鎌倉殿の13人は驚くほど丁寧に歴史的事実を描こうとしている。
先週から今週にかけて描かれるのは歴史的に有名な「牧の方事件」。
牧の方とは北条時政の妻りくのこと。
彼女が夫をそそのかして鎌倉幕府に対して起こした謀反とされる。
脚本家三谷幸喜は、歴史を忠実に踏襲しながらもその裏側で誰がどのように考え、苦しみ、そして決断したかを克明に描ききる。
妻りくの訴えに、無謀と知りつつ従ってしまう夫北条時政。
この物語では、りくが無知な悪人を演じているが、歴史的に北条時政が実際に企てたと言う見解が主流だろう。
それにしても鎌倉幕府は初代将軍源頼朝の1族が主流とはなるが、継承は必ずしもうまくいっていなかった。
そして、この事件でも多くの犠牲者が出ることになるが、その中で北条時政の娘婿
平賀朝雅も今日は大丈夫だったがこの直後粛清される運命にある。
配役からは年齢が分かりにくいが23歳の時と歴史に残る。
実は、北条家はここへきて勢力を2分する争いを抱えることに。
そして、誰かが犠牲になるしかない。
影で暗躍する様々な勢力。
物語の面白さとしては申し分ない。
しかし、このペースではこの物語全体を描ききれることになるのかと心配してしまうのは余計なお世話だろうか?
目次
執権を排除する動き
政の最も大切な仕事は訴えに対する仲裁。
訴えのほとんどが領土争いによるもの。
先週の物語で語られた通り、畠山重忠は北条時政の策略によって滅ぼされてしまう。
実はそのことが御家人たち全員に知れ渡ることになって、北条時政の信頼は失墜していた。
その結果、北条義時が政子を担ぎ出して政を司るように。
これは、見方を変えれば執権外し。
そして、それは間違いなく実行されたようだ。
物語を見ていて感じたのは、うまい具合に裏で画策してはみるものの、誰かの協力を仰ごうとすると、協力を持ちかけられたものが見事に裏切る。
なるほどと納得するような語り口。
登場人物たちのそれぞれの立ち位置が微妙に絡み合う。
そして、それは過去に粛清された者たちの怨念を引きずる形で描かれる。
北条時政の胸の内
時政はりくの願いには逆らうことができなかった。
しかし、一方ではその願いを聞き入れれば自分の命がなくなることも承知。
それ故、最後の別れのために子供たちの所へわざわざ酒盛りにやってきた。
そして、今日の物語のタイトルで謎の文言が語られている
オンベレブンビンバー
これはかつて政子の娘大姫がおまじないで唱えていた言葉。
これが記憶違いで実際は違っていたけど。
オンタラクソワカ
こちらが正解。
物語の中で、ユーモアたっぷりに描かれてはいたが、なんとも切ないエピソードを踏襲したもの。
大姫がなくなったときのエピソードも悲しさ以外の何物でもなかった。
そのエピソードで登場していたのが巴御前。
今は和田義盛の連れ添いとなっていて源実朝も何かにつけて通うことになっていた。
さりげなく振る舞うが、歴史を克明に利用しつつ登場人物の胸の内を描ききっている。
時政の妻りくの無謀な企み
りくの大切な息子政範を亡き者にしたのは娘婿の平賀朝雅。
そのことを知らないりくは彼を鎌倉殿にしようと画策。
無謀な策略だが、息子を殺されたりくの悲しみを考えると、やむを得ないと思う部分も。
物語の中で彼は鎌倉の先行きが全く読めないと。
彼はこの後すぐに北条義時によって粛清される。
つまり、謀反の責任を取らされる格好に。
ただし、彼もまた源氏の正当な流れを組んでいる事は間違いないようだ。
歴史の趨勢とは言え、残念な運命をたどった事は事実。
源実朝を拉致
計画通り源実朝を拉致した執権北条時政。
自分が退位する旨の下知文を書くように強制されるが、決して書こうとはしなかった。
どうやら拒否される事は時政自身、想定の範囲だったのでは。
今日の物語で描かれたのはここまで。
歴史にはこの後の事柄もしっかり残っているので、北条時政はりくとともに失脚して伊豆に流されることになる。
今日のエピソードの中では北条義時が謀反人北条時政を討ち取ると宣言していたから、殺されても当然な事態。
殺さなければならない理由もしっかりと語られていた。
もし命を取らなければ北条は身内に甘いとそしりを受ける。
その通りだと、誰もが思うが、歴史的には追放で済んだようだ。
さらに歴史の流れで言うなら、この直後に北条義時が2代目執権に即位。
一躍表舞台に登場することになる。
歴史で語られる北条義時は極悪人とされているようだ。
確かに演じている小栗旬の表情も悪人そのもの。
単なるチンピラではない肝の座った策略家として描かれる北条義時の存在感はバッチリ。
最後にわずかながら感じたのは、この後にも歴史を揺るがすような事件が目白押しなのに、残りの時間がない。
この物語は年内で終了することが決定している。
果たして、これからのエピソードが十分に描ききれるのかどうかわずかながら心配に。
北条義時と息子泰時
息子に自分の仕事ぶりを見せようとしている北条義時。
当たり前の親心のように描かれている。
鎌倉幕府の歴代執権の中で歴史に残る有名人は息子北条泰時。
承久の乱の平定や御成敗式目の制定など、彼の業績はこの後の歴史の指針になる仕事をこなしている。
それらは皆、父の仕事から学んだと言っても良いだろう。
続きは、来週描かれることになる。