いよいよ始まった大相撲9月場所。
なんといっても注目は新横綱になった照ノ富士だろう。
先場所の白鵬との壮絶な一騎打ちはいまだに記憶に残る。
その2ヶ月後、今場所は今日中日を迎える。
平成生まれの横綱として初めて相撲ファンにお披露目となった照の富士。
正直なところ私自身のお気に入りの力士。
カナダの大きな力士は、私はそれほど好みではないが、彼のストイックさと闘争心、さらには相撲や私生活などから垣間見える彼自身の性格が日本人でないながら日本人以上のものを感じるので。
あえて言わせてもらうが大横綱白鵬を私は評価しない。
さて、照ノ富士の横綱としての魅力を考察してみたい。
目次
今年30歳になる 大変な挫折を経験している
この横綱は2015年に1度大関に登りつめている。
あの当時から記憶に残るのは大きな相撲をとって、力強さが前面に出てくること。
しかし、時と場合によっては荒っぽさが目だったり、また自分の体を顧みないような雑な取り組みも若干目立ったような。
当時の記憶として、彼がインタビューに答えるときの相撲に対する真摯な姿勢。
決しておごることなく淡々と相撲道を歩んでいるなと。
しかし、人生何が起こるのかわからない。
大関になったときに、その責任感から無理をして土俵に上がり続けて両膝と肩を痛めることに。
致命的なダメージを被った後さらに発覚したのが、重度の糖尿病だったこと。
怪我をして休場しているんだろうなと当時は思っていたが、実際は糖尿病で体に力が入らなかったとのこと。
さらには、入院が必要なくらい、状態は悪かったらしい。
いろいろ調べてみても、具体的な数字が公表されていなかったので推定にしかならないが、おそらく糖尿病の指標とされる血液検査の値。
ヘモグロビンA1Cは9.0を超えていたのでは。
さらには血糖値も最大で軽く300を超えていた可能性が。
糖尿病のレベルではインシュリンが処方されるような重篤な事態。
もっとも彼の場合は、その後の食事療法などで病気をコントロールしていると聞いた。
序二段で取る相撲
相撲取りは休み続ければどんどん番付が下がっていく。
大関を張っていても2場所連続負け越せば、陥落する。
そしてその後も休場して土俵に上がらなければおよそ1年ほどで、力士でなくなる。
つまり無給の相撲取り、幕下以下まで落ちることに。
照の富士は2018年に序二段まで陥落した。
相撲取りの序列としてあるのは以下の通り。
序の口
序二段
3段目
幕下
十両
幕内(前頭 小結 関脇 大関 横綱)
相撲ファンなら常識的な知識。
照ノ富士は大関から序二段にまで番付を下げるしかなかったのだ。
普通の人間ならとてもじゃないがやっていられないだろう。
彼自身も親方に5回6回進言したらしい。
引退させてくれ
その都度説得されたと聞いた。
まず体をもとに戻せ
その段階で相撲を続けるかどうかを決めればいい。
伊勢ケ浜親方は、照ノ富士を挫折したまま放り出すことをしなかった。
この当時の彼の逸話が残っている。
本来幕下以下の力士は、関取衆の付き人が役目になるが、それを免除してもらったと聞いた。
大関経験者が、付き人までやるのではあまりにも気の毒だと周りも考えたに違いない。
また自分と同じ番付の他の力士たちが、代わりに様々な仕事を手伝ってくれたと聞いた。
確かに、普通に幕下以下の立場で生活をしながら復活と言うにはあまりにも厳しかったかも。
照ノ富士の周りには大勢の仲間たちが
伊勢ヶ浜部屋は名門。
現在の親方になってからも様々な著名な力士を輩出している。
また、関取衆が他にもたくさんいる事でも有名な部屋。
四股名に「富士」が付く関取は大抵伊勢ヶ浜部屋ではなかろうか。
病気と闘いながら、しかも怪我と折り合いをつけながら、復活劇が始まるのだが、もともと大関まで勤めた力士なので、陥落してからまた元に戻ってくるまではV字回復だったと記憶する。
糟糠の妻 内助の功
3歳年下のモンゴル出身の奥さんがいる。
照の富士が最初に大関になった頃に知り合って、それ以来の付き合いだったと聞いている。
フライデーとかに写真を撮られたこともあったりして、半ば公然の間柄だった。
この彼女がびっくりするほどの苦労人。
日本に留学するほどの才媛でいながら家の事情で一旦はモンゴルに帰国。
そこで再びお金の工面をして日本に再来日したようだ。
彼女は照の富士が真っ逆さまに陥落していた時代を一緒に支えている。
照の富士の食事の面倒など、糖尿病を考慮しつつ彼女が支えたようだ。
そして、
もし力士で生活ができなくなったとしても私が働いてあなたを支えると。
こんな女性がまだ世の中にいるんだなと話を聞いて驚愕。
私もいろいろな女性を知っているが、女性は選びとる力にたけている反面、一旦見捨てると決めたら、その決断も早いと言う印象。
彼の奥さんは、その、夫に一途に尽くすタイプだったようだ。
結婚して時間が経っているが、実際に式を挙げあげたのはつい最近。
幕下や序二段では、晴れがましいことにもならなかったんだろうなぁ。
新横綱に期待するもの
横綱白鵬の実績はおそらく前人未到と言って良いが、彼を評価できない切ない事情がある。
それはあまりにも卑怯で醜い相撲態度。
横綱は相撲界にあって、日本人にとっては神職だと理解している。
相撲そのものが神事だと思う相撲ファンは大多数でなかろうか。
横綱とはそうした存在。
もちろん、勝負師としての実績も残す必要がある。
しかしそれを上回るだけの神々しさがなければならない。
照の富士に求めるのはそこ。
しかし、今場所の相撲を見ていても、彼の相撲態度は星勘定以上に美しさを感じる。
横綱は人から後ろ指刺されるような卑怯なことをしてはいけないのだ。
おそらく、白鵬の引退は近い。
またいろいろ考えてみて照の富士が横綱を張っていられる時間もそれほど長くはないだろう。
しかし、長年の相撲ファンは横綱としての美しさを当分の間は照の富士に見出したいと考えているのでは。
