怒涛のように過ぎた1週間。
物語で語られたのは猪爪家を襲った突然の災難。
父直言が贈収賄事件で逮捕されてしまう緊急事態。
共亜事件は寅子が法律家として、これから何を信じて活動すべきか厳しい問いかけとともに覚悟が求められる。
様々な事実関係が、調べれば調べるほど複雑に入り組んで、小手先で回避できるような容易いことではない。
逮捕され取り調べが続く中で、父直言は事実無根と知りつつ、罪を認める形で自白を。
始まった拷問のような取り調べは本人だけではなく、家族すべてを苦しみの渦の中に巻き込んでしまう。
直言の弁護を引き受けたのは、猪爪家の恩人穂高先生。
先生の尽力で次々と明らかになる事件の裏。
政治家や1部の権力が自らの欲望を満たすために画策し捏造した事件であることが発覚。
16名にも及ぶ贈収賄事件の逮捕者たちは、それぞれ弁護人とともに無罪を主張することで結束。
一進一退の攻防が続く中、1年半かかった公判は100回を超えた。
寅子たちにも法律家としての最初の活動となった汚職事件。
多くの教訓を残し、翌週にかけて法律家を目指すための足がかりとなる1週間。
目次
共亜事件の真相に迫る
先週から今週にかけて描かれた猪爪家の父親直言の贈収賄事件での逮捕劇。
本人はもちろん家族にとっても、また寅子の学友にとっても寝耳に水の話。
調べてみると、どうやら疑いのみが先行していて、事件の本質となるべき内容はすべて憶測の領域を出ない。
どうやら何者かが目的を持って捏造した事件であることが疑われた。
巻き込まれた方はたまったものではない。
しかし、検察側が裁判所の捜査令状をもとに猪爪家に乗り込んでくる以上それなりの自信があった上での行動だと思われた。
つまり、事実関係はともかく最初に有罪ありきで物事が進められている。
直言の弁護を引き受けてくれた穂高先生は寅子たちの協力も得ながら、事件の真相に迫るべく様々な検証作業を続ける。
そしてわかった事は捏造のための拷問とも言うべき厳しい取り調べ。
取り調べの最中にこれらの拘束具を使用するためには、施設の責任者の同意が必要とされる。
もちろんこの事件に関してはそんな同意など得て拘束されるはずもなく。
検察が自白を欲しいあまり独断でやったことが発覚。
ここが判決に至るまでの要の部分。
自白の強要がもたらすもの
どうやら事件の本体は見えてきたような。
貴族院議員水沼は政府与党を解散させることを目論む。
目的達成のために仕組んだ事件が共亜事件。
議員は検察官を手足のように使役し、自分の欲望を叶えようと画策。
ドラマの面白さは、物語の設定がそれぞれの思惑を微妙に絡み合わせる点。
真実にたどり着くまでに、大勢の人たちの協力があった事は言うまでもない。
最初の出発は新聞記者竹中。
彼がいなければ捏造事件であることも知られる事はなかったはず。
真実を明らかにするために、すべての人の力が見事に結集した痛快さが物語の真骨頂だと言える。
事件に巻き込まれた直言と彼を信じて待ち続けた妻はるの献身はドラマを見ている人の涙を誘った。
法律家としてするべきこと
法律はきちんと理解し、守るべき人がいなければ、必ず世俗の垢にまみれてあらぬ方向に導かれる。
寅子たち法律家を目指すものが真っ先に考えるべき事はいかにして真実を掌握することができるか。
まやかしに騙され正しいことを見失ってはならない。
今回の事件は寅子だけでなく、彼女の仲間たちにとっても実践で学ぶためのかけがえのない経験になったはず。
先週までずっと描かれてきた学友たちの様々なプライベート部分。
嫌われ者だったはずのよねは無罪確定の時、我がことのように喜んでいた。
ドラマをずっと見続けている人にとって、彼女の反応こそが物語が何を大切に描こうとするのか如実に表現されていると大いに納得させられる。
振り返って考えてみると、女性の法律家を目指す彼女たちの様々なエピソードがずっと描かれ続けてきたが、最後に用意されていたのが主人公寅子の家のプライバシー。
寅子の学友たちにとっても我がことのように受け止め結果を我がことのように喜んだ。
ドラマの展開はハラハラドキドキ感もあって、次の物語を見ずにいられない。
15分の放送枠は厳しい制約だと思うが、それらを感じさせないほどに惹きつけて止まない。
脚本家と制作スタッフの心意気がひしひしと伝わってくるではないか。
寅子たちの未来
法律家を目指すことの意味が少しずつ納得し始めている寅子。
今回の共亜事件では桂場裁判官の賢明な判断が事件解決の決定打になった事は言うまでもない。
寅子は直接お礼を述べなければ気が済まなかったのだ。
そして法律家になるべ自分の願いの本質に徐々に気がついていく。
桂場にとってもそれは嬉しい告白だったに違いない。
寅子のモデル三淵さんは女性初の家庭裁判所長官になった方。
寅子の進むべき険しい道のりがどうやら形となって現れそうな予感。