今週描かれた物語の設定は、1970年から72年にかけて。
この時代、既に戦後ではないと呼ばれ続けて高度成長期に差し掛かった頃。
この頃高校生から大学生になりかけていた私はアルバイトに忙しかったように記憶。
学校そっちのけでアルバイトしてたが、高校生の頃は1日がんばって働いてもせいぜい1000円程度の稼ぎにしかならなかったが、大学に入ってからは3000円を超えることも多々あったような気がする。
物語はそんな時代を描いて戦後日本がどのように発展し、どのように様々な規制を構築していったかが、よくわかる作りに。
物語の主人公寅子は2度目の結婚で、夫航一と仲睦まじく暮らしていた。
しかし、彼女の周りでは戦後の様々な後始末とも言うべき裁判事案が休みなく続いていた。
寅子は家庭裁判所内では少年部部長の肩書。
少年少女の非行について持ち前の粘り強さを発揮し、事件の真相究明と若者を更生させる手際の良さで、誰からも一目置かれる存在に。
物語は今週が終わったので、来週の5話分だけとなる。
ドラマの中で取り上げられたストーリーは大きく2つに分けられるだろう。
1つは新潟時代、物語の宿題とも言えるべき少女の案件。
他ならぬ森口美佐江の件。
彼女とそっくりの少女が現れたことで、寅子のトラウマとも言うべき過去の記憶が蘇る。
1週間の最後の方で、時代の中でもがき苦しんだ少女の人生が語られることになった。
もう一つ取り上げられるエピソードは、尊属殺人に関わる憲法解釈だろう。
尊属殺人の重罰規定が憲法違反になるかどうかの判断。
実はこの規定が撤廃されるのは、21世紀間際になってから。
社会的な重たいテーマをこれでもかと提示し続ける朝ドラ「虎に翼」
目次
少年法改正に関わる様々な思惑
戦後すぐの頃は、街にはストリートチルドレンと呼ばれる浮浪児がたむろしていた。
物語の設定はそこから25年ほど経った頃のこと。
もはや戦後ではないの合言葉が世の中で叫ばれるようになっていた頃。
既に少年犯罪は、戦後すぐの頃のような窃盗などが大半を占める時代ではなくなってきただろう。
世の中では“少年犯罪が凶悪化してきた”と盛んに言われ始めたが犯罪者の内訳は、大人も子供もそれほど差があるわけではない。
少年法に限って処罰を厳しくしたところで問題の解決にはならない。
むしろ非行を未然に防ぐのなら役割は教育が担うべきだと普通に考える。
改正の議論は、様々な思惑が交錯して「現行通りを訴えるもの」「改正して厳罰化を採用するべき」だと意見は真っ向から対立していた。
家庭裁判所の出発点を考えれば、若者の更生を第一の目的にしていた。
物語は結論の出ないまま、ぐいぐいと先を急ぐ。
物語のモデル三淵嘉子さんと寅子
41歳の時49歳のご主人と再婚した三淵嘉子さん。
ご主人の三淵乾太郎さんは調べたところ恋愛至上主義とも書き込みが。
どうやら嘉子さんに猛アタックして射とめたらしい。
写真を見ても長身でこの時代にはふさわしくないほどのイケメン。
嘉子さんは1914年生まれで、1984年に亡くなっている。
享年70歳。
「虎に翼」が物語が描かれた時代と合わせてみると、亡くなるわずか10年ほど前のことがストーリーに。
嘉子さんは女性初の家庭裁判所長官に任命された。
さらにはあの原爆裁判にも携わっていた。
日本の歴史の中では、戦後の功労者として必ず名前が上がる。
星家での暮らし
物語に戻ってこの頃の星家。
若い優秀な判事たちは、法律についての見聞を深めようと日々切磋琢磨していた。
それは勉強会の形で仕事が終わった後、何人かの仲間たちが集っていたようだ。
実はこの時代司法は政治からの圧力にさらされていた。
三権分立の基本原理をしっかり確立するために誰からも後ろ指を刺されないような仕事をする必要が。
物語のテーマは、朝ドラとは思えないほどの重たさだが、描き方に時折ユーモアが混ざる。
演出の巧みさゆえに、決して重くなることなく物語は粛々と進んでいく。
憲法14条と尊属殺規定
自分の身内、とりわけ目上の人を殺せば重罰が課せられる。
私が小学生の頃は尊属殺人と言って、罪が重いと習った記憶が。
今は既に撤廃されているが、この時代はしっかりと規定が残っていた。
寅子たちは尊属殺規定が憲法14条の法のもとに平等である文言に違反していると声高に叫んでいた。
物語では、たまたま父親殺しの女性の裁判の様子が話題に。
最高裁判所に上告しても取り上げられるかどうかは別な問題。
描かれたエピソードの中では調査官の航一が「取り上げなければいけない」と激昂していたね。
結論から言えば、取り上げられることになる。
予告編も公開されていたが、来週最高裁判所の大法廷の審判の様子が描かれていた。
さて、泣いても笑ってもあと5日。
法廷ドラマとして、完成度の高い「虎に翼」
朝ドラの歴史の中に、新たな1ページが書き加わる。