チャイコフスキー国際コンクール
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このコンクールは旧ソ連時代から自国ソ連の芸術家の権威を発揚させるために開催されて今日に至る。
世界3大コンクールの1つと言われ、主に行われるのはピアノ、バイオリン、チェロ、声楽、珍しいところではバイオリンの制作部門がある。
これらの分野で腕前を競い合う。
審査はなかなか厳しく、このコンクールから輩出されたソリストたちは今も世界的に活躍する有名人が多い。
個人的に思うのは、ソ連中心で行われたコンクールであるにもかかわらず、優勝者が意外にもソ連以外の国の人を平気で選んでいるあたり。
本当に音楽を正当に評価するコンクールなのだと感心することしきり。
今回取り上げた2人のバイオリニストは両人ともこのコンクールのバイオリン部門の優勝者。
日本人で優勝したのはこの2人とピアノ部門の女性が1人、上原彩子さん。
それ以外の入賞者は多数存在している。
このコンクールでの優勝とはまさにステイタスそのものと言っていい。
才能とかがんばりとかおそらくそれ以上のものが揃わなければ優勝はできないはず。
およそ2週間かけて行われるコンクールでは、何度も選考会が行われ、その都度振り落とされて最後の1名が選ばれる。
まれに、優勝者がいなかったり、優勝が同着で2人の時もあるらしい。
このような審査方法だといやがおうでも権威が増すと言うもの。
最近では特にアジア勢の応募が多いと聞く。
確かに日本に限らず、東南アジアや東アジアのクラシックのソリストの名前はちらほら聞く。
諏訪内晶子
彼女は今の段階では日本を代表する第一人者のバイオリニストと言えるだろう。
女性でいながら、肝の座った、確信に満ちた演奏が彼女の特徴。
繊細できめ細やかな反面、圧倒的な説得力を持って聴く者を駆逐する。
聴く者をして引き込む力、納得させる力、一体どれほどの修練と経験を積めばあのような演奏が可能になるのかと感心することしきり。
私生活においては必ずしも成功できたとは言えないようだが、芸術家としての彼女の値打ちは、いささかも傷つく事は無い。
現在47歳。あの20歳にも満たない少女がここまで活躍し続けてこられたのである。
これからますますその演奏に磨きがかかるに違いない。
私の個人的な感想では大御所中の大御所である。
神尾真由子
神尾真由子 バッハ「無伴奏ヴァイオリンソナタ1番 アダージョ」より
神尾真由子さんも 諏訪内晶子さん同様チャイコフスキー国際コンクールでバイオリン部門優勝の経歴を持つ。
実は驚くほど若くて、まだ32歳。すでに結婚をしていてご主人はロシア人のピアニスト。性別は不明だが、お子さんが1人おられる。
彼女のバイオリンの特徴は、思い切りの良さに代表されるはず。
彼女の特集番組をテレビで何度か拝見したが、自分の意見をはっきり言えるてきぱきした印象を受けた。
その時にはまだ独身で、彼氏はいなかったと思う。個人的に思ったのはこの娘は恋愛には向かないなと。
しかしながら男女の仲は、ご縁である。
彼女はコンクールに出た後から、様々な音楽活動を本格化させている。
いろいろ調べてみるとまだ小学生とおぼしき彼女の映像も残っている。
やはり小さい時からきちんと学んでトレーニングをしてきたようだ。
彼女の活動の特徴としては、ご主人と2人でリサイタルを開いていることが意外と多い。
夫婦で仲が良いなと思うのだが、実際のところはどうだろうか?
