らんまんはこの1週間が過ぎたことで、物語のコンセプトやポリシーが明確になってきたと言える。
主人公万太郎はモデルとなった牧野富太郎博士と同様、様々な苦難の果てに波瀾万丈の一生を送ることになる。
若い頃明治維新を経験した彼は、自分の生涯を植物学に捧げると決心した。
すべての発端はそこからと言うことになる。
万太郎は、最愛の妻寿恵子との間にできた長女園子を麻疹でわずか3日ほどで失ってしまった。
わずか2歳の幼い命。
寿恵子はその時、お腹に2人目の子供を身ごもっていた。
さらには、万太郎を取り巻く様々な環境も劇的に変化する。
東京に出てきてから万太郎の最大の後ろ盾となっていた田邊教授は、今や万太郎の最大の障壁となって立ちはだかる。
わずかな論文の落ち度を追求された結果、万太郎は研究基盤の最も重要な部分を失わざるを得なかった。
八方塞がりな中、万太郎は全てをなげうって、たった1人で自分の道を進もうと決心する。
植物学者として、今や世界に名前の知れることになった槙野万太郎。
草花に対する深い造詣と尽きることのない慈しみの心は、次々と新たな発見が寄せられることになる。
植物学者としてきちんとした活動を継続するためには、何といっても膨大な量の植物標本が必要。
植物採集はこれからの活動の要になるとも思われた。
今週から新たに加わった土佐の少年山元虎鉄君。
彼との出会いが新しい研究の道筋を示してくれる。
目次
園子の死を乗り越えて
先週からの流れは、受け入れるのもはばかるほどの不幸の連続だったかも。
万太郎は植物学機関誌の中に発表した、食虫植物の記述をめぐってささやかながら落ち度を作ってしまった。
それ以前からの鬱憤が溜まっていたブラック田邊は万太郎にブチ切れ。
彼は、東大への出入りを禁止になってしまった。
それは日本国内では植物学の研究ができないことを意味した。
そんな中、突然起こったのが園子の死。
これは、万太郎達夫婦を完膚なきまでに叩きのめした。
物語を見ていても寿恵子は立ち直れないのではと思うほどの憔悴しきった様子。
時間が経つにつれ、徐々に元気を取り戻していく寿恵子。
見ていても、ちょっと痛々しく感じるほどのがんばりぶりだったかも。
次女千歳
園子がなくなった心の痛手が癒えるまもなく千歳が誕生する。
モデルの牧野博士もそうだったが、こちらの夫婦は驚くほどの子だくさん。
奥様の寿衛さんも子育てと夫の世話で休まる暇がなかったのではと推察する。
万太郎は次女には長生きしてほしい願いを込めて千歳と名付けたようだ。
ブラック田邊との確執
今週の大きな見所の1つ、ブラック田邊と寿恵子のやりとり。
田邊家は新聞に出た3文小説のせいで、世間から白い目で見られるような事態に陥っていた。
田邊の妻聡子を心配した寿恵子はとるものもとりあえず駆けつける。
そして聡子と子供たちを励まし続けた。
そこに帰ってきたブラック田邊。
彼は、寿恵子が万太郎の復帰を頼みに来たものと邪推する。
実際は、そんな事はないんだけどね。
ここでの光景を思い出すと、ブラック田邊は寿恵子に対してでさえ見栄をはらなければ自分のアイデンティティーが確立されないと思い始めていたのかも。
考えてみれば、彼は植物学では何一つめぼしい業績を上げられてない。
万太郎に対して、妬みの心が出てるのも理解できる。
そして、物語の滑稽なところはブラック田邊のさもしい胸の内を寿恵子がしっかり見切っていること。
物語の流れが微妙に変化しつつある場面だったかもしれない。
新たな出会い
ロシア行きもリセットされてしまった。万太郎にとって進むべき道は、自分1人になってもわが道を進むことしかなかった。
たまたま四国で出会った1人の少年。
彼は四国の山中をお遍路さんを案内して歩く地元の少年。
彼との出会いが万太郎のこれからを大きく変化させる。
とりわけ万太郎は、佐川の峰屋が火落ちしてしまったことで倒産したことを知ることになる。
能天気な万太郎はあまり感じてないかもしれないが、今までは影になり日向になり峰屋がさまざまに支えてくれていた。
それがなくなったわけで、全くの1人ぼっちのわが道を行くしかない。
植物学は驚くほど資金調達が求められる学問。
モデルとなった牧野富太郎博士もお金の事ではずいぶん苦労したようだ。
進むべき道 槙野コレクション設立に向けて
並々ならぬ決意で、植物学に向かおうとした万太郎だったが、思いがけなく知り合った少年虎鉄君とのやり取りで、自分が一人ぼっち出ないことに気づかされる。
万太郎を慕ってくれる大勢の仲間たちに支えられていることに思いがたどりつく。
来週の予告編は既に公開されている。
どうやら、ぴったりの配役が借金取りを演じているような(笑)
物語の本当の面白さは、これから描かれる様々なエピソードになるかもしれない。
そして、寿恵子の本当の意味での大活躍が始まるような予感。