の主人が貴司君に大きな影響を与えるとあった。
典型的な文学少年のパターンだね。
浩太の苦悩
必死にあちこち営業で回ってはみるが、仕事を獲得するには至らない。
それでも諦めずに営業していたところ舞い込んできた仕事は新規の特注ネジのサンプル作り。
しかし、ハードルは極めて高く、螺旋制作の金型から作る必要が。
通常は1ヵ月半納期が当たり前のようだが、それを3週間で仕上げなければならない。
よその会社がどこも嫌がって断られた仕事をあえてやろうと意気込む浩太。
職人の笠巻は納期の厳しさゆえに無理だと否定するが。
会社存続の危機に瀕している浩太はなんとしてもやり遂げたいと協力を仰ぐ。
当時のことを思い出してみて私にも思い当たることが。
大抵の場合、注文は納期がギリギリな状態でやってくるのだ。
そして、経験的に見て様々な会社がお断りした仕事と言うのは相応の難しさがあって当然。
技術的なもの、納期、後は金額とか様々な理由。
注文がないとなれば、何が何でもお金になる仕事を見つけねばならぬ。
そして会社としてのショバを抱えていれば、黙っていても経費として出ていくお金が必ず発生。
たとえ赤字だったとしても入ってくるお金は何にも増してありがたいのだ。
そんな思惑があちこち渦巻いていた時代だったと思う。
石倉家の事情
悠人は私立中学を受けて東大を目指す予定のはずだった。
しかし私立を受験となると仮に受かったとしてもその後の学費が厳しいことを浩太はそれとなく悠人に告げる。
私立を止めて公立にしてくれへんか?
絶対に承服したくない悠人。
こういうやりとりはいつの時代でも切ない。
家庭の事情で能力も意欲もある若者が進学をあきらめるなんて、文明国では考えられないと思う。
もちろん、奨学金その他様々な制度はあるけど、それ以前の教育の機会平等ってことを考えても目の前の課題をクリアすることがどれほどの大変さなのか伝わってくる。
それにしても岩倉家の懐事情がかなり切羽詰まっていることには間違いない。
舞のチャレンジ
舞は竹ひごを焦がすことなく上手に曲げる事を父に聞いてみた。
ネットで調べてみると全く同じような方法が載っていたので。


物語の中では別な方法だったけど空き缶を使ってその外側の熱伝導を利用する事は共通。
さらに調べてみると、アマゾンあたりではちゃんと曲がった状態の竹ひごも大量に売られていた。
いろいろと需要があるようで、部品はその気になればほとんど出来上がりに近いものを手に入れられそう。
お父ちゃんの会社が潰れてしまうと、家族の生活はそこで終わってしまうことになる。
この時代、小規模な工場等は倒産の危機にさらされていた事は間違いない。
私も北海道で木材業界の会社に勤めていたので事情はよくわかる。
あの時代同業でやっていた小さな会社はことごとくどこかへ消えてなくなった。
注文がないことと、納期があまりにも短いこと、そして受注の値段が安すぎること。
赤字を覚悟で仕事を取るところも多かった。
さてそんな時代のエピソードは明日と明後日で決着することになる。