週を改めて描かれる「虎に翼」。
真っ先に語られたのは食料管理の仕事についていた花岡死去の新聞記事。
調べてみると、当時全国的に花岡のような行動をとっていた判事が多かったと聞く。
先週も紹介したが、花岡のモデルになったのは山口良忠判事。
花岡同様、闇市で提供される食料には一切手をつけずにほとんどロクに具も入っていないような汁だけを飲んで1年間過ごしたらしい。
栄養失調は限界を超えれば、命に関わる。
結果として体調を崩し、体力も全く失われた状態では持ち直すことも叶わずに亡くなってしまった。
調べてみると、当時の判事たちの給料の安さもあったようだ。
裁判官は公務員の中でも恵まれていると思われがちだが、実際はそうではなかった。
ある程度お金があれば闇市の高額な食料も手に入れられる。
致命的な欠点は、食料の供給そのものが配給制だったにもかかわらず必要量を全く満たしていなかったこと。
当時、アメリカからの支援物資もかなりあったと思うがまだ軌道に乗っていたとは言えなかったようだ。
戦後アメリカ主導で、日本は米食からパン食へ変換が試みられた。
最近なら十分な食料が供給されていて、ご飯でもパンでも思いのままに選べる。
さて物語の中ではずいぶん前に登場していたよねと轟が再登場。
彼らを交えた物語が、どうやらこれからの中心に据えられてくる。
大勢の仲間が失われても、時間は容赦なく経過する。
目次
花岡悟とモデル山口良忠判事
ドラマで描かれた内容は史実に歴然としたモデルが存在する。
この当時、司法に携わる検事や判事が安月給に耐えかねて皆弁護士に鞍替えしてお金を稼ぐことが横行していたと聞いた。
そんな風潮の中、今こそ司法の砦をきちんと守らねばならないと自らに法の番人としての掟を課したのが山口判事。
家族にはきちんと食事をさせていたようだ。
しかし、
自分自身が闇市で手に入れたものを口にする事はなかったと伝わる。
ほとんど汁だけを吸うような栄養不良の状態を1年も続ければ、よほどのツワモノでも生きていくこと自体が難しかったはず。
この事は全国に知れ渡り、食料管理法を取り締まる判事たちを救済するために基金や食料の供給がなされたようだ。
寅子のモデル三淵嘉子さんのご主人の父親はあまりの悲惨な状況を見かねて当該の判事たちに卵を配って歩いたと逸話が残る。
法の番人が法を犯すわけにはいかない。
日本人らしい反応だろうね。
裏でテキトーにヨロシクやるような事は真面目なればこそ絶対にやらなかったんだろうと推察。
空襲を生き延びたよねと復員した翼
物語の中で、長い時間を割いて描かれたよねと轟のエピソード。
セリフから当時の事情が伺える。
裁判官は徴兵されなかったようだ。
ただし、弁護士は容赦なく赤紙が。
轟の記憶をたどる形で花岡との思い出が語られていた。
轟は花岡のことが大好きだったようだ。
それはよねが指摘していた。
恋愛感情に近いような好意を抱いていたはずだと語っていたね。
2人の会話の中で憲法14条に基づく文章が話題に。
よねはこの内容の取り決めを自分たちの力で勝ち取りたかったと語っていた。
新憲法は要するにGHQの肝いりで与えられたもの。
日本国民が自分の力で勝ち取ったわけではない。
そこには簡単に事実を受け入れられないよねのこだわりがあるのかもしれない。
他人から与えられたものは、自分で勝ち取ったものより値打ちが下がると受け止めたんだろうね。
その意見はある意味正しいだろう。
よねは轟に提案していた。
一緒に弁護士事務所をやろう。
世の中に横並びの平等を確立するために困っている人を助けようと。
悲しみに包まれた司法省
寅子は花岡の死を未だ受け止め切れてはいなかった。
涙をこぼしながら机に座っていたところを桂場がしっかり目撃。
誰がどんなふうにしているかを瞬時に見抜くことができる。
そういえば、先週の最後花岡を久しぶりに見た桂場は花岡が栄養失調で体調不良なことを一瞬で見抜いていた。
寅子は会話をしながらもそのことに全く気づかずじまい。
法曹家としての桂場は物事を有ありのままにきちんと受け止める力に大きく卓越してる。
生きることへの決意
生き残った者たちは、新しい日本社会の構築に全力で邁進する責務が。
大勢の仲間が失われた今、感傷に浸りたい気持ちは山々。
悲しみを振り切って前へ進まなければならない。
新憲法は既に制定された。
民法も少しずつ整いつつある。
後は受け止める側の国民それぞれがどれほどの理解力で接することができるのか。
昭和24年の設定だが、まだ日本は混沌としたままで復興が始まっているとは到底言いにくい。
さて、今週の物語は始まったばかり。
ここからさらに物語は展開して次のステップをうかがう。