物語は戦後の復興期が中心。
寅子の司法試験合格は戦前に達成されていたので、先週までは主に弁護士としての活躍や、結婚して子供ができたことによる法律家としての活動をリタイヤしたところまでが描かれていた。
終戦の頃、生活物資が著しく窮乏。
寅子の猪爪家も日々の暮らしが限界に達していたものと。
再び法律の世界で働こうとする寅子は、当時の司法省までやってきて裁判官として雇ってほしいと懇願。
裁判官としては無理だったが、事務官としては働けることになった寅子は、新憲法に基づく民法の改定に参加。
登場人物も新たに数名加わることになり民法はこれからの日本を担うものとして大いに期待された。
新しい職場の様子が描かれること。
様々な諮問期間が民法制定に関わること。
さらに当時の生活の様子などが詳しく描かれる。
食料は配給性だったが明らかに不足。
当時の人々は闇市で供されるものを食べる以外なかった。
現実と理想 さらには困窮する生活は、国民をギリギリまで追い詰め あたかも未来への希望を奪い取るかのよう。
日本人が過去から受け継いできた美徳も今や風前の灯。
重苦しい時代背景を描くのに、ときにはユーモアを交えて脚本家の筆力が冴え渡る。
目次
民法調査室事務官
新憲法が制定されたことでそれに伴う様々な法律も整備される必要が。
寅子は生活を維持するために再び司法の世界に戻ってきたが、働くための場所は様々な人たちの意見を取りまとめること。
今までは無職だったが、働くことによって給料がもらえることで生活は多少なりとも楽になる。
食料調達もままならないぐらい窮乏する生活では、誰もが生きることに精一杯。
当時日本の主だった行政を主導していたのはGHQ。
アメリカと同じような法律制定が新しい国づくりに最も適切と受け止められていた。
短い時間の放送ドラマながら、物語は驚異的に盛りだくさんな内容で描かれる。
物語に登場してきた外国人はユダヤ人との設定で家族をホロコーストで失ったとされていた。
諮問会議での討論
普通は法律の制定となれば調査から始まって数年かかるのが当たり前。
この時代、そういった作業は数ヶ月ほどでやり遂げなければならない切ない事情が。
民法調査室では2人の高名な法律学者が意見を戦わせる。
1人は帝大教授の神保
もう1人は明律大学の穂高教授
他にも様々な団体から意見が寄せられた。
様々な意見を取りまとめた後、法律案として諮問会議で討論される。
個人主義を前面に打ち出すべきか家族制度を温存するかで意見は対立。
物語の中では、寅子が意見を出す形で着状態を抜け出すように描かれていた。
未来への生き残りをかけて
敗戦国となった日本が未来にも通用する国家として生き残るためにやるべき課題は多岐にわたる。
何よりも現代にも通じる戸籍制度をどんな形で残すべきか。
また個人主義が建て前になるので廃止してしまうか。
様々な人たちが頭を悩ませる。
日本人の特徴として法律以前に家族の結びつきは保たれていると。
法律はどうしてもGHQの意向に沿う形で制定する必要が。
法律なので、文章も堅苦しくわかりにくい。
今回から画期的な案が採用された。
それは法律の条文を口語体で記すこと。
寅子は出来上がった改正案を花江とはるに披露。
意見を求めることにする。
堅苦しい文章はわかりにくいだけだと一蹴される。
ドラマのユーモアが1番表現されていただろう。
終戦前後の話になれば笑いを取れるような要素はほぼないと言っていい。
今回のドラマに限りその辺が絶妙に描かれていると思う。
登場人物たちのそれぞれのキャラクターを比較することで巧みに笑えるシーンを演出。
最近になく面白い展開になっていると痛感。
史実を物語に取り入れるために
今週の物語で特に衝撃的だったのは最後に紹介された花岡の死。
調べてみると、しっかりモデルが存在した。
花岡のモデルは山口良忠判事とされる。
彼は物語と同様、食料管理の部門で判事を務めていた。
立場上闇市の品物には手をつけていなかったらしい。
その結果、まともな食事をすることもなく衰弱したあげく、肺結核を患って亡くなったと伝わる。
物語の中では栄養失調による餓死とされているが、史実もほぼ同じだと推察。
当時の日本人がどんな精神状態にあったのか物語が伝える内容は切なく苦しい。
法律の番人が法律を犯していたのでは話にならないと考えたんだろう。
自分の利益ではなく、全体の決まりを優先させる。
最近ではあまり見られなくなったが日本人の根底にはゆるぎない自制心が存在する。
今週のエピソードはここまで。
来週さらに新たな登場人物が加わって、物語は戦後日本の復興がメインテーマに伝えられる。