虎に翼が描き出す、昭和30年頃。
この時代の様々な問題がストーリーの展開に絶妙に絡んでくる。
今週から登場した優未役の前田暖乃の存在感はさすがに絶大なものが。
おちょやんの頃と違ってしっかり成長した姿は見ていても新鮮。
もともと演技力には定評があったが、先週からは大きく変わったので本来なら違いがくっきり出るところだが、違和感のない移行ぶり。
物語では小学校6年生との事だったが、中学生でも充分通用するかも。
さて、全体の流れでは例の原爆裁判事件が大きくクローズアップされる。
広島長崎で原告5名が原爆について日本政府に訴訟を起こし、損害賠償を求めたもの。
この時既に日本はアメリカと平和条約を結んでいて、戦後の損害賠償の請求権を放棄していた。
それでも誰もが知る通り、原爆に関しては被爆者は後遺症に1生悩まされることになる。
損害賠償が求められるのも大いに納得できる。
そして損害賠償請求の原告団の弁護士は、かつて登場した雲野。
彼はこの裁判が長くかかることを見越していた。
自分の健康不安などを考えると、後を継いでくれるものが必要だと。
そこで依頼したのがよねと轟のところ。
この2人なら信用できると考えたようだ。
この裁判は歴史的事実でおよそ8年間かかった。
物語は、歴史的事件と寅子や航一の家族について絡ませながら激動の時代を描き出す。
目次
星家と猪爪家
いつの時代でもそうだと思うが、良い年の大人の男女が結びつくためにはそれなりの約束事があるかもしれない。
それはお互い1人では生きてこなかったはずで、必ず何らかのつながりを持ち合わせているはず。
それぞれの人間関係が円滑に回っていくような配慮が必要かと考える。
お互いの家族を紹介するにあたってそれぞれの家族が相手をどのように受け止めるかはお互いが1番気になるところ。
特にそれぞれに家庭があるわけで、そこでのトラブルは絶対に避けたいところ。
航一は今まで彼の家族に対してどんな振る舞い方をしてきたんだろう?
寅子と優未の感じ方の差
優未は寅子と違って、周りの人たちの心を感じ取ることにかけて優れた才能を持ち合わせている。
ドラマの中でも語られていた。
航一さんの家族はみんなニコニコしていたけど、目は笑ってなかった。
これには花江もびっくり。
特に寅子は娘の鋭い感性に驚くばかり。
父親の違和感のある姿に驚きを隠し切れない。
目が笑っていないと評した優未の指摘は鋭いと言わざるを得ない。
これだけ違和感のある対応をするにはそれなりの理由があるはず。
父親航一の今まで見たことのない姿を受け入れられないと言うことか。
結論はまだ出ないので明日と明後日の放送を待たねばならない。
原爆裁判の開始
戦争は、国同士の殺し合いであることには違いないが、いくつかの取り決めがあるのも事実。
一般的に知られているのは19世紀末に締結されたハーグ陸戦協定だろう。
ここでは原爆や毒ガスなどの兵器は人道的に使用が許可されないとされる。
要するに、無抵抗の市民に攻撃を加えてはならないと言うことで、原爆は明らかに協定違反になるのではないか。
原爆直後の両方の市内は地獄絵図だっただろう。
損害賠償とは言ってみても、死んじゃったらどうしようもないじゃないか。
無惨な写真を見るにつけ、やり場のない怒りが湧き上がってくるのは私だけではあるまい。
昭和29年には、アメリカのビキニ環礁での水爆実験があった。
日本の漁船第5福竜丸が被爆している。
この時の日本は、アメリカと既に平和条約を結んでいた関係で損害賠償権を放棄していた。
原爆裁判は本来はアメリカに請求すべき損害賠償を日本政府に対して行うと言うもの。
は被爆者5名。
弁護士は物語の中で雲野六郎と語られる。
かなり時間のかかる裁判であることには違いない。
雲野は自分が何かあったときのために手助けしてくれる法律事務所を探していたようだ。
山田轟法律事務所
物語の中では、原爆裁判に関わる訴状の読み上げが2つの場所を同時進行で描く。
1つは山田轟法律事務所。
もう一つは寅子のいる裁判所内。
この物語はあと三十数話ってところか。
まだ物語の中で、表だって始まってはいないが、航一と寅子の一緒になる話も本格的になりそうな雰囲気。
寅子は結婚と言う形に囚われないを盛んに強調するが、実際は姓を変えるような気がする。
物語のモデル三淵嘉子さんは41歳の時に50歳のご主人と再婚してる。
それに近い設定が準備されているのではなかろうか?
残りの話数を考えればあまり大きく物語を膨らませてしまっては収拾つかなくなる可能性も。
特に原爆裁判は決心まで大きく時間がかかったのも事実。
物語が扱う案件として、これが最後になったとしても何ら不思議ではない。
興味深いストーリー展開が続く。