翌日の物語がこれほど楽しみに思った朝ドラも今までなかったかも。
胸の高まりを抑えきれずに発表された判決。
聴席からも大きなどよめきが起こっていた。
判決文は驚くほどシンプルで明確な内容。
物語の中で明らかにされていたが、判決文を作ったのは桂場裁判官とのこと。
穂高先生曰く、判決文の中の例えが結論を見事に的確に捉えている。
さらに先生は判決文を作ったのが桂場だと見抜いていた。
それにしても、ドラマながら絵に描いたようなハッピーエンドでドラマ以上にドラマチック。
ここまで出来上がったストーリーも珍しいと調べたところ、実際にモデルとされた帝人事件も全く同じ展開になっていたことが別な意味で驚き。
被告人全員が無罪などとは普通はありえないことだと思う。
物語の中では、無罪を勝ち取った猪爪家の家族の様子、それぞれの胸の内が詳しく語られていた。
特に印象深かったのは被告人だった父直言とひたすら我慢を強いられた母親はるとのやりとり。
夫の胸にしがみついて、童女のように泣きじゃくるはるを抱きしめる直言。
ここだけ見ていてもドラマになるなとつくづく納得。
そして、物語の最後に語られたのは寅子の法律家になるための心意気。
桂場をわざわざ待ち伏せしてまでもお礼を言いたかった寅子は自らの法律に対する考え方をしっかり確立できたと語る。
決して肯定的に受け止めない桂場。
しかし2人のやりとりの後、甘味処を後にした桂場がにっこり微笑むのを朝ドラファンは決して見逃さない。
これから寅子たちは司法試験に臨むことになる。
共亜事件は無事終了したが彼女たちの戦いの本番はこれから。
目次
主文 被告人らはいずれも無罪
これほどテレビに緊張感を持って向かい合うのもなかなか珍しい。
不思議なものでかつてないほど引き込まれるドラマ作品になったと思う。
ちなみに脚本を書いているのは若手の女流作家吉田恵里香さん
私の娘とも言うべき世代の作品。
複雑な専門用語を自在に駆使し、物語を構築する。
実際の事件を参考にしていながらも、ご自身の創作部分によるところがとても大きいと思う。
才能だけではない集中する力と辛抱する努力、どちらも見事に兼ね備えたこれからを嘱望される作家。
物語の中の共亜事件
この時被告になった16人がどんな判決を受けるのかが大きく注目を集める。
当然のことながらモデルとなったのが帝人事件。
こちらの新聞記事もネットでうまい具合に検索。
これだけ鮮やかな物語を題材に選べれば後はディティールの脚色が必要になる。
無罪確定後の自宅にまでやってきたお寿司屋さん笹山。
ドラマの中の父親直言は、はっきり言ってとばっちりを受けたようなもの。
物語の設定で語られていたが、この裁判は公判が終わって判決に至るまで1年半かかっている。
公判だけでも100回以上。
白熱した議論が交わされた事は言うまでもない。
判決に至る経緯
ドラマの中では取り調べなど高飛車な態度で手を圧倒していた検察官。
演じていた彼は朝ドラでもお馴染みの俳優。
彼は少し前の朝ドラカムカムエブリバディーにも登場していたと思う。
今回は周りの憎しみを一手に引き受ける役柄。
穂高先生とのやりとりも見ものだった。
物語の内容を振り返って考えれば、最初に事件の捏造を考案したのは、貴族院議員の水沼さん。
政治が司法に不当に介入してくる。
物語の本質はそういうことだったと解釈。
弁護側のひたむきな努力によって、真実はことごとく暴かれる結果に。
はるの献身 直言の誠意
今週1番の良いシーンと言えばここじゃなかろうか?
石田ゆり子が夫にしがみついて泣きじゃくる。
妻を愛しくてたまらない思いで抱きしめる直言。
2人の感極まった名シーン。
くしゃくしゃにした2人の表情からこめかみの血管が浮き出てくるのが感じられた。
役者としても全力投球していることがよく伝わる。
直言は映画に行けなかったことを謝罪。
やり直す意味で再びはるを誘う。
日本の男女は驚くほど不器用で驚くほど誠実。
久しぶりに思わず涙ぐみそうになるような場面を見せられた。
寅子と桂場
寅子は法律に対する姿勢を少しずつ修正。
法律は、今までは弱者を守るための毛布のような温かみのある存在と思っていた。
寅子の学友よねは法律は悪人を罰するための武器と信じて疑わない。
しかし今回関わった事件に、どちらも微妙に違うのではと思うように。
法律は清らかな泉のようなもの。
その清らかさは守らなければならない。
桂場が逆に質問する。
その考え方は裁判官のもの。
君は裁判官志望か?
この時代、女性が裁判官になる事はまだ認められていなかった。
寅子は司法試験の後、そういったことも目指す存在になる。
寅子の真摯な態度に、思わずにっこりと喜びを隠し切れない桂場。
今週の物語はここまでで終了。
寅子たちは最初の難間司法試験突破がもうすぐそこに。