昨日無事最終回を迎えたらんまん。
本来なら1週間分の振り返りとしてブログアップするべきところだが、今回はせっかくなので物語全般を通して考察してみたいと思う。
物語は、高知出身の植物学者槙野万太郎の1代の物語。
もちろん物語にはれっきとしたモデルがいた。
世界的に有名な植物学者牧野富太郎博士その人である。
さて物語を最終回まで見た人なら誰もが感じたであろう物語の特徴は、万太郎と妻寿恵子の愛情物語だったっていうこと。
物語は始まった当初、寿恵子はしばらく登場してこなかった。
おそらく全体として3分の1程度過ぎたあたりからだろうと思う。
それ以降は2人がどのように考え感じそして意気投合していったかが詳しく語られることに。
主役を演じた神木隆之介。
妻を演じた浜辺美波。
2人の演技に対して賞賛の声が圧倒的に多い。
そして物語が史実に忠実に描かれてはいたが、脚本家が最初から最後まで一貫して1人でその役を担っていたことがとても好感度アップにつながったと思う。
脚本を担当したのが長田育恵さん。
調べてみると、自分で劇団を主催して舞台専門で活躍している方。
確かに間違いなく実力者だろうと思う。
物語を彩っていた様々な役者たちも、それぞれの場面で持ち味を遺憾なく発揮していた。
この人がこんな役柄をやるのかとびっくりしたことも多数。
最近の朝ドラの中では間違いなく成功例だったろうと認識する。
目次
脚本家長田育恵
詳しく調べてみると、作家井上ヒサシに私事して演劇、その他実践的に学んだようだ。
今回の朝ドラの脚本は本人にはじめての事だったようだ。
前回の朝ドラが3人の脚本家が持ち回りで作っていたのに対して今回一貫して1人で請け負っていたのにはそれだけ脚本家本人の実力が確かなものだったからだと思う。
とにかく列としたモデルがいる話なので、その歴史をつぶさに調べあげたはず。
さらにそこから自分なりの物語を描き出す。
仮にモデルがいたとしても、この物語そのものはフィクションとして紹介されている。
確かに現代劇として成立させるためには、何もかもが歴史の通りではつまらないのかもしれない。
脚本家がインタビューの中で語っていたのは、モデルの牧野博士と万太郎は全くの別人の設定で書いているとのこと。
そして見ごたえのあった最終週はご自身でも少し仕掛けを施したと語っていたのがとても印象的。
それはすなわち松坂慶子と宮﨑あおいの登場に他ならないと思う。
さらには万太郎自身の人となりも大きく関係しているだろう。
物語のあらまし
万太郎は、草花に生涯を捧げようと決意して東京に出てきた。
もともとは田舎者で死ぬまで土佐弁が抜けなかったことも、彼の人格をよく表していると思う。
モデルの牧野博士と万太郎は共に共通点がある。
それは2人とも人同士のネットワークをとても大切にしていた。
牧野博士は写真に映るときに勤めて笑顔を心がけていたようだ。
牧野博士同様、万太郎自身も人とのネットワークをとことん追求し大切にしていたと思う。
その真骨頂は最後の週でより鮮明に描かれた。
万太郎の呼びかけに大勢の人が集まったではないか。
万太郎はモデルの牧野博士に比べれば、やや人格的に弱い設定に描きたいと脚本家は語っていたね。
万太郎は家族を抱え仲間を抱え、彼自身は大した収入もないまま、様々な事業を計画してそれを実行している。
そのジレンマは彼をギリギリまで悩ませただろう。
しかしそんな万太郎の人柄も含めてのらんまんだった。
俳優たち
物語の中でも最後の秋は本当に驚きもいっぱいあって見ごたえ充分だったと思う。
考えてみれば、この2人は篤姫で共演しているよね。
松坂慶子が万太郎の祖母タキと万太郎の娘千鶴の一人二役で登場してきた事は見ている側とすれば大ヒットだったと思う。
若い頃の千鶴は、本田望結が初々しく演じていたので、余計年月の隔たりを如実に感じさせた。
この物語には、基本的に悪役と呼べる人たちはいない。
すべての人たちが万太郎の味方であり、応援者であった。
その中で唯一田邊だけが、ちょっとした行き違いから仲違いせざるを得なかった部分もあった。
彼が唯一万太郎の天敵とも言うべき存在のように描かれたが、最後の最後で万太郎に迎合する気持ちを表していた。
彼は途中で命を落としてしまうが、その直前で万太郎に対して特別な敬意を表す形で描かれた。
他にも記憶に残る俳優たちがいっぱいいるけど、皆それぞれの役柄を申し分なく演じていたのでは。
ドラマは1日15分しか放送されない。
15分の中で、ある程度整合性を持った展開が求められる。
それは脚本を作る上で、俳優たちも脚本通りに表現する上で大いに悩み苦しんだ部分だろうと推察する。
モデル牧野富太郎
今回の朝ドラが元で牧野博士の様々なゆかりの地が大いに賑わっていると聞く。
考えてみれば、全国に植物園が存在する。
特に牧野博士が集めた400,000点にも昇る植物標本は全世界から問い合わせがやってくるらしい。
牧野コレクションとして植物の分類をする上で重要な指標になっているとも聞く。
ちなみに物語が終わったので明らかにするが、牧野博士は再婚である。
彼の奥様の寿衛さんとは結婚する前から一緒になってほぼ内縁関係で過ごした時間も多かったと聞く。
それまでは土佐の作り酒屋が博士の実家でそこできちんと結婚して奥さんがいたようだ。
博士の最初の研究資金等はその時の奥様がすべて捻出してくれたようだ。
らんまんでは峰屋の綾と竹雄がその役割を担っていたように描かれた。
未来につながる物語
この物語の影の主人公は、間違いなく寿恵子。
彼女の冒険物語がサブタイトルと言っても良いだろう。
夫を支える妻の愛情が物語のエンジンであり出力だったと思う。
さて、様々な思い出を残し、私的にはとても叙情的で完成された物語に映ったらんまん。
主役を演じた2人のこれからの活躍にますます期待が集まる。