昨日の物語の最後の方で盗まれたトランクが発見された。
しかも、最も大切な中身の植物標本は今まさに燃やされようとした直前。
目の前にいた犯人は、悪びれもせず買取として金を要求してくる。
今も昔も、お金が欲しいと手段を選ばず稼ごうとする輩は後を絶たない。
話を聞いてみれば、どうやら貧乏神が取り付くような貧しい家庭のようだ。
若い夫婦と女の子と弟の4人家族。
万太郎と髭面の犯人とのギリギリのやりとりが冒頭で描かれた。
おぼっちゃまで全くの世間知らずだと思われた万太郎だが、植物学に対する意気込みは、常人の域を超越していた。
燃やそうとしていた植物標本に限りない愛着と値打ちを感じていた万太郎にとって無造作に燃やしてしまうことなどあり得なかったのだ。
金が先か標本が先かのやりとりの中で、万太郎が見せた啖呵は佐川のばあちゃんタキを彷仏とさせた。
わしを見くびりなや😡
何かの道を極めようとする者にとって大切な商売道具を汚される事はあってはならないこと。
これから万太郎自身の手によって、今燃やされそうとしている植物の本当の値打ちを世の中に知らしめる。
そのための決意表明のようなやりとり。
そんな中、長屋の中で犯人の子供が熱を出して苦しんでいると言う。
自分のことのように、かいがいしく世話をする万太郎。
そこから周りで見ていた長屋の住民たちが万太郎を快く受け入れてくれるような。
佐川のおぼっちゃまが、フタを開けてみれば、その長屋に住まいも見つけてしまうと言う。
痛快だが、ちょっとでき過ぎな今日のエピソード。
目次
犯人の名は倉木隼人
ドラマの中で何気なく出てくるセリフに、明治維新の頃の事情がちらりと見え隠れする。
彼はどうやら上野戦争の生き残りらしい。
戊辰戦争のあった頃、上野でも激しい戦いが繰り広げられた。
旧幕府軍として彰義隊の名前を知っている人も多いのでは。
この辺の歴史的ないきさつは、ちょっと前の大河ドラマ「青天を衝け」でも詳しく描かれていた気がする。
彰義隊の首謀者として渋沢栄一の義理の息子、渋沢成一郎が自決したことでも知られる。
確か亡くなった成一郎は、渋沢栄一の最初の奥さんの弟じゃなかったかなぁ?
物語で描かれた彼は、上野戦争の後家族とともにこの長屋に移り住んできたようだ。
明治が始まったばかりの頃は、時代背景が今と似ているような気がするね。
要するに一般市民といえども、勝ち組と負け組がはっきり出てきたような気がする。
彼は明らかに負け組。
気になるのは万太郎がどちらの側になるんだろうかと思うんだけど、彼は佐川の裕福な造り酒屋の一人息子として何不自由なく暮らしてきたことを考えると、勝ち組のようにも見えるが、これからの彼の暮らしは、負け組そのものになることがなんとなく想像できる。
万太郎の心意気
俳優神木竜之介の迫真の演技が見事に現れた瞬間。
おぼっちゃまで、まるで生活感のないボンボンのどこにこんな気迫があったんだろうと思う
くらい植物標本を取り戻すための気迫は、凄まじいものが。
悪人として、何とかして金を巻き上げようと思う倉木にとって万太郎とのやりとりは、一世一代の博打だったかもしれない。
しかし彼は、万太郎の気迫に負けてしぶしぶ標本を渡してしまうのだ。
この時、倉木が提示した金額は、30円。
それに対して万太郎は100円で買い取ると。
ここでもとても興味が湧いて、今のレートに換算すればいくらになるのかと調べてみた。
明治38年銀座木村家で発売したアンパンが1個1銭で現在のレートで200円ほどらしい。
つまり、この時代の1円は、どうやら現在の2万円程度に相当するものと。
万太郎の提示した200円は現在のレートで200万円。
そりゃあ竹雄も黙っちゃいないよね。
倉木の家族
激しいもみ合いのやりとりがあった後、長屋の中で子供が熱を出したとの報告が。
そこでも、万太郎の経験に基づいた対応が周りの人たちの信頼を勝ち得る大きなきっかけに。
倉木の子供、ケン坊は万太郎の子供の頃とそっくりで、何かにつけて熱を出すらしいのだ。
満足に病院にもかからないような有様だが、子供の発熱の辛さは万太郎にとって人ごとではなかったようだ。
そして、なんとなくいきさつもわかってきた。
倉木は自分の妻と娘に博打で勝ったとトランクを渡したらしい。
男の子の治療代や手当等かいがいしくアドバイスする万太郎。
万太郎の様子に、長屋の人たちもいろいろと手を貸してくれる。
さらには食事までお世話をしてくれる。
万太郎の何気ない反応だったが、周りの人たちは限りなく評価してくれたようだ。
長屋の仲間たち
明治が始まった頃の長屋では江戸時代からのしきたりで、差配人と呼ばれる人が存在した。
今日登場していた江口りんが当人。
今風に言えば大家さんだよね。
そして、そこに住む人たちを店子と呼んだ。
これは、時代劇でよく聞く単語。
1晩おもてなしを受けた万太郎は、どうやらここに住ませてほしいとお願いするようだ。
ドクダミが咲くような場所だから、当然日当たりは悪い。
しかし、断られ続けた万太郎と竹雄にとっては願ってもない住処が見つかったと言える。