物語の舞台は、佐川。
言わずと知れた万太郎の故郷だが、寿恵子は万太郎と家族になるためには、夫と同じように植物学の様々な事柄を学ぶ必要が。
いわゆる普通の専業主婦と言うわけにはいかない。
今日物語で描かれたのは、植物標本を採集するために竹雄と朝に訪れた横倉山。
ここで竹雄から植物にどのように接するべきかを詳しく学ぶ。
標本採集の方法からその後の処理方法。
これらは皆、植物標本として後々保存する必要がある。
植物の選び方から、周りの状況の確認。
覚えるべき事は山ほどあって生活の中にこれらが入ってくれば、単純に睡眠時間も削らなければと思ってしまう。
案の定、物語の中で描かれていたのは、夜遅くまで作業していた寿恵子がうとうとする様子も。
どうやら万太郎の植物に対する集中力は、他人とは到底比較できないようだ。
竹雄曰く、
万太郎は、植物の申し子
この言葉には、実感がこもる。
モデルになった牧野富太郎博士がまさにその通り。
山の中には、草花もさることながら、巨木も立ち並ぶ圧巻の景色。
物語の中で寿恵子が杉の大木に向かって
槙野寿恵子ですと語りかける物語冒頭の部分が印象的。
目次
横倉山
物語はモデルになった牧野博士の故郷をそのまま舞台に描いている。
ここは、樹齢数百年にも及ぶ巨木が立ち並ぶ地域。
神社などもあって聖域と言えるのかも。
なるほど、これだけ山深い土地だと、たくさんの人が行き交うことにはならなかっただろう。
土佐の全植物を網羅したと言っていた万太郎が、ここによく赴いていた事は、以前のエピソードでも語られていた。
それにしても、うっそうとしげる草木はハイキング等に最適かもしれない。
森林浴を満喫できる事は間違いないと思う。
竹雄から寿恵子へ
以前のエピソードで竹雄は寿恵子に万太郎の助手を引き継いでもらうことを宣言していた。
言ってみれば植物採集の方法から始まって標本作りなど作業は多岐に渡る。
今日描かれたのは採集の時の様子。
植物がある程度密集しているときに、どの個体を選ぶべきか?
寿恵子が一番立派なものと答えたのに対して、万太郎と竹雄の回答は意外なものだった。
1番平凡な(凡庸な)ものを選ぶのだと。
さらには小さなスコップを使って根から掘り上げる。
ある程度の土を落としたら胴乱の中へ。
このときの様子が詳しく語られていた。
さらには竹雄は周りの状況を詳しく書き留めていた。
要するに、植物の生育場所を克明に記録する。
日当たり、湿気、土質に至るまで、その他気がついた周りの状況。
ちなみに、メモとして残すのは放っておけば忘れてしまうから。
万太郎はいちど見聞きしたものは決して忘れないと言う。
植物に関わる事は、万太郎にとっては自分そのもので すべてを克明に記憶し続けるらしいのだ。
ここまででもかなり大変な作業だったけれど、これが帰ってからさらに後始末をしなければならない。
標本をきれいに水洗いした後、新聞紙の間に挟んでいく。
ここまではその日のうちにやらなければいけないらしいね。
これだけで、夜中までかかっていては生活に関わる他のことが全くできないこともあり得るわけで。
万太郎と草花
万太郎は草花の申し子
竹雄のセリフには実感がこもっていた。
そして、寿恵子の素朴な疑問。
万太郎はなぜ正装して山に出かけてくるのか?
汚れてしまうだろう
同じ質問を竹雄も万太郎にしたことがあったらしい。
植物と向き合うのに失礼があってはいけない。
だから身支度を整えて正装で向かい合うのだと。
ちなみに、これはモデルの牧野富太郎博士の研究者としてのスタイルそのもの。
モデルになった牧野博士は、写真に写る時の自分自身の見え方にもかなり気をつかっていたことがうかがわれる。
ほとんどの場合、必ずと言っていいほどにっこりと微笑んでいる。
つまり、人と接するときにどうあるべきかについて常に思いを巡らせていたに違いない。
自分のやるべきこと、自分が目指すべき学問、そして周りの人との関わり。
牧野博士の人となりが物語の主人公万太郎にもそっくり投影されていると思う。
家族になることの大変さ
万太郎と家族になるには相当の覚悟が必要。
莫大なお金が必要なのと、さらにそれを上回る労力。
少なくとも1人2人の応援ぐらいで成り立つような世界ではない。
物語では、寿恵子が覚悟を決める様子や、万太郎が当面の課題として仙石屋の桜の病気についてどうするべきか、彼がとった行動が紹介されていた。
桜はいわゆる桜テングス病が疑われる。
東京に手紙を書いてアドバイスを求める万太郎。
果たしてどんな回答が得られるのか。
さらには、万太郎と寿恵子の婚礼や竹雄と綾の関係など気になる事は多い。