昨日千秋楽で優勝を決めた新大関照の富士。
当初、場所が始まった時は彼の独壇場で早々と優勝を決めるのではともっぱらの噂だったけれど。
しかし、中盤を折り返したあたりから雲行きは徐々に変化。
ぶっちぎりの優勝とまではいかなくなり、後半は特に不運な勝負も重なって、優勝の行方は千秋楽まで持ち込むこととなった。
そして迎えた千秋楽では、なんと同じ先輩大関の貴景勝と同率12勝3敗で並んでしまうことに。
優勝決定戦の末、根性で勝利をもぎ取ったと言える。
横綱不在でしかも大関朝乃山の不祥事もあったりして、何かと話題の絶えない場所だったが、場所は思いのほか盛り上がったのでは。
1日おいて冷静に2週間を振り返ってみたい。
目次
やはり15日取らなければわからなかった大相撲
14日目のこの相撲は今場所調子の良い遠藤が、一矢むくいた。
相撲のスタイルやそれぞれの実力を考えれば圧倒的に照の富士有利。
しかし、筋書き通りに行かないのが相撲の面白いところ。
今場所の素早い動きがさらに磨きがかかって遠藤はかつてない有利な体制で大関を追い込む。
土俵際で投げの打ち合いの攻防があってその結果流から言えば照の富士有利と見て行事の軍配は照の富士に上がる。
しかし、物言いがついた後
スローモーションで何度も見返してみたがどうしても照の富士の肘が先に土俵についていた。
その結果行事差し違えとなって照の富士が負けることに。
遠藤にしてみればしてやったりだったろう。
実は照の富士の試練は11日目にもあったのだ。
前頭妙義龍との1戦。
相撲は明らかに照の富士のもの。
流れの中で投げを打つときに、相手の首根っこを押さえ込む体制をとる力士は多いと言える。
実はこの時に注意しなければならないことがあって、
押さえ込んだ時に自分の手の指が相手の髪の毛の中に入ってしまうと反則を取られる。
今回がまさにこれ。
この時についたケチがこの後の相撲の流れに大きく影響したような気がする。
本人にとっても不運だなと思わずにはいられない。
千秋楽で取った不覚
千秋楽の相撲で勝てばそのまま優勝が決まる一番だった。
しかし相手の大関貴景勝は流れの中でとっさに体を交わす。
その瞬間照の富士はなすすべもなく前に突っ伏してしまう。
おそらく2 3秒しかかからなかった相撲だろう。
しかしこれで優勝決定戦にもつれ込むしかなくなった。
今思い返してみても、少し硬くなっていた可能性があるかもしれない。
照の富士なら何らかの形で相手の体に自分の体を寄せていこうとするはず。
交わされたときに両手はそのまま宙に泳いでいたので、普通ならありえないなと。
優勝決定戦
優勝決定戦ではどちらかと言えば負けた側にプレッシャーがかかるもの。
2人とも緊張感漂う中淡々と仕切りを済ませて、再び合い交える。
お互い共通して思っていた事は、相手を組み止めることにはならないということ。
中間距離を保ったまま攻防をするしかないのかなと。
お互い相手を押したりいなしたりで、決め手のないままとっさに放ったはたき込みが貴景勝が両手を土俵にべったりつけてしまうことに。
全力でやる取り組みなので、どちらが勝っても負けてもおかしくはなかったが。
2番続けてどちらか一方が勝つことがあり得なかったことも事実。
最初負けても次は必ず勝つポリシーで照の富士に軍配が。
朝乃山の不祥事
朝乃山の不祥事はいわゆる文春砲によって暴かれた。
週刊誌で暴露されてしまえば、内容が内容なだけに口答えのしようもなかっただろう。
なんとこの大関はこっそりキャバクラ通いをしていたと聞く。
まだ20代後半の若者。
遊びたい盛りなのもよくわかる。
しかし見つかってしまえばタダで済むはずもなく。
特に今回だめだなぁと思ったことが1つ。
それは相撲協会から事情聴取を受けた朝乃山は当初、事実を隠蔽しようとして知らぬ存ぜぬを押し通した。
それがよくなかった。
再び事情聴取を受けたときに証言を1転。
事実関係を認めることに。
そのまま休場と言うことに。
おそらく処分はかなり重いはず。
推定では半年間程度は謹慎させられるようだ。
そうなったときには大関陥落はもちろん、関取でいられる可能性もない。
幕下か、それ以下まで番付を落とす可能性が高い。
再び這い上がってこれるかどうか。
もしこの辺のやり取りで本人次第だが、廃業と言うこともあり得るだろう。
彼は一番良い時は次の横綱候補として期待された。
今はおよそそんな風には見えないが。
このまま優れた才能が闇に葬られてしまうのは忍びない気がする。
何とか相撲界に残れる道は無いかとひたすら心配するしかない。
まとめ
トータルで見ると照の富士は強運の持ち主と言えるかも。
彼はこれで2場所連続優勝を果たした。
上り調子でここまでやってきたのだ。
もし来場所連続して優勝するならば、横綱に推挙される可能性が極めて高い。
もとより致命的な怪我を抱えて一旦は引退を決意した身の上。
それを説得して相撲協会に残らせたのは伊勢ケ浜親方。
元横綱旭富士
この部屋は、引退した日馬富士も輩出している名門。
関取の育て方に定評があるのだろう。
今回の場合、何よりも大関に復帰した照の富士の心意気が優れていたからだと痛感する。
彼は自分自身を冷静に分析できている。
自分が長く相撲を続けられる体では無いことをよく知っているようだ。
と同時に大関でしかるべき成績を残せているので、今の上の地位すなわち横綱を目指すべきなのこともよく理解している。
残された時間と自分自身の果たすべき役割を考えたときにさらなる努力をして横綱を目指すとインタビューでも答えていた。
これだけのことをきちんと人前で発表できることが、彼らしいとも言えるだろう。
ドラマチックな結果と、驚くほどシビアな内容を伴った大相撲は次回7月開催まで待つことになる。