物語が描き出す時代設定は昭和18年5月。
この年は記憶によれば、連合艦隊長官山本五十六がフィリピンで戦死した年。
真珠湾攻撃は開戦を象徴。
勝利したと伝わるが日本軍はその半年後にミッドウェイ海戦でボロ負けしてる。
最初から仕組まれた戦争で罠にはまった日本は突き進むしかなかった。
何よりも日本軍の使用していた暗号はことごとく解読されていた。
日本の作戦行動は全て筒抜け。
勝てるはずなど全くなかったわけで。
さて、寅子と優三は結婚以来ずっとなさぬ仲だったけどお互い会話を重ねるうちに本当の意味で夫婦に。
1年後、寅子はおめでたが発覚。
喜びに包まれる猪爪家。
しかし社会情勢は寅子たちのささやかな幸せなど吹き飛ばすが如く敗戦に向けてのカウントダウン。
寅子の先輩だった久保田がどうやら弁護士を辞めるらしい。
同じく、中山も子育てに専念するので弁護士を辞めるとのこと。
ついにこの時代の女性弁護士は寅子1人。
厳しい中で、弁護士として活動する寅子には時代を反映した依頼が多く舞い込むことに。
さらには久保田が担当していた雑誌のコラムも引き受けてしまう。
妊娠中でつわりも厳しい中、寅子は持ち込まれる弁護依頼で身動き取れなく。
時代背景を反映して統制法に関わる弁護依頼が増える雲野法律事務所。
寅子は体調不良の中、休むことなく働き続けるしかなかったのだ。
目次
昭和18年5月に至る猪爪家
寅子と優三は契約結婚してはみたけれど本当の夫婦になるまでには時間を要した。
夫婦の持ち味というかキャラクターが描き出す夫婦像は、寅子が自分の仕事にまっしぐらに突き進んでいく。
優三はもっぱら支え役。
優三は自分の人生を寅子にリンクさせて過ごしてきたと告白。
もし、寅子が司法試験を突破できなければ一緒に再挑戦を目指したとも語っていたね。
合格したことで別な形で寅子を支える方法を模索。
もし、弁護士になれたなら本を出版したかったとも語っていた。
この時代の若者は節操がある。
ほとんど未経験なのにきちんと相手を思いやることができている。
夫婦の秘め事は周りのものがとやかく言う筋合いは無いので。
女性弁護士たちのたどり着いた世界
寅子と久保田の会話が、この時代の女性弁護士たちを象徴。
女性弁護士は結婚して1人前のものを求められ、家庭のことも満点を要求された。
さらには弁護活動でも男性同様のものを。
1つしかない体で2つ以上のものを求められるのは明らかにオーバーワーク。
結論として言える事は、男たちの無理解が生んだ軋轢の中で潰されたと断言できる。
戦時中疎開することが当たり前になってきたことで、久保田は夫の故郷鳥取に引っ越すことに。
弁護士も辞めることになるらしい。
久保田は世の中への不満鬱憤を寅子に告げて別れていった。
この時点で世の中の女性弁護士は寅子1人に。
寅子の性格からして、彼女が果たさねばならぬ役割は限界を超えるものと推察。
時代はまだ男性主導の世界。
女性は何をどう繕っても男性にとって変わることにはならなかった。
寅子の弁護活動
仕事が順調な事は寅子のような性格の人間にとっては必ずしも良いことばかりとは限らない。
妊娠中の寅子はつわりの症状の中で眠くなることが続いてあくびばかり出る。
らんまんの時のお寿衛ちゃんと同じ。
確か食べられるものもずいぶん制約が多かったような。
寅子もご多分にもれず胃の具合はいまいち。
それでも持ち込まれる様々な依頼に何とかして答えようと努力。
頑張ることでしか期待に答えられない寅子はどんどん疲弊していき、この先に起こることも容易に想像できるような状態。
統制法が施行された世の中
この時代戦争一色で埋め尽くされた日本国内。
昭和18年と言えば、もう識者たちは戦争に勝てる事は想定していなかったはず。
日本軍も相次ぐ撤退ばかりで、既に挽回の余地がないことにうすうす気がついていた。
何よりも国中が一丸となってまとまらなければならないと考えた政府は、様々な規制を発令。
昭和13年の国民総動員令が出発点になったはず。
統制法はそれ以降のものに。
気に入らないものを排除する。
戦争を遂行するために必死で条件を整えようと悪あがき。
昭和18年は学徒出陣が敢行。
これは確か1年前倒しで行われたと思う。
学生には本当は手をつけたくなかったが、兵士をかき集めることにも支障が出てくるような
ご時世。
この時の東條英樹の“万歳”が虚しく聞こえたね。
戦争が世の中の全てを狂わせていく厳しい時代。
日本国民全員が忘れてはいけない歴史的事実が蓄積。