くわちゃんの独り言

音楽や映画が大好きな爺さん。長年の経験から知りえたことを発信します。

虎に翼 産みの苦しみ

物語のテーマは驚くほど重い。

寅子の周りでは様々な事件が起こり、問題点を洗い出し対応策を検討していく。

どうやら今週テーマになりそうなのは少年法改正への対応

そして尊属殺に対する判断は困難を極めた。

普通に描いたならどうしようもなく硬い社会ドラマになってしまうだろう。

しかし、脚本家は例えば重要なポジションで仕事をする桂場の葛藤を、既に亡くなった多岐川とのユーモアたっぷりの会話の中で紹介してみせる。

多岐川は例の調子で真面目な話題をおちゃらけて語りだす。

そうは言っても、それぞれの登場人物たちの悩みは深い。

さらには、ドラマの中で語られた事件の紹介はこれでもかと言うぐらい深刻なものも。

今日描かれた物語の中では、大きく2つ位の見せ場があったような気がした。

1つは、家庭裁判所に配属された航一の長男朋一が職場で紹介される下り

そしてもう一つは、

わずか数分で語られた内容だが父親を殺した美位子の実情を航一に説明するよねの語り

迫力充分と言ってしまえばそれまでだが、セリフの中に驚くべき内容も含まれていたように感じた。

父親からありとあらゆる暴力を受けていた美位子の不幸はよね曰く、

世の中にはありふれた不幸

このセリフは、正直誰もが驚愕する内容だったのでは?

かつて同じような言葉を占い師の細木数子が語っていたことを思い出す。

「私は何度も実の父親から性暴力を受ける娘たちの話を聞かされてきた」

個人的な話をすれば私の周りでは聞いた事は無い。

「虎に翼」は残りわずかと言いながら、物語の奥行きへの追求の手を緩める事はない

桂場に詰め寄る寅子

目次

変化する社会に求められる対応

久藤が語るスマートな反論

1970年71年頃は確かに犯罪者の低年齢化があったかもしれない。

この頃記憶に残る凶悪な事件と言えば、バス放火事件とかそれから爆発事件などもあったような気がする。

犯人は若者だったように記憶。

ニュースにならないまでも、少年による犯罪は増えていたかもしれない。

それに対する対応策として罰則を強化するのは最もありふれた手近な方策

この時家庭裁判所のメンバーは反対を強く唱えていた。

罰則を強化することは犯罪の抑止力にはなり得ない。

強化は必要かもしれないがそれが犯罪を防ぐことにどれだけの効果があるのかと問われれば、犯罪そのものに向き合っていないような気がする。

戦後、家庭裁判所はその役割の方向転換を求められてきたこともあっただろう。

多岐川や久藤が言うような愛の裁判所等と言う綺麗事は、通用しにくくなっていたかも。

攻め続けられる司法

いるはずのない多岐川を怒鳴り飛ばす桂場

じっくり腰を据えて対応策を検討する裁判所は、政治からの強烈な突き上げにさらされていた。

物語の中のセリフにも語られていた。

寅子が桂場に穂高イズムを尋ねたときに桂場は吐き捨てるように語る。

そんなことではここには立っていられん。

この頃桂場は朋一たち若い裁判官たちの勉強会メンバーたちをことごとく左遷させていた。

桂場曰く、政治家共に好き勝手させないため!

しかし、そのせいで若い裁判官たちの1部は退職に追い込まれていたようだ。

寅子は桂場の犠牲を伴う人事異動を激しく断罪。

追い詰められた桂場は大声を出して反論。

黙れ🤬

用もないのにたずねてくるな!

もともと裁判所で働くような人たちはかなり頭の切れる人たち。

それぞれ言わんとしている事はよくわかる。

彼らのような頭脳明晰な者たちが感情に振り回されるのは、物語的には少し違和感を感じるかも。

寅子の憤り

理不尽な人事異動に反発

寅子は朋一の人事異動について様々な状況を知ることになっていた。

そして理不尽な移動が桂場によるものだと知ることになる。

物語で描かれたのは桂場を厳しく追い詰める寅子。

寅子の怒りはごもっとも。

物語を見るにつけ、1番苦しんでいるのは桂場のように映った。

最高裁判所の頂点にいるわけで、責任は重くストレスも無尽蔵にかかってくるだろう。

桂場はお気に入りの笹竹の団子も久しく食べていないようだ。

この頃はまだ店に立ち寄ることができていた 多岐川も存命

昔の記憶をたどってみても、この頃社会的に何かが問題になっていたとは記憶の中にない。

我ながら、能天気に幸せに暮らしていたんだなと。

私はちょうど高校1年から2年生にかけての頃だったと思う。

クラブ活動も盛んにやっていたので、世の中のことには正直なところ興味はわかなかったね。

この時代、私たちの世代を指して、三無主義なる言葉が生まれていた。

無気力 無関心 無責任 の3つ。

これに無感動を加えて、四無主義とも言われたね。

何の自慢にもならないがこれはいわゆる批評であって、私たちの世代が周りにはそのように映っただけ。

実際は、ケースバイケースで違う人も大勢いたはず。

よねが語る美位子の不幸

ありふれた不幸だが内容はとてつもなく深刻

よねと航一のやりとりにはかなりの迫力があったと思う。

私はよねのありふれた不幸のセリフが衝撃的に感じた。

しかし、実の父親が娘を犯して妊娠させるとはおよそ人間の仕業じゃない。

物語の中では、よね自身の経験も影響を与えているのに違いない。

よねも自分の父親から虐待されていた。

物語の今週の問題提起は十分になされたような気がする。

明日以降の展開で驚くべき進展が語られる。