今回の大河ドラマは、歴史を変えることなく描いていると言いつつ、かなりの部分で巧みな展開が画策されている。
そのために必要な設定は、登場人物たちのキャラクターを際立たせること。
さらには、衣装。
これらで、それぞれの歴史的人物がどんな性格だったのかがわかるように描こうとしている。
秀逸だなと思うのは、今川氏真のうっすら青い衣装。
そして、存在感抜群の織田信長は、ひたすら家康にプレッシャーを与える存在。
信長の妹お市も、演じている北川景子が輝いて見える設定。
今回、雰囲気にぴったり合っているなと感じたのは、吉原光夫演じる柴田勝家。
実物もこうだったに違いないと思わせるような雰囲気が。
そして、この手の物語で決定的な存在感が求められるのが「豊臣秀吉」
この時代は、まだ木下藤吉郎と呼ばれていたが、ムロツヨシ演じる木下藤吉郎も、物語の雰囲気にぴったり。
とぼけていてちょこまか動き回る様は、この当時こうだったに違いないと思わせるような雰囲気。
さて、織田信長は家康に対してお市と夫婦になるように命じていた。
これは今回の物語で初めて出てきた設定ではなかろうか。
今まで様々な歴史物語を見てきたが、お市の方は、浅井長政の正室として、3人の娘を設ける。
少しでも歴史を学んだものなら、この辺の事情は誰もが知っているのでは。
さて、新解釈の物語の内情とは。
目次
猛将 織田信長
桶狭間の戦いで一躍歴史の表舞台に登場した織田信長。
信長公記などに詳しいいきさつは残っているが、実際のところは最新の歴史研究でいまだに新発見が。
信長はまぐれで勝ったような言い方をされがちだが、今川義元打倒作戦は織田信長の周到な根回しと準備によって、当然のごとくもたらされたものというのが最新の研究。
織田信長は、今川義元を桶狭間におびき寄せたとする設定で描かれていたが、これが妙に信憑性を帯びていてとても興味深い。
信長が今川領に攻め込んでも勝ち目は無い。
誘い出すのが、最も高い勝率で戦を演出できる。
元康は今川家と敵対しても、滅ぼすとまでは考えていなかったようだ。
考えてみれば、戦力的にはまだ今川の方がかなり上。
松平軍が正面切って挑んでも勝てるとは限らない。
とりあえずは和議を結んで、共存共栄を図るのが妥当だと考えるのは自然なこと。
織田信長は元康の意見を一蹴して笑い飛ばしていた。
徳川家康(松平元康)の立ち位置
元康は人質を今川氏真にとられている。
物語の中で描かれていたのは、瀬名が側室にもならない遊び女扱いの低い身分。
そういえば、最初の頃のエピソードで瀬名を側室にしたいと、父親に申し入れをして断られる場面が描かれていた。
この時代の男たちは、これはと思う女性はどうしても手に入れたかったようだ。
かわいそうなのは瀬名姫。
夫に見捨てられたと思ったかもしれない。
物語でもそんな描かれ方。
織田信長から、自身の妹お市を女取るように命令される元康。
この時代の武将たちの考え方は、自分たちの身の安全は、家同士の結びつきを強固なものにしておくこと。
織田信長も豊臣秀吉も、さらには主人公徳川家康も自分の身内をあちこちの大名と婚姻関係を結ばせることに熱心だった。
織田信長の妹お市の方は政略結婚の代表みたいな扱われ方をしただろう。
浅井長政と婚姻関係にあった事は有名だが、長政が討たれた後は1度織田家に戻った後、柴田勝家に嫁ぐことになる。
この当時、美人として誉れの高かったお市の方はあちこちの大名から引く手あまただったと聞く。
彼女は柴田勝家に嫁いだ後は、賤ヶ岳の戦いで勝家とともに討ち死にすることになる。
どうする家康ではお市が幼い頃から元康に恋い焦がれるような設定で描かれていた。
この辺の歴史的な考察は今回初めて披露されたような気がする。
正確な記録が残っていない以上、可能性としてはあり得るだろうなと思わせるところがなかなかうまい。
今川氏真
氏真は裏切った松平元康を決して許さないつもりで対応。
特に、瀬名の家系はことごとく粛清しようと。
実は、この辺の歴史的ないきさつは調べてみると驚くほどドラマチック。
瀬名姫はこの後徳川家康のもとに戻る事は叶うのだが、この後お家騒動に巻き込まれて、姫も長男も家康に殺されることになる。
歴史的には織田信長の命令とされているが、最新の研究では、徳川家康本人がお家騒動を収めるために自ら下した決断だったとされている。
今川氏真は徳川時代に至るまで長生きする運命。
この後、武田信玄の侵略や、松平元康との戦いで敗れることになり今川家は事実上消滅してしまう。
歴史は、無慈悲に流れることに。
織田家家臣団
織田信長の家臣団は、様々なキャラクターがわかりやすく描かれる必要が。
特にまだみんな若いので、お市の方を中心とした人間関係は、周到に描かねばならないだろう。
織田信長は、松平元康にひたすらプレッシャーを与え続ける存在として描かれる。
元康の決断
来週の予告編も流れているので、どうやら自分の妻子を奪還するための作戦を立てるようだ。
それは、物語を見るまでもなく、結果として達成させられるので。
しかし、元康自身は今川と完全に手を切るつもりではなかったようだが、信長の命令もあって、戦いを挑むことになる。
今川家は大国だったが、この後急速に衰え歴史から消え去る運命にあるようだ。