くわちゃんの独り言

音楽や映画が大好きな爺さん。長年の経験から知りえたことを発信します。

フジ子・へミング90歳 衰えない情熱

 

この間、たまたまテレビで見かけたフジ子ヘミングの特集番組。

彼女が、ショパンが晩年過ごしたスペインのマジョルカ島までの旅をする物語。

ピアニストとしての彼女はあまりに著名で知らないもののないほどの有名人。

彼女は1932年生まれで、御年90歳だが、実は私の母親と同い年。

私の母親は、遥か昔になくなってしまったが、テレビに映し出された彼女の様子を見ていると、体こそ若干不自由そうな様子だが、会話をする姿は、若者と何ら変わらない。

特に会話のときの反応速度が、若者のそれとまるで遜色がない。

一流の芸術家を支える感性がどれほどのものなのかを思い知らされる。

改めてピアニストとしての彼女について調べてみると同時に、私なりの考察も。

最近のビジュアル 間違いなく高齢者

目次

フジ子・へミングの生い立ち

少女時代 父親はスウェーデン人の画家 日本人の母親はピアニスト

超有名人なので、NHKのファミリーヒストリーでも取り上げられたことがある。

こちらが両親 ドイツで知り合ったらしい

ちなみに、フジ子が生まれた頃はちょうど戦争中で、両親ともに苦労した事は言うまでもない。

彼女の父親が外国人とのことで、日本でも迫害を受けて、彼は妻子を置いて母国に帰ってしまった。

残された母親と子供たち2人が日本で暮らしたようだ。

フジ子には2つ年下の弟がいる

弟は大月ウルフと言って、日本で俳優として活躍。

2015年の仮面ライダードライブに登場

フジ子・へミングと彼は血の繋がった兄弟。

ツーショットを見てみると似てる?

フジ子は成人してからも、無国籍が発覚したり、大きな病気をしたりで波瀾万丈な人生を送ってきてる。

ピアニストとして致命的なリスクを負う

右耳に聴力は無く、左耳が常人の3割ほどの聴力

彼女を語る上で、決して外せない要素は、驚くほど耳が悪いと言うこと。

音楽家にしては致命的な弱点をものともせず、ピアニストとして活躍しているのだ。

普段は補聴器を使って会話をするようだが、親しい人は彼女に話しかけるときに、耳元で大声ではっきりゆっくり話しかけているようだ。

それは、あたかも認知症患者に接するかのように。

彼女自身もテレビの中で語っていたが、ピアノを弾くときに小さな音だと聞こえないらしいのだ。

ピアニストなので、もちろんピアノには四六時中接することになるが、小さな音を演奏する場合、それは聞こえない場合が多いと言っていた。

と言う事は、指先だけの感触で音を奏でていることになる。

彼女が耳にリスクを負うことになった理由は、大きく2度ほど熱病にかかったことによる。

最初はインフルエンザか何かで右の耳の聴力を失い、左耳だけを頼りに演奏活動を続けていたが、再び熱病にかかって、左耳の聴力もほとんど失ってしまうことに。

今ある彼女の演奏は、昔から培ってきた感性と長年の訓練で身に付いた彼女自身のメソッドによるもの。

よく彼女の演奏を「魂の音」と表現する人も多いが、彼女は音楽を音として捉えるには、あまりにも聴力が心もとない。

それ故、演奏するときには、神様にお祈りをして、自分の大好きなショパンにもお願いをするんだそうな。

どうか間違わずに上手に演奏できますように🙏

フジ子・へミングとショパン

子供の頃、母親が子守唄がわりに弾いてくれたピアノがショパン

彼女が愛してやまないのがショパン。

私が感じるショパンは、少し甘い系の匂いがする情熱的な作品が多いと感じる。

しかし、ショパンの様々な文献を調べてみると、彼の持ち味はすなわち情熱。

彼の音楽の持ち味は、情熱以外の何物でもない。

「ピアノの魔術師」と呼ばれたリストが聴き手に少しおもねったところがあるように感じるのに対して、ショパンは、誰かに媚を売るような事は絶対にしない。

音楽に対して、どこまでも正直でありさらには祖国ポーランドを命をかけて愛していた。

39歳で亡くなった彼は、遺言で自分の遺体から心臓をえぐり出して祖国ポーランドに埋めてくれと言い残したらしい。

普通の人は絶対言わないセリフだね。

フジ子ヘミングか愛したショパンはまさに情熱そのもの。

フジ子はショパンに恋しているんだろうと感じた。

私が感じるフジ子ヘミング

名器ベーゼンドルファーを前に

番組の中で、彼女は記者の質問に対して答えていた。

愛国心はありますか?

ない❗️(即答)

フジ子の言い分は、どの国をどんな理由で愛せというの?

彼女は戦中派の生まれになるので、国籍でずいぶん苦しんだ過去がある。

それは簡単に言えば、日本からも、当時住んでいたドイツからも、無国籍として、ぞんざいな扱いを受けてきた。

そんな国に愛国心うんぬんを問われても、確かに答えようがない。

しかし、そんな過酷な生い立ちにもかかわらず、彼女のピアノ演奏を一言で表現するなら、驚くほどのわかりやすさ。

ピアノを演奏する場合、主旋律と伴奏にざっくり分かれるが、彼女の演奏では、その辺が驚くほどわかりやすい。

これが主旋律ですと言う音がはっきり認識できる。

そして、音楽全体で感じるのは、驚くほどの優しさ、丁寧さ

これは演奏家としての彼女の人柄なんだろうと思う。

苦労を重ねてきたにもかかわらず、人を愛することを決して止めようとはしていない。

それが音楽ににじみ出てくるのだ。

1時間半の番組だったけれど、日本にはこれだけの芸術家が活躍しているんだとの思いは、私たちの世代に大いに勇気を与えると思う。