こと音楽の解釈や表現になれば、お互い妥協しないでぶつかり合うことになるのだろうから。
特にテレビで見ている限りでは神尾麻真由子さんは結構辛辣なこともズバズバ言っていて、相方は大変だろうなと思ったことも。
芸術家同士の切磋琢磨なので、馴れ合いの趣味の領域のような事は当然ありえないはず。
それでも2人で活動できるのは、多分、お二人の相性が良いからだろう。
このような関係の音楽家は他にはあまり思い当たらない。
ロベルトシューマンとクララシューマンがそれに近かったような気がするが、彼らはシューマンが精神病で早逝したので必ずしも幸せとは映らない。
神尾さんご夫婦は、旦那さんが一歳年上で、これからまだまだ長く一緒に過ごすだろう。
幸せで、なおかつ音楽活動に勤しんでほしいものである。
ストラディヴァリウスの事
諏訪内晶子さんのストラディバリウスは日本音楽財団が所有しているものを貸与されている。
もともとの所有者は20世紀を代表するバイオリニスト「ヨッシャハイフェッツ」
「バイオリニストの王」と呼ばれた。
ちなみにこのバイオリンには愛称が付いていて「ドルフィン」と呼ばれる。
ストラディバリウスクラスのバイオリンだと普通、愛称で呼ばれることが多いようだ。
ストラディバリウスで一般の人がぱっと思いつくのはその金額だろう。
主に17世紀から18世紀にかけてのイタリアのバイオリン製作者の作品なのだが、世界中で確認されているのは数百台レベルと言われ、その中でも特に有名なものは20台とも30台とも言われる。このバイオリンのオークション等での取引価格は、数億円レベルである。
バイオリンにここまでの値段がなぜつくのかは一般人には理解できにくいことだが、その音色を愛でる人はたくさん存在する。
しかし、はっきり言えば音をきちんと聞き分けられる人はかなりの少数派であろう。
テレビの番組で格付けチェックなるものがある。
1本数万円レベルの安物のバイオリンと、ストラディバリウスレベルの高級なものとの音比べをして、どちらが本物かを当てるゲーム。
バラエティー番組なのだが、驚くほど当たらない。
本当に音で判断できる人など少数派中の少数だろう。
それでもストラディヴァリウスに支持が集まるのは、別のテレビの特集番組だったのだが、それはそのバイオリンを奏でる演奏家にとっての感覚。
ストラディバリウスを演奏した演奏家は皆口を揃えて言う。
「このバイオリンだと、明らかに自分が上手になったような気がするのだ」と。
科学的に分析するとストラディヴァリウスは非常にバランスの良い作りになっているのだそう。
演奏家が奏でてみて、その出てきたことを自ら判別するのだが、どのような領域の音も皆心地よく耳に入ってくるらしい。
ふと考えたことだが、ストラディバリウスはおそらく演奏家の持てる能力を遺憾なく発揮させる不思議な力があるに違いない。
当たり前のことだが、私のような素人がストラディバリウスを手にしたところで出てくる音は雑音のはず。
おのずと条件は決まってくるようだ。
神尾真由子さんのストラディバリウスは、驚くなかれ「ヨーゼフヨアヒム」が所有していたもの。
このヨアヒムと言うバイオリニストはあのブラームスの大親友である。
ブラームスがバイオリン協奏曲第一番をこのヨアヒムのためにこしらえたのは音楽史上有名なこと。
そのバイオリンを手にできるあたり、神尾さんの並々ならぬ強運を感じるのである。
ストラディバリウスクラスのバイオリンだと、ほとんどは歴史的な文化遺産と言っていいだろう。
演奏家は個人なので、基本的には個人の管理下に置かれるが、これらのものの多くは代々受け継がれて多くの人の手の中で活躍することになる。
ここで言えるのは、マニアと呼ばれる人たちが個人のアンティークな調度品として抱え込んでしまうことが果たしてこれらの文化遺産にふさわしいことなのかどうか。
特に楽器の事なので、ざっくばらんに言えば音が出てなんぼのもんでしょう。
音の出ないものをガラスケースの中で飾っておくのはある意味ナンセンス。
できることならば、才能ある熱意ある演奏家の手によって奏でられるべきだと考える。
世界中のあちこちにガラスケースの中に飾られた置物としての楽器はたくさん存在するようだ。
まとめ
演奏家の道を選んだ以上は、その主な活動は当たり前のことだが演奏することに。
大抵の場合は、世界中のコンサート会場を飛び回ること。
そして、必要に応じてレコーディングスタジオにこもること。
この2つに分けられるようだ。
自分の好きなことを気ままにやっている印象があるが、このお二人の特集番組を見る限りにおいては、日々忙しく、また作業の量も極めて大きく、大変な感じを受けた。
熱意があって、この仕事が大好きでなければ到底務まるものではない。
当たり前のことだが、この仕事も需要と供給のバランスで成り立っている。
彼女たちの場合は知名度もトップクラスであり、その活動も大変なのはよくわかる。
やはり活動となると、インターネットでの紹介は今はテッパンアイテムのようだ。
これからもますますのご活躍を。