残りわずかとなった「虎に翼」だが、物語に引き込もうとする吸引力は未だ衰えを知らない。
最後の最後まで物語としての面白さを追求しつつ、登場人物たちの切ない葛藤がこれでもかと言うぐらいに描かれる。
昨日の最後で桂場を訪ねる航一の様子が描かれた。
桂場は、政治からの圧力にただ1人司法の砦となって敢然と抵抗し続けていた。
様々な法令と照らし合わせて最善の方策を最善な時期に断行する。
しかし、桂場のこだわりは周りで仕事をする者たちと軋轢を生じることも。
桂場の下した決断で、大勢の若い判事たちが仕事を辞めることに。
そして航一が調査した尊属殺についての報告も却下されようとする。
最初は納得したように見えた航一だが、やはりどうしても受け入れることができない。
激昂する航一は桂場に激しく詰め寄って思いの丈をぶつける。
そんな時、航一にとある事件が!
なんと興奮のあまり鼻血を出してしまう。
まるで低年齢の子供のように卒倒してしまう航一。
桂場は成り行き上、航一の介抱をするしかなかった。
現場に呼ばれた寅子は慌てて桂場の長官室に駆けつける。
そして、この辺の描き方がとてつもなく秀逸。
シュールな内容にもかかわらず、ユーモアたっぷり。
脚本家の筆力と演出を担当するスタッフたちの懇親の表現が見事に花開いている瞬間。
物語を見ている我々は、ストーリーがしっかり把握できるばかりか誰がどんなふうに心にトラウマを抱えているかが手に取るように納得できる。
さらに物語が始まった頃からの宿題とも言える森口美佐江の件についても新たな種明かしが。
目次
航一対桂場
いつもは穏やかで静かなたたずまいの航一が信じられないほどの高ぶりで激しく怒っていた。
桂場は最適なタイミングを狙うあまり取っ掛かりの時期を逸してしまうことも。
そのことが我慢できない航一。
何が司法の砦を守る!だ🤯
興奮しすぎた航一はまるで子供のように鼻血を出してしまう。
桂場は別な意味で驚きを隠せない。
星君😨……
自らの鼻血に気づいた航一はその場で卒倒。
手当てを受けた後、桂場の正座の膝枕で眠ってしまうことに。
この時の描き方があまりにも巧みで!
桂場は足がしびれてまともに立ち上がることもできない。
この場面でのやりとりが、見ている者をかつてないほど物語に引きつけていた。
寅子たちを納得させる桂場
桂場は民主主義の根本原理である三権分立を絶対に死守しようと心に決めていた。
司法は他の権力から絶対に圧力をかけられてはならない。
様々な事案において政治的な圧力は容赦なく司法に襲いかかる。
法に照らし合わせて適正な判断をする。
そのポリシーだけは絶対に揺るがせてはならない。
長官室で見た航一と桂場の様子はは寅子にとって
はて?
最も緊張感漂う場面で、このリアクションでは誰もが笑っちゃうだろう。
寅子は桂場が大勢の若い判事達を左遷する形で人事異動したことに心を痛めていた。
桂場は政治的な圧力に敢然と立ち向かうためにあえて鬼のような人事権を発動した。
その傍若無人なやり方は、寅子をして驚きを通り越えてむしろ尊敬の念すら湧いてくる。
さすが桂場さん😍
寅子の言葉に嘘偽りはなかっただろう。
法律と道徳は別物
美位子の尊属殺人事件は、法律の規定に真っ向から立ち向かう内容なので最高裁で争われることになった。
法律で規定する以前に人間は人間を殺してはいけないと言う大前提がある。
人間は競い合うことを主な目的にしながら、決して相手の生息の根を止めるようなことまではしない。
競い合い お互い磨き合うことを切磋琢磨と言うが、そのような争いはむしろ奨励される。
しかし、殺人は絶対に認められないだろう。
不思議なもので、個人レベルの話ならば殺人事件として厳しく罰せられるが戦争で何万人もの人を殺せば英雄扱いされる。
人間社会は見方を変えれば不条理そのもの。
過ちを犯すことを厳しく制限するために法律が定められる。
法律を定める手前にあって、人を人たらしめるものは道徳だろう。
道徳と法律では立ち位置がかなり違うはず。
法律の手前に道徳があると受け止める。
それぞれは密接に関係しているように見えて、独立して1つの体系を作り出しているのでは。
桂場や寅子に限らず、法律に関わる人たちは人それぞれが持っている真心の領域について、もっともっと追求する必要があるのでは。
森口美佐江の遺書
ドラマを見ている者たちが、最も注意深く見守ったのがこのシーンだったかもしれない。
美佐江がかつて新潟時代寅子と関わる場面があった。
寅子が優未をかばったのは母親ゆえ。
しかし、美佐江は寅子に拒否されたと勘違いしたようだ。
美佐江の母親から伝えられた美佐江の人生は残酷で惨めなものだったかも
寅子は新潟時代美佐江を助けられる可能性があった。
しかし、優未の存在がそれ以上の行動を阻害する形に。
寅子と美佐江が一対一で向き合えば話し合えた可能性も。
しかし、人生思い通りに行くとは限らない。
物語で描かれた当時の、美佐江の複雑でもがっかりを表現した表情の演技は今見返してみてもひしひしと伝わってくるものがある。
さて、物語はいよいよラスト5話。
泣いても笑っても全てが完結する。