今日の物語からはいよいよ父三郎の病気について詳しく語られることに。
末期の胃がんとのこと。
医者の説明もなされていたね。
絶対安静で酒は禁止。
しかし、そのことをお父さんがどの程度受け止めているのか?
福島の実家古山家に滞在しながら、どうやって家族を支えてあげられるかを必死で考える
祐一君と音ちゃん
目次
お父さんの病状とお母さんの胸の内
お母さんとお父ちゃんが2人きりの時、あのお母さんが泣き崩れていた。
連れ合いを失う苦しみや悲しみは、 当事者でなければおよそわかるものではない。
子供が親を失うものとは全く別な気持ちのようだね。
“私は自分の母親が連れ合いをなくすときの様子をつぶさに見てきた”ので、その気持ちがよくわかる。
誰か理解してくれる人がそばにいるかいないかで気持ちの有り様はずいぶん変わってくる。
お母さんの場合、家でお父さんと息子の浩二君との暮らし。
浩二君がどのくらいお母さんの気持ちに寄り添ってあげられていたか。
もちろん必死でお父さんを支えようと努力してきたのは紛れもない事実で、それは誰彼、口を挟めることではない。
しかし、夫である男性を失う女性、妻の気持ちは多分男が何人よったってわかりはしない。
音ちゃんの前で泣き崩れてしまったのは、わずかばかりのコミニケーションしか取れていなくても音ちゃんは女性でしかも唯一自分の気持ちをわかってくれると思ったから。
わずか15分しかないドラマの中で、こういった複雑な気持ちの機微を描けるところがエールの優れたところ。
お父さんに対しては、どうやら打つ手はなさそうだ。
驚くほど穏やかなお父さん
医者の診察を受けた後、憎まれ口を聞きつつ、トボけた様子のお父さん。
家族は病状をひた隠しにしているのだが。
実はこれとても厳しい問題なんだけれど、本人はたとえ病気のことを知らされなくてもかなり早い時期から薄々わかっちゃうんだよね。
そして、家族が自分に気を遣って隠していることもほとんど最初の頃からわかってしまうようだ。
死ぬ間際になってから気づくなんて人はほぼ100%いないだろう。
実は末期の病気の場合、最近でこそ告知する症例が増えてきているが、つい15年20年位前なら告知するかどうかも議論の対象になっていたし、告知をせずに過ごす人だってかなり多かったと記憶する。
個人的なことだが私の父親の場合、本人には最後まで隠し通していた。
しかし、様々な状況を考えてみると本人はおそらく早い時期から自分の死期を悟っていたのでは。
そして病人自身、死を迎える当事者は周りのものが自分に気を遣ってくれていることを知って、さらに自分自身が周りのものに気を使うのだ。
「知らないふりをしてみせる」。
おそらくそんな悲しいことが全国至る所で起こっているのではと。
エールの物語では戦前の設定なので、病状の厳しいガンの場合、ことごとく隠し通したに違いない。
描き方を見ていて感じたことがもう一つ。
お父さんが食事をするシーンがあったよね。あのうどんをすするシーン。
音ちゃんが出汁は私が味付けしたんですよと言ったのに対して、いまいちだなと言っていたでしょ。
末期のガン患者特有の味覚障害が出ていたよね。
がん患者の末期では抗がん剤の治療でも病状でも味覚障害が起こることが。
私の母親の場合、ガンで亡くしているのだが、彼女も味覚障害を訴えていた。
ただの水を飲んでも何を食べてもとにかく苦い。
これが彼女のコメントだった。
先生にも相談をしてみたんだが、よく起こる症状らしい。
改善しようにもいかんしがたいとのこと。
結局食べる楽しみも最後の方では奪われたと言っていい。
こんな厳しい病状の中でもお父さんは息子と酒を飲みに行きたがった。
弟浩二君の頑張り
浩二についても、がんばって仕事をしている様子が詳しく描かれていた。
福島県の農業について養蚕から果樹栽培に変更するように農家に勧めて回っていた。
大抵こういった事業展開の場合、役場が主導する場合が多いんだけれど、簡単に受け入れられなくて、担当の役人はひたすら苦労するんだよね。
日々の仕事でもひたすらストレスを溜めまくる浩二君。
家に帰ればいつ死んでもおかしくないようなお父さんと、必死に耐えているお母さんと。
こんな状況で、のほほんと凱旋帰国した祐一君家族を“朗らかに迎えてください”って方がどうかしているかもね。
そうでなくても過去に辛く厳しい現実があっただけに。
兄がなんとか力になりたいと申し出てみたところで、かたくなに拒否するばかり。
ある程度まとまったお金を何かの足しにと思って渡したいんだけれど、お母さんはともかく、浩二君は頑として受け取らない。
なかなか辛い問題だけれど、祐一君が決して逃げずに向き合わなければならない家族の問題。
家族はどこまでいったって家族なもので、やっぱり心を開いて許せる間柄でなきゃね。
ちなみに福島のりんごは今はとても有名になっているんだよね。
浩二君の頑張りもやがて実を結ぶのでは。
お父さんの遺言
家族に揉め事があっても昔からお父さんが仲裁に入って何とかみんなをなだめてきた経緯がある。
今回も言い争いをしている最中にお父さんはひょっこり寝床から起きてきた。
ずいぶんうるせぇなぁ。
祐一 いっぱい やりに行くぞ。
ちいっと話があっから。
お母さんや周りのものが驚くのも無視してすぐに出かけていってしまう。
慌てて後を追う祐一君。
そして神社でお参りをするのだ
祐一君に 話しかけた言葉。
俺はもうだめだ。
皆を見てればわかる。
おめぇに承諾してもらいてぇことがある
そう言って今日の物語は終わったのだが、、明日すぐに答えが出る話。
お父さんは自分の死期を悟っている。
その上で大切な遺言を残そうとしているのだ。
遺言は明日詳しく語られると思うが、ネタバレせずに言っておくと古山家そのものに関わること。
エールではどちらかと言えばコメディーチックに描かれることが多かったけれど、今週は驚くほどシリアスな内容で物語が進む。
かつて祐一君が福島を飛び出す時も同じようなタッチで描かれていたが、今回も同様な重たさを感じる。
人の生き死にがかかっている。
軽々しい気持ちで取り扱えるテーマではない。