虎に翼は物語の最後の方になってから、いよいよ法廷ドラマらしくなってきたような。
様々な裁判の案件が紹介される。
中でも大きな事件として、当時の東大安田講堂事件がある。
安田講堂にこもった20歳前後の学生たちは機動隊と激しくぶつかり合うことに。
火炎瓶なども使用されて騒然たる状態。
この頃私自身も同世代だったことがあり、記憶に鮮明に残ると同時に同じ若者として彼らの言わんとしていることを自分なりに受け止めようとした。
しかしながら、当時の私は15歳ないしは16歳のほんの子供。
学生運動のポリシーなどを理解するにはもう少し時間が必要だったような気がする。
思い出すと安田講堂事件の後、東大を卒業した政治家OBたちがまだ催涙ガスの立ち込む講堂の視察をしながら目を腫らしていた様子をニュースで見たことが。
私の子供の頃の話だが、ご時世として貧しさを感じる事はなかったように記憶。
さて、ドラマの中で描かれたのは尊属殺人についての案件。
かつて尊属規定が違憲であると申し立てをした裁判がもう一度繰り返されることになる。
今は撤廃された規定だが、尊属殺人ははまだ重罪と規定されていたようだ。
物語のオリジナルの設定として汐見とヒャンちゃんの娘薫が安田講堂事件で逮捕されたと。
ヒャンちゃんは自分の娘の弁護を自分で行うと言い張っているような。
周りのものは当然反対をして誰かに頼むべきだと話をするがどうやら平行線。
かつて寅子の仲間だったヒャンちゃんは今は努力して弁護士資格を取得している。
当然弁護は可能だが…
「虎に翼」はいよいよ法廷ドラマらしく様々な法律上の議論が飛び交う展開に。
目次
安田講堂事件
この頃はとにかく学生運動が華やかだった。
当時の有名な歌手に加藤登紀子がいるが、彼女の夫も学生運動で名を馳せたひとり。
結婚した時、加藤登紀子は妊娠3ヶ月だった記憶する。
その時、夫は服役中。
当時、その事実を知った私も驚きとある種の憧れを抱いたことが記憶に残る。
世の中に流されることなく、自分の信じた道を貫く。
口では何とでも言えるが、きちんと実行できる人などごく稀だろう。
当時の学生運動の闘志たちは何か特別なモチベーションがあったのかもしれない。
今となっては全て過去の思い出に過ぎないが忘れられない人生の1ページだった。
笹竹にて桂場の祝勝会
たびたびこのブログでも取り上げるが、桂場 久藤 多岐川はかつての穂高教授の教え子たち。
間違いなく日本の司法を支える貴重なメンバーだろう。
桂場がどうやら1番出世しているような印象を受ける。
多岐川はスーツを着ているが、本来は病み上がりで長く生きられるような雰囲気ではない。
久藤は多少歳はとっているが、寅子同様裁判所内で大切な仕事を受け負う。
物語の中で、さらりとしか触れてはいないが寅子の尋問は若者たちにも受け入れられていたような様子。
決して声を荒らげることなく若者たちに寄り添う寅子の言葉は、理屈抜きに相手の心に響いたに違いない。
尊属殺人に関わる置き土産
憲法14条には、すべての人が平等に人権を有すると規定されている。
尊属殺人は特別な規定で罪が重くなるように設定されている。
そのことが憲法違反であると裁判で訴えた人たちがいた。
他ならぬ穂高教授。
あの時の裁判で尊属殺人の規定は、違憲ではないとの判断が出されている。
よねと轟は美位子の弁護を引き受けているが、彼女は自分の父親を殺害した当事者。
このまま裁判が行われれば、尊属殺人罪が適用される可能性が。
そうなれば憲法判断が争点になるので、最高裁まで審議が持ち込まれる可能性が。
勝ち負けは別として多額の資金が必要なこと、さらには莫大な時間もかかる。
法律で定められたことが必ずしも正しいとは限らない。
常に見張っていなければ、法の目をかいくぐって犯罪が行われることもあり、また法そのものに不備が見つかる場合だってある。
必要なのは、自らの損得を顧みることなく、事実に正しく向き合うことのできる専門家。
簡単には扱えないシロモノ。
当時のご時世
安講堂事件は物語の中にしっかり取り込まれていた。
汐見夫婦の一人娘、薫はこの事件で逮捕されてしまったようだ。
ヒャンちゃんは自分が朝鮮人であることを隠し続けていたようだ。
朝ドラの特徴として、年代がいまひとつ伝わりにくい部分がある。
ヒャンちゃんを演じているハ・ヨンスはまだ30代になったばかり。
年頃の娘がいるおばちゃんには到底見えないよね。
役者としてはポテンシャルが高いと思わせるのに十分な演技力だがどうしても今現在のもの年齢がわかりにくい。
今週のエピソードは、どうやら当時のご時世を反映しながら物語の登場人物それぞれの家庭の事情が描かれる。