いよいよ始まった原爆裁判
公判の様子が詳しく語られることになる。
普通、ドラマを作るときに様々な設定が用いられるが思うに、医療ドラマや法廷ドラマなど専門用語が多様される作りは脚本家の筆力が最も求められるのではなかろうか?
「虎に翼」は法廷ドラマなので、法律の専門知識はもちろんのこと様々な裁判事例にも配慮する必要が。
わずか15分の時間ながら見たところ、脚本家の思い入れが見事に表現されていたと思う。
ポイントになるのは国際法、さらには戦争行為に対する国家間の取り決めなど。
私がかつて取り上げた“ハーグ陸戦条約”などもしっかり採用されていた。
おそらくは当時の裁判記録などもしっかり下調べしたものと思われる。
物語では、星家の朝の様子も描かれていた。
注目するのは義母百合さんの認知症の具合。
ドラマなので設定はかなりデフォルメされているが、百合さんは認知症がかなり進んだ状態で描かれている。
実際の認知症患者の日常を考えると、物語で描かれたような状況になる前に家族はしかるべき手を打っているはず。
そこは少し差っ引いて鑑賞しなければ、世の中が大抵こんなものだと思ったのではあてが外れる。
全体としてはドラマとしてとても完成度が高いなと感心することしきり。
記者竹中が登場するシーンも描かれていた。
寅子を“お嬢ちゃん”と呼ぶあの漢感じはかつてこのドラマに登場していた時と同じ。
佐田判事と呼ぶのが正しいと記者本人の弁。
今週始まったばかりのエピソードだが、登場人物それぞれにきちんと見所を作ってあるのも秀逸。
目次
考察 原爆裁判
原爆裁判は長く時間がかかったことでよく知られる。
日本は太平洋戦争終結時にアメリカへの賠償責任請求を放棄していた。
つまり何かあっても損害賠償はしないと言う姿勢で、原爆被爆者に関して言えば被爆して治療を受ける人たちにとっては厳しい現実。
この裁判はアメリカに損害賠償請求できないなら日本政府が行うべきという。
下世話な話をすれば莫大な予算が必要になることで、ただでさえ逼迫した国家予算をさらに追い詰めることになる。
既に結論も出ているが損害賠償の請求権は認められなかったがの戦争責任は国際法違反ときっちり断罪されている。
当たり前だが、アメリカは一切認めていない。
およそ戦争行為に取り決めを決めたところで、所詮は人殺しなわけで。
方法はともかく殺すことが目的なわけだろ。
実際に戦ったことのない者の、机上の理論じゃなかろうかと思う。
佐田判事としての寅子
裁判の時に判事席には中心に裁判長、両隣には補佐役の判事が着席。
寅子は補佐する立場なので基本的には意見などを言うチャンスは少ない。
しかし、裁判の進行を克明に把握しなければ誰でも務まるような役ではない。
義母百合さんの認知症
女優余貴美子は求められるままに認知症の役どころを演じていた。
正直なところドラマで描かれたような症状なら自宅での世話は無理だと考える。
どこかの施設に入所して専門家にメンテナンスしてもらうのがベストだろうけど、時代背景を考えればこの時代は老人性痴呆と呼んだそうな。
いわゆるボケで社会問題化しつつあった頃だろう。
認知症の呼び名はここから半世紀近く経って2004年まで待たなければならない。
ざっくりした数字だが、今から10年以上前に認知症患者は国内で462万人と発表があった。
今はおそらく500万人を軽く超えていることが想像される。
個人的に認知症関係のボランティアをさせていただいているので、情報のアンテナは他の方よりはかなり丁寧に張っているつもり。
昔から言われる物忘れの代表とされるアルツハイマー病だが、今は治療薬も開発されているようなニュースを見聞き。
しかし、水を差すようで申し訳ないがアルツハイマー病を始めとする認知症は大抵の場合発見が著しく遅い。
人間は、不完全な情報でも何とか取り繕って情報処理しようとする。
認知症とは、そうした情報処理に伴う1連の反応に他ならない。
認知症の場合、本人は気がつかなくて周りの人が著しく違和感を感じたりする。
そして医者に行くときには既にかなり進行した場合がほとんど。
アルツハイマー病の場合、潜伏期間が20年以上と言うのも特筆すべき。
百合さんの場合、自分の思い込みによるせん妄も頻繁に起こっているような。
優未とのやりとりで炊飯器のスイッチを入れていないことを自分のせいではないと言い張ったり。
いわゆる認知症あるある。
星家
航一は家族の健康について彼なりにいろいろ調べていたようだ。
寅子は更年期障害だと。
そして義母百合さんは老人性痴呆だと推察していた。
航一の娘のどかは大学を卒業して銀行に勤めている設定に。
しかし、百合さんはそのことを理解していない様子。
さらには自分以外の家族がにこやかにしていることに嫉妬
こういった反応も認知症あるある。
今週のエピソードは始まったばかり。
まだ、今週末の落としどころは見えてこない。