今週続くエピソードは、自分の記憶とも相まってなんとも切なく苦しい。
IWAKURAは社長浩太が必死に営業努力を続けるが、経営危機が去ったわけではない。
新規の注文もちらほら入っているようだが、全体ではピンチなことに変わりはなさそう。
そんな中描かれる今日のエピソードは、古くから会社のために貢献してきた従業員結城章がついに退職することを決意する。
彼は、以前先輩の笠巻に他所から誘われていることを告白。
それに対する笠巻の答えは、自分の人生だから自分で決めてなんら構わないと。
章は3人の子供を抱えて、IWAKURAの給料では、生活が苦しいと述懐。
彼を誘った扇は給料倍払うと言っていたね。
この頃の時代を振り返ると、キーワードになる言葉がふたつ出てくる。
1つはリストラ。
そしてもう一つはヘッドハンティング。
この2つが時代を席巻していたと思う。
この時代、私も会社勤めをしていてしかも生産工場勤務だったから、仕事と仕事以外のストレスで身も心もズタズタにされるような痛みをいやというほど味わった。
今でも思い出すと、自分の体にひんやりと冷たい風を感じてしまう。
さて、舞は久しぶりに柏木に電話。
そこでのやりとりもかなり切ない。
実家の会社が厳しいことを言ってみると、柏木からは思わぬ質問が。
パイロットにはなるんだよな!?
思わず口ごもる舞。
舞にとっては、パイロットどころの騒ぎではなさそう。
物語は、ユーモアたっぷりのやりとりも描きながら、実際は厳しく切ない。
目次
柏木
久しぶりにアメリカにいる柏木に電話をする舞。
かつての仲間のことを考えると、いてもたってもいられなくなる。
この写真の柏木を見て電話をする気になった。
突然の電話で何かを察知する柏木。
何かあった?
何もないよと答えてはみたものの、内心胸の中は不安でいっぱい。
舞の気持ちを見透かすかのように柏木が言葉を続ける。
工場を手伝うのはわかるけど、パイロットにはなるんだよな?
この質問が1番胸の痛いところ。
実家の工場のことを考えると、とても自分の夢だけを追いかける気にはなれない舞。
来年にはパイロットになるよ
そう答えるのが精一杯だった。
柏木は勉強だけはきちんと続けろとアドバイス。
操縦桿を握らなくなってブランクが開けば、当然感覚は鈍る。
車の運転と同じで、飛行機の操縦は見に染みついた感覚がものを言う世界。
2人のやりとりは恋人同士にもかかわらず、将来の夢とか希望とかからは遠ざかった印象も受ける。
IWAKURA 新規の注文
会社存続をかけたIWAKURAの経営戦略。
特殊ネジの注文を受けて、しかも厳しい納期を指定される中で、何とかして注文をこなそうとする。
そんな中、重要な役割を担うのは、なんといっても、昔から共に働いてきた社員たち。
彼らがいたからこそ、今の会社はここまで大きくなった。
単純に機械をセットして、材料を放り込めば希望の品物が出てくると言うような甘い世界ではない。
様々な技術を駆使して、さらには新しい方法も取り入れて、その上で新製品を作ることができる。
このような特殊な注文は、最初に試作品を作ってみて、それを納入した後に注文が成立するかどうか決まる。
IWAKURAはかなり優秀な会社なんだろう。
大抵なんとかなっているようだ。
結城章
舞が子供の頃からの社員章。
舞が紙飛行機を作る時も何かと協力してくれたエピソードが思い出される。
この時代からの付き合いだから、かなり長いことだけは間違いない。
章は他所からの引き抜きに合っていた。
古くからの社員なら、社内の実情にも詳しい。
自分が今抜けてしまうことが、どれだけの穴を開けてしまうかよく知っているが、背に腹は変えられないってこのことかもな。
彼を引き止めるだけの力が浩太にはない。
彼に十分な給料を提供できれば、こんなことにはならなかったけど。
世の中そんなにうまくはいかないんだよな。
それにしても、工場の従業員についての個別の情報が同業、他社に知れ渡っているところが、この時代の特徴だったかもしれない。
私も木材会社だったのでよその会社の従業員についても、多少は噂など聞き及んだことが。
どこそこの会社の誰々さんは、かなり仕事ができるみたいな。
会社を経営するものは、そういった社員たちの値打ちをよく知っている。
育てる事はもちろんするが、よそから引っ張ってくるのが1番手っ取り早い。
浩太の思い
浩太は会社の経理担当からもリストラをさらに加速させる必要を訴えられる。
既に岩倉家の貯金を切り崩して、会社を運営する有様。
それが長く続かない事ははっきりしているのだが、経理担当としてみれば1つ2つの注文が入ったところで、全体の流れが変わらないことをよく知っている。
会社経営で一番厳しいのは労務費。
要するに、人件費だよね。
これを削減するのはいろんな方法があるけど、手っ取り早いのがリストラ。
要するに、クビにしてどんどん切り捨ててしまえば給料払わずに済むわけだから。
浩太は今まで家族のように頑張ってくれた社員をこんなふうに見捨てるような真似だけは絶対にしたくないと考えている。
気持ちはわかるけどね。
このやりとりは、自分でも冷たい風を浴びるような切ない記憶が呼び覚まされる。
舞の立ち位置
事務所担当の山田さんは何かと舞にきつく当たる。
舞は社長夫婦の娘。
他の従業員とは、立場がまるで違うことをあからさまに指摘。
一般の従業員は、何かのきっかけでクビにされる可能性が。
沈みかけている船IWAKURA。
その中で舞は1人救命胴衣をつけていると揶揄。
この表現は驚くほど冷酷で無慈悲。
言う方に敵がこもっているよね。
会社の中でも、誰もが平等にって事は絶対にありえないのは事実。
さて、こんな中でIWAKURAは生き残れるのかどうか。