既にこうなる事はわかっていたとは言え、描かれた物語の結末はあまりに衝撃的。
壮絶な闘病生活を続けていた愛助。
いよいよその時が近づいている。
さらにはスズ子は産月ということもあって、いよいよ陣痛が始まった。
物語の主役は愛助とスズ子だが、彼らの周りの人たちがこの運命の壮絶さを説明する語り部となっていただろうか。
大阪の愛助は自分の死期が近いことを悟っていたようだ。
愛助と母親トミとのやりとり。
愛助は息を引き取るまでスズ子との結婚を望んでいた。
そして「子供を自分の手に抱いて一緒に遊ぶんだ」と夢を決してあきらめない。
トミは息子がギリギリの状態であることを医者から告げられた。
描かれてはいないが、余命宣告なようなものを受けていたはず。
当時の日本の死亡原因第1位の結核は、医者にしてみても扱う症例としてはかなり多かったはず。
末期の結核患者がどのようにして息を引き取るのか手に取るようにわかっていたはず。
最初元気なように見えた患者もやがて体力をそぎ落とされ、白くうつろな表情で衰弱の果てに命を落とす。
筋書きの通りのことが愛助に起こりつつある。
そして陣痛の始まったスズ子を尋ねた坂口と山下は、彼女を産院まで送ることに。
何時間か経過した後、スズ子は女児を出産。
物語の中では、スズ子に子供が生まれる直前に愛助は息を引き取ったようだ。
目次
愛助の覚悟と願い
超描かれた物語の中で、1番の見所は愛助を演じた俳優水上恒司の鬼気迫る演技と受ける母親トミを演じた小雪とのやり。
一言で表すなら“壮絶”という言葉はこの時のためにあるのでは。
水上恒司が死の床でスズ子宛てに手紙を書くシーン。
演じた彼の眼つきは今まさに死に行く者の悲壮感満載。
本来ならならベッドの上で眠るように息を引き取るのが1番穏やかでふさわしいとは思うが、自らそれを拒否して自分の心を伝えたかった。
さらにはそれ以前の親子のやりとりの中で、自分の命がもう長くないことを母親とそれとなく確認するシーン。
病気が治ったなら何でも言うこと聞いたる
トミの涙混じりのこの言葉は、この病気が既に助からないことを示唆しているではないか。
そのことを最初から承知の愛助。
死にゆく者の願いをどうしても書き記しておきたい。
大きくクローズアップはされていなかったが、このやりとりを傍で見ていた矢島秘書室長。
彼がやりとりの一部始終を電話で坂口に報告していた。
演出のうまさが光ったシーン。
スズ子に託す思い
愛助はスズ子と家族を作ることこそが自分も含めた周りみんなの幸せと考えていたようだ。
そして何よりもスズ子には歌手を続けてもらう。
たくさんの子供に囲まれて、幸せな家庭を作ること。
愛助の思いは今も昔も一貫して同じ。
会社を守ろうとしていた母親のトミとも相通じる思いがあったと言える。
描かれたエピソードの中で、ブギウギの最も重要な部分が今に集約されていると思うと感慨深い。
スズ子のお産
坂口と山下が愛助危篤の報を受けてスズ子を尋ねる。
ちょうどその時にスズ子の陣痛に立ち会えた。
2人で抱えるようにして産院まで。
物語的にはここら辺が少しデフォルメしているような気がした。
陣痛が始まってから、お産に至るまでの時間が初産にしては早すぎるかなと。
しかし、そんな事は関係なくスズ子は無事出産。
女の子を設けることになる。
発表されてはいないがこの子には愛子と名付けるはず。
父親の名前を一文字取ることが遺言として残されていたから。
詳しい事は明日明らかになるものと思う。
それにしても初めてにしては理想的なお産の設定で順調に赤ちゃんが生まれて良かった。
2人の運命を考察
実際にモデルとなった吉本穎右について調べてみることに。
ブギウギで描かれたように2人が実際も相思相愛だったことについてはどうやら間違いなさそう。
しかし、結婚に至る1連の流れは物語とは若干違う。
入籍を渋っていたのは母親ももちろんだが、穎右本人も夫婦になる事は望んでいなかったらしい。
笠置シズ子とも行き違いがあったと記憶に残る。
穎右は笠置に歌手を辞めて家庭に入ることを要求していたらしい。
物語の中では母親の要求との事になっていたが、事実は異なる。
そしてこの物語では、笠置と穎右の琵琶湖旅行についての記述がそっくり抜け落ちているとの指摘も。
物語で描かれたのは芦ノ湖旅行の下りだけ。
その後も大阪による途中に2人が仲睦まじく旅行しているのだが、その部分はざっくり削除されているらしい。
なぜなら、笠置の自伝の中で琵琶湖旅行の時に初めて穎右の生の歌声を聞いて痛く感動したとの記述があったから。
その部分をそっくり外しているようだ。
さらに穎右は子供の生まれる10日ほど前に亡くなっているが物語では、出産とほぼ同時刻に息を引き取ったことになっている。
史実に基づいている設定ながら実際は、物語らしく脚色されていることを付け加えておきたい。