現在74才 既に伝説の領域に
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1945年生まれですでに70歳を軽く超えている。
さすがに寄る年並みの衰えはあるらしく、まず聴覚の衰えと、かつてのようなギターテクニックは難しくなってきていると述懐している。
それでもステージ上の存在感は他を圧倒する。
すでに数々の成功を収めてきて名声も欲しいまま手に入れてはいるのだが、本人の弁では自分自身が成功している感覚は案外薄いと思っているらしい。
特に自分自身が労働者階級の出身なので、給料袋がとても魅力あるものに思えていて、基本、お金に関しては今も昔も無頓着とのこと。
彼の音楽を支持する人はとても多いが、ライフスタイルはとてもユニーク。
彼は豪邸を建ててそこに住むことをしていない。
たいていはマンション住まい。そしてほとんどを放浪の旅で暮らしているようだ。
ただし自分の本業であるミュージシャンとしては、有数のギターコレクションマニアであり、また自家用車にも思い入れがあって、特別仕様のフェラーリを所有したりしていて話題に事欠かない。
彼の音楽は基本的にはロックなのだが、ブルースの殿堂入りもしているので、普通のロックミュージシャンとは1線を画す。
ステージ上ではエレキギターを弾く姿がよく見られるが、彼が老齢期に入ってからよく用いているアコースティックなサウンドがさらに彼の評価を一段と押し上げたようだ。
彼の最近のライブのものを紹介してみたい
個人的にはこういったギターを弾き語りする感じが気にいっている。
かなり有名な曲であるにもかかわらず、とても新鮮な感じがするとは思わないか。
クラプトンのギターテクニックは昔からあの鳴きと呼ばれる、独特のグリッサンドがあるが、アコースティックバージョンで手作り感あふれる演奏もとても素敵だと思う。
神様と呼ばれて
この本を書いてからおよそ10年が経っている。
様々なことが告白されている。
クラプトンの人生で真っ先に思いついてくるのは、あのジョージハリスンの元奥様との不倫の話だろう。
モデルのパティボイドと 恋仲になり、その時パティボイドはまだジョージハリスンの妻だったのだ。
ジョージハリスンと離婚をして、その2年後に2人は結婚をしている。しかしその結婚も実は長続きしないという。
クラプトン自身が明かしているように女性に対しては、若い頃は特に見境がなかったようだ。つまり感じるがまま、趣くがまま。
よく泥沼の愛憎劇にならなかったものだ。
またクラプトン自身の人生で、特筆すべきはアルコール中毒と麻薬中毒。
この2つにどっぷりとハマっていた経緯がある。
話を聞いても、よくまともに戻って来れたなと感心するものである。
いろいろ調べてみると、まず第一に音楽への情熱が一貫して失われなかったこと。
周りの大勢の仲間たちが親身になって相談に乗ってくれたり、力になって応援してくれたこと。それらのことがあって見事に復活できたのである。
また彼の人生の中ではいくつかの悲劇があるが、1番はなんといっても4歳の息子を事故で失ったことだろう。
高層マンションの53階から転落死したのである。
この耐え難い苦しみにも、見事に乗り越えて復活を果たすあたりが「神様」と呼ばれる所以なのだろう。
彼の音楽の特徴とも言えるのは、自らの心情を包み隠さずに歌いあげること。
どのような歌手にしてもそうなのだが、きちんと等身大で表現できることが何にも増して評価されていると思う。
様々なミュージシャンとも交流があり、「伝説」と呼ばれ「神」と呼ばれる存在なのだ。
数々の名曲
息子を事故で失った悲しみは簡単に癒すことはできない 。
この亡き息子への思いを綴った曲がこれである。
Tears In Heaven @ Eric Clapton 日本武道館 2019年4月15日(月)
名曲中の名曲といえる。
様々なバージョンで歌っているが、このアコースティックバージョンがおそらく1番聞きやすいだろうし、今年の本当に最近の録音のようだ。
聴覚に若干の不安があると言いつつ、そこはプロなので全く外すことなく問題なく歌い上げている。
この曲を歌うときに亡くなった息子のことをどれだけ思い出して歌うのだろうか。
聞く側としては、クラプトン自身の辛い人生が重なるので、不思議に感情移入してしまうが、曲は聴いてわかるとおり、決して暗くて悲壮感漂うものではない。
むしろ叙情的と言っていいだろう。
心の中の苦しみとか悲しみとかを、芸術の領域にきちんと消化できていることの紛れもない証拠だと私は思っている。
長く活躍している芸術家なので昔の映像と比べてみたい。
同じ曲で1993年の映像を紹介。
Eric Clapton - Tears In Heaven - 1993 Grammys
彼が息子を失ったのは91年。この歌はその2年後に歌っているのである。
聞いてみてわかるのだが、今よりははるかに声にしなやかさがあるようだ。
そして、驚くほどテンポは遅め。
しっとりと歌い上げるバラードに仕上がっている。
この頃ではまだ心の傷はほとんど癒えていなかったろうに。
多彩な交友関係と数奇な人生


クラプトンの交友関係は実に多彩である。
特に有名なところではビートルズのジョージハリスンとは長く親友同士で 、同じステージでも演奏し、またレコーディングなど共同作業も多くこなしていた。
ジョージハリスンがガンで若くして亡くなった時も、クラプトンが様々な行事の手助けをしたと聞く。
あのジミヘンドリックスもクラプトンとは親友のようだ。
このほかにも、ローリングストーンズのキースリチャードなど、やはり同世代のイギリス出身のミュージシャンとは親交が深いと見える。
クラプトン自身は音楽的にはBBキングなどブルースシンガーに影響を受けたと述懐している。
彼自身も自分の歌をロックと呼ぶ事は無いようだ。
自叙伝の中でも明かしているように、 70歳になってもブルースを歌い続ける。
それが今の彼自身の活動の原動力なのかもしれない。
2曲を比べて聞いてみても、年齢とともに変わっていく様々な身体的な特徴をうまく取り入れながらボーカルをこなしているあたりがクラプトン流と言って良いのだろう。
まとめ
クラプトンの人生は驚くほど数奇なもの。
このジョージハリスンの奥様、モデルの彼女とも恋仲になって結婚までしたものの長くは続かず離婚をするあたり、そして彼の性格なのだろうか、実は1人の女性と長く付き合うことができないようなのだ。
記録に残っているだけでもこのパティボイドと 他に2人3人くらいの名前は出てくる。
彼がなくした4歳の息子もこのパティボイドとの子ではない。
単純に女性関係はお世辞にも褒められたものではない。
彼は根っからの芸術家なので、情熱的で活動的な部分と不器用でいい加減で適当な部分が同居しているのだろうと推察。
彼の女性関係を調べてみると、あのフランスの作曲家ドビッシーに似ているなとさえ思う。
しかし数々のエピソードに遭遇しながらも彼はミュージシャンとしての活動にいささかの妥協もしなかったことが彼の評価をさらに押し上げることに。
すでに74歳になった今、もうあと何十年も活躍できるとは思いにくいのだが、伝説のミュージシャンとしての姿をいつまでも見守りたいと思うのは私だけではあるまい